MLBが例年6月中旬に開かれる国内アマチュア選手のドラフト会議を中止し、さらに国外FA選手との契約開始時期延長を検討していると『AP通信』が報じた。記事では情報源をMLB内部の議論に関わっている人物とするのみで、MLBもこの件について公式にコメントはしていない。
 

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カレッジ・ワールドシリーズ(CWS)中止の余波

 2020年のMLBドラフト会議は大学野球の全米一を決める大会「カレッジ・ワールドシリーズ(CWS)」が行われるネブラスカ州オマハに会場を移し、同シリーズが開幕する直前の6月10−12日に行われる予定である。少なくとも現時点では、MLBはこれらを変更するとの発表はしていない。
 
 だが、CWSが今年は中止されることが既にNCAA(全米大学体育協会)より発表され、MLBが決めたドラフト会議の場所と時期は意味を失っている。

ドラフト会議中止が合理的だと思われる理由

 MLBのドラフト会議で指名対象となるのは、米国、カナダ、プエルトリコの高校か大学に在籍するアマチュア選手である。高校生は卒業後、大学生は3年生を修了しているか21歳以上であることが条件だ。
 
 例年であれば、米国内の学生野球は2月から4月末ぐらいまでがレギュラーシーズンで、5月からプレーオフ、そして6月には前述のカレッジ・ワールドシリーズ(CWS)で幕を閉じる。
 
 だが現在は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ほとんどのリーグがレギュラーシーズンを中断かあるいは完全に中止している。MLB各球団のスカウトはドラフト直前のシーズンで選手たちのパフォーマンスを見ることができず、選手たちはプロ入り直前に実戦での経験を積む機会が失われた状態である。指名する方、される方の双方にとって、このままドラフト会議を予定通り行うことはギャンブルに等しいと言える。

指名確実だった選手たちへの救済措置はあるか

 ドラフト会議が中止されたとしても、意外に少ないと思われるのがアマチュア選手達への影響だ。高卒選手に関しては、ドラフト指名されるぐらいの選手であれば、スポーツ奨学金のオファーを大学から既に受けていることが普通である。さらにドラフト指名されても、プロ入りを拒否し、大学進学を選ぶ選手の方がむしろ多い。
 
 大学選手については、上位指名されるスター選手は3年生が中心である。今年指名されなくても、来年の指名を待てばいい。大学最終学年の選手たちがもっとも影響を受けるわけだが、それについても何らかの救済措置が取られる可能性が高い。NCAAが野球に限らず、すべての冬と春の大学スポーツ(バスケットボールなど)の選手たちの出場資格を1年延長するだろうと予想する報道が既に多くのメディアでなされているからだ。
 
 もちろん、来年のドラフトは今年と含めて「2年分」の有力選手たちが指名対象になるわけだから、選手たちにとっては競争が激しくなることは避けられない。少なくともドラフトが中止されたせいで「浪人」するという事態はあまり起こらないのではないか。

財政面だけではない球団側のメリット

 MLB全体でアマチュア選手との契約金は年間合計4億ドル(約440億円)に及ぶとされる。その分の費用が削減されるわけだから、むろん財政面でのメリットは大きい。
別の見方をするならば、それだけ巨大な額を最後のレギュラーシーズンで実力を証明できなかった選手たちに投資するリスクを回避することもできる。
 
 MLBは既に国内外のすべてのスカウト活動を中止しており、国外FA選手たちについても同じことが言える。
 
 球団としては新たな才能を組織に加える機会を今年は失うわけだが、全球団が一斉に行うので不公平は少ない。
 
 もっとも来年度の指名順をどうするかは多少問題になるかもしれない。ルール上、30球団の指名順は、前年レギュラーシーズンの勝率が低いチームからスタートする。2020年の指名順は、1番がデトロイト・タイガース、29番がロサンゼルス・ドジャースとなっている。ヒューストン・アストロズはサイン盗み事件を理由に1-2巡目の指名権を放棄している。
 
 仮に2020年ドラフトが中止になった場合、2021年ドラフトでは2020年の指名順を引き継ぐのか、あるいは完全にリセットして、2020年シーズン(試合数が少なくなることが予想されている)の戦績で決定するのか。これについては議論の対象になるだろう。
 
 
角谷剛