U18侍ジャパンは謙虚な姿勢で「世界の野球」を学ぶべきとき

U18侍ジャパンは謙虚な姿勢で「世界の野球」を学ぶべきとき

夏の甲子園が終わってから、甲子園で活躍した選手を中心に選抜チームを作り、海外に遠征し始めたのは、1990年代にさかのぼる。



90年代前半はU18 日米韓三国親善高校野球が行われ、1994年からはBFA(アジア野球連盟) U-18アジア選手権大会が行われた。また2006年からは日米親善高校野球大会が5回にわたって行われた。
これとは別に18U(AAA)世界野球選手権大会が、1980年代から開催されていたが、開催日が7月から8月中旬だったために、甲子園の日程が重なる日本はほとんど参加できなかった。
しかし2013年の大会から、U18ワールドカップと改称され、 8月終盤から9月の開催となったため、日本の高校球児も参加が可能になった。この年から隔年開催となったので、間の年はBFA(アジア野球連盟) U-18アジア選手権大会に代表を送るようになった。

また、この2013年からは高校選抜は「侍ジャパンのU18代表」となり、高校生たちはWBCやプレミア12の日本代表チームと同じユニフォームを着るようになった。
参加し始めた年数が浅いこともあるが、侍ジャパンはU18ワールドカップでは、優勝経験はない。2013年、2015年大会の「2位」が最高だ。

■U18ワールドカップの意義は「世界の野球に触れる」こと
「U18ワールドカップ」に日本の高校球児が出場する意義は「世界の野球に触れる」ということに尽きるだろう。
日本の高校野球は高反発の金属バットを使用し、球数制限なしで行われている。大会は1戦必勝のトーナメント。
しかし、世界のアマチュア野球は木製バットを使用し、球数制限を行う中で行われるリーグ戦だ。
メディアは「アメリカを倒して世界一」と大きく報じていたが、高校野球は「教育の一環」であり、勝敗よりも「試合を通じて選手の経験値を高め、視野を拡げる」ことが、重要だったことは言うまでもない。

今回、開催された韓国、釜山市郊外の機帳(キジャン)球場は、4面の野球場(公式戦で使用できるのは3面)からなるベースボールコンプレックスだ。日本には、こういう施設はない。2015年に日本の関西でU18ワールドカップが行われたが、このとき各国の選手は豊中球場や甲子園などに試合のたびに移動していた。
しかし今回は、1つの場所で最大3試合が並行して行われる。選手や指導者、審判なども常に同じ場所に集結し、交流の機会が生まれる。事実、会場では他国の選手同士が交流するシーンも見られ、「お祭り」のような雰囲気が漂っていた。こういう環境下で、国際交流をすることも大きな意義だったはずだ。

■次第に伸び伸び野球をし始める


オープニングラウンド、初戦のスペイン戦、日本は苦戦する。スペインの先発ルナの勢いのある速球を打ちあぐねた。
日本の打者はバットが振れていない。1回、2番の坂下翔馬(智弁学園)は、こするようなファウルを何球も打った挙句に二ゴロ。金属バットへの対応はできていないと感じられた。
4回に、打順が一巡したスペインは数少ないチャンスを活かして2点を先制。日本は敗色濃厚となったが、105球の球数制限によって7回でルナが降板。8回から投手はフランク・フェルナンデスに変わったが、制球が今一つのこの右腕を日本打線が攻略し、4点を奪い返し、辛勝した。
日本は「球数制限」によって勝ちを拾ったということもできるだろう。また高反発の金属バットから木製バットに持ち替えたものの、十分に対応はできていなかった。また選手には硬さが見られ、甲子園大会の疲れから回復していない印象の選手もいた。

二戦目の南アフリカ戦、立ち上がりは出塁した走者をバントで送ろうとするなど、慎重な試合運びだったが、投手の実力が明らかになると、選手は伸び伸びと野球をするようになる。
昨年までと大きく違ったのは、木製バットを金属バットのように振り回さず、速く鋭く振っていたことだ。ライナー性の打球が多くなり、大量得点した。19-0で6回コールド。南アフリカはノーヒットで、走者は1人だけだった。
南アフリカはWBSCのランキングは26位のスペインより上の23位だったが、日本との実力差は明らかだった。
西純矢(創志学園)は2本塁打した。機帳の各球場は左右中間のふくらみがなく、本塁打が出やすい球場だが、西のホームランはいずれも左中間にライナーで飛び込む当たりだった。

三戦目のアメリカ戦は、ナイターになった。しかも試合開始時から雨が降り続き、コンディションは悪かった。また、球場の照明は明るいとは言えなかった。
この日以降、雨の日が多くなったが、日本チームの失策が増えた一因だったろうと思われる。
日本はアメリカに初回に先制されたが、その裏に追いつき、3回、4回と5点ずつを取った。四死球が多く、相手投手の不調に助けられた形だが、アメリカの追撃を振り切って16-7で大勝した。

■チームの流れが暗転
チームの流れが暗転したのは、四戦目の台湾戦だった。
台湾は昨年のU-18アジア選手権大会でも日本に勝利した王彦程が先発。王は8月20日に楽天と育成契約を結んでいる。
日本は初回に石川昂弥(東邦)が先制タイムリー。3回に台湾が追いつく。このまま5回まで進んだが、台湾は2つの遊ゴロ失策を足掛かりに2点を取る。この後、降雨が激しくなり、コールドゲームとなった。
優秀な投手に対すると、木製バットに慣れない日本打線は湿りがちとなった。

この試合で勝てばスーパーラウンドへの進出が確定したが敗れたことで、最悪の場合敗退の可能性さえでてきた。
このプレッシャーの中でパナマとの五戦目、この日も降雨で試合開始は19時半から。2回に1点ずつを取り合ったが、日本は5、6回に2本のホームランなどで4点を奪う。6回に降雨でコールドゲームとなった。

スーパーラウンド一戦目、日本は満を持して奥川恭伸(星稜)が先発。奥川は7回を2被安打本塁打の1失点に抑え、18奪三振を奪う。日本の打線は3安打だったが、相手投手が乱調で11個もの四死球を出したこともあって、5対1で勝利した。

スーパーラウンドではオープニングラウンドの勝敗が持ち越される。1敗している日本は、負けられない展開ではあった。

そんな中で、二戦目の韓国戦を迎えた。
日本は佐々木朗希(大船渡)が先発したが豆がつぶれて1回、19球で降板。日本は急遽、西純矢(創志学園)が上がる。
7回に日本は韓国の先発ソ・ヒョンジュンを攻略して2点を先制、しかし8回に宮城大弥(興南)がつかまり同点に追いつかれる。この失点にも三塁の失策が絡んだ。
このままタイブレークとなり、日本は無死一二塁の設定から、犠打で二三塁として武岡龍世(八戸学院光星)が2点タイムリー二塁打。しかし続く韮澤雄也(花咲徳栄)が遊直に倒れる。その裏に韓国は失策と四球で無安打のまま3点を取ってサヨナラ勝ち。
日本は韓国の9安打を上回る10安打を打ったが自滅した形となった。

この敗戦で、決勝への出場は絶望的となったがわずかな望を託して四戦目のオーストラリア戦を迎えた。
しかし日本は、わずか3安打。オーストラリア投手は5四死球を与えたが、それを活かすこともできず1-4で敗れ、5位が決定した。

■世界とのギャップを認識すべきとき


大会中、コーチが選手に「そんなんで世界一取れるんか! そんな甘ないんじゃ!」と叱責したと伝えられた。
オープニングラウンドでは、ナインの間にはリラックスした雰囲気が流れ、伸び伸びと試合をしていたが、スーパーラウンド以降は「日の丸」を背負い、「世界一」を目指すプレッシャーに押しつぶされたような印象だ。戦いに挑むメンタルトレーニングも今後は必要になるだろう。
端的に言えば「なぜ失策した」と叱責するのではなく失策しても立ち直れるポジティブなメンタルを作るような指導だ。
木製バットへの対応でも、球数制限、リーグ戦、タイブレークでの戦い方でも、世界の強豪国とは大きな差があるように感じられた。
また日韓の関係が悪化していたこともあり、交流や見聞を拡げる催しもなく、選手はホテルに閉じこもることとなった。

5位に終わった日本は、勝利を目指す以前に、謙虚な姿勢で「世界の野球」を学ぶべき時ではないだろうか。
指導者も含めて、世界とのギャップを認識して、体制を立て直すべきときではないだろうか。(広尾晃)


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