東北楽天ゴールデンイーグルスの守護神として活躍を続けてきた松井裕樹投手が、今季から先発に転向する。試合を締めくくる役割であるクローザーから、先発へと転向する例は歴代を遡ってみてもそう多くはない。今回は現役選手の中で、クローザーから先発に転向した例を振り返り、松井の先発転向において成功の鍵と言える要素を紐解いていきたい。
 

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山口俊(現トロント・ブルージェイズ)

 今オフに読売ジャイアンツから球団初のポスティングシステムを利用し、ブルージェイズにメジャー移籍を果たした山口俊投手。横浜DeNAベイスターズに所属していた当時、2009年から2012年まではクローザーとして活躍し、2012年には当時史上最年少で100セーブを達成した。
 
 2013年は、前年に引き続いてクローザーとしてシーズンに入るも不調が続き、2軍降格も経験。2014年はセットアッパーとして開幕を迎えたが、再び不調の登板が続き、シーズン途中に先発へと転向した。すると、転向後は見違えるほどの安定した投球を披露し、17先発でシーズン8勝をマークした。
 
 この年を境に先発投手としての地位を確立した山口。巨人にフリーエージェント(FA)移籍して以降も先発としての役割を担った。昨季は自己最多の15勝をマークし、最多勝、最多奪三振、最多勝率を受賞する「投手三冠」の活躍で、チームのリーグ優勝に大きく貢献した。
 

増井浩俊(現オリックス・バファローズ)

 増井浩俊投手は、2017年オフに北海道日本ハムファイターズからFA権を行使し、オリックスに移籍。現在は、クローザー、セットアッパーとしてブルペンの屋台骨を支えている。日本ハム時代は、プロ2年目の2011年からセットアッパーに定着。翌12年には最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得すると、14年からはクローザーに抜擢され、安定した投球を続けていた。
 
 しかし、2016年はシーズン序盤から不振に陥った増井。見かねた栗山英樹監督がシーズン途中に先発へと配置転換すると、これが功を奏し、先発として9試合に登板(武田勝投手の引退試合時は初回1アウトから登板)し、7勝1敗、防御率1.18を記録。チームのリーグ優勝、日本一に大きく貢献した。なお、増井は翌17年には再びクローザーに返り咲き、通算100セーブも達成している。

涌井秀章(現東北楽天ゴールデンイーグルス)

 今オフに金銭トレードで楽天へと移籍した涌井秀章投手は、当時所属していた西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)では、2006年から5年連続2ケタ勝利を記録するなど先発として活躍。だが、2012年に自身の不調とチーム事情の兼ね合いからクローザーに転向すると、30セーブをマークした。
 
 千葉ロッテマリーンズにFA移籍した2014年に再び先発一本で勝負することに決めると、2015年には自身3度目となる最多勝、2016年には5年ぶりの5完投を記録するなど、持ち味を遺憾なく発揮した。
 

藤川球児(現阪神タイガース)

 藤川球児投手は、長年クローザーやセットアッパーとして阪神タイガースのブルペンを支え、現在も阪神のリリーフ陣の要だ。
 
 そんな藤川は、メジャー挑戦後の2015年途中に、四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスへ入団し、先発に転向。翌16年に阪神へ復帰した際も先発で調整し、オープン戦では好投を続けた。シーズン途中でリリーフへ再転向したが、先発としても復帰後初登板で初勝利を挙げた。

変化した球種配分

 ここまで紹介した選手らは、クローザー時に投じていた球種と、先発転向後に投じた球種を比較すると、ある共通点が浮かび上がる。
 
 それは、「カーブ」の投球割合が大きく増加していることだ。
 
 全選手が共通してカーブを投じる割合が増加しており、増加傾向が低い選手でも前年度の倍以上の割合を記録している。
 
 カーブが増加した要因としては、緩急の必要性と、カウント球としての活用が考えられる。1イニングを全力で抑えていく傾向が強いクローザーと違い、先発では長いイニングを投げることが求められる。2巡、3巡と回ってくる打者に対して、目を慣れさせないための緩急、狙いを絞らせないカウント球としてカーブが有効となってくるのだろう。
 
 力のある速球と落ちる球で打者を抑え込んできたクローザーたちにとって、先発投手として必要なピースだったに違いない。
 
 また、リリーフへと再転向した増井や藤川は現在、先発転向前よりもカーブを投じる割合は増加しており、先発の経験をうまく活かしてさらに投球の幅を広げている。

松井裕樹の先発としての可能性

 ストレート、スライダー、チェンジアップと主に3つの球種を勝負球として操る松井。そんな松井も、2018年シーズンからはカーブを投じ始めている。前例から見て、カーブという球種の有効活用が、先発転向において鍵となる要素であることは間違いないだろう。
 
 また松井は、高校時代からの代名詞でもあった大きな曲がりのスライダーも、昨季から曲がりの小さいものを取り入れるなど、奪三振率の高い投手の課題である球数についても、先発仕様へ着々とモデルチェンジを進めてきた。
 
 オープン戦では4試合(9回)に登板、21日の練習試合にも先発登板し4イニングを投げた松井。4月24日以降の開幕へ向けて調整を進めている。楽天の7年ぶりのリーグ優勝、日本一のためにも、松井が先発として“ハマる”かどうかが、チームの命運を握ることとなりそうだ。