◆ 勢いある九州勢、夏の甲子園に期待

 新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止となった選抜高校野球。“幻のセンバツ”で見たかった選手として高橋宏斗(中京大中京)、中森俊介(明石商)、小林樹斗(智弁和歌山)、西川遼祐(東海大相模)、小深田大地(履正社)、来田涼斗(明石商)、細川凌平(智弁和歌山)の7人を個別にピックアップしてきたが、それ以外の新3年生の有力選手についても紹介したいと思う。今回は投手編だ。

 まず取り上げたいのは、下級生の頃から高い注目を集める、川瀬堅斗(大分商)と八方悠介(鹿児島城西)の九州勢2人だ。

 川瀬は1年夏からマウンドを任され、いきなり140キロを超えるスピードをマークしている大型右腕。その後は故障に苦しんだが、昨年秋は不動のエースとして九州大会3試合で完投。決勝の明豊戦は先を見据えて登板を回避したものの、チームの準優勝に大きく貢献した。高校の先輩である森下暢仁(広島)を彷彿とさせる伸びやかなフォームで、ボールの角度も申し分ない。体が一塁側に流れる点が改善すれば、さらにスピードもアップするだろう。

 八方もまた、旧チームから主戦として活躍している実力派右腕。プロ入りした先輩の小峯新陸(楽天育成2位)は“未完の大器”という印象だったのに比べ、八方は完成度の高さが光る。少し肘の位置が低いスリークォーター気味の腕の振りでフォームの流れが良く、コーナーに投げ分けられる制球力は出色。スピードもコンスタントに140キロを超え、打者の手元で変化するスライダーのキレも申し分ない。

 また、八方のチームメイトである前野将輝も最速140キロを超える好投手だ。チームとしても初となる甲子園は幻に終わったが、八方、前野ともに夏も注目を集めることは間違いないだろう。


 一方、昨年秋の明治神宮大会で評価を上げたのが片山楽生(白樺学園)と下慎之助(健大高崎)の2人だ。

 片山は全道大会では好不調の波が大きかったが、神宮大会の2試合では安定したピッチングを披露した。ストレートのスピードは130キロ台中盤から後半がアベレージながら、バランスの良いフォームで球持ちが長く、勝負所でギアを上げて三振を奪えるのも長所だ。打者としても4番を任されるなど打撃センスも光るが、将来も投手として勝負してもらいたい。

 下は183cmの大型左腕。長いリーチを柔らかく使える腕の振りが最大の特長で、サウスポーらしいボールの角度も魅力だ。左右どちらの打者に対しても強気に内角を攻めることができ、緩急の使い方も上手い。秋はイニング数を上回る三振を奪い、チームを神宮大会準優勝に導いた。

 片山、下ともに高校から直接プロというタイプではないが、大学や社会人を経てスケールアップする可能性は高いだろう。

 忘れてはならないのが昨年夏の甲子園で優勝マウンドに立った岩崎峻典(履正社)だ。少し体が一塁側に流れるのは気になるが、メリハリのあるフォームでシャープに腕を振ることができており、140キロを超えるストレートとスライダー、カットボールのコンビネーションは安定感がある。秋はもうひとつ調子が上がらなかったとはいえ、それでも試合をしっかり作ったのはさすがだ。

 また、岩崎を擁する履正社のライバルである大阪桐蔭も藤江星河、申原理来の左右2人の好投手に注目したい。


◆ エース以外にも各校に好投手が続々

 中止となった選抜から球数制限が導入される予定だったこともあり、各校のエース以外にも好投手が多い印象だ。そんなエース以外の投手の中で、スケールの大きさで双璧と見られるのが寺西成騎(星稜)と嘉手苅浩太(日本航空石川)である。

 寺西は中学時代から評判の右腕で、1年春の北信越大会では早くも先発を任されている。その後はなかなか安定感が出ず、新チームではエースの座を荻原吟哉に譲っているが、角度のある140キロ台のストレートは魅力だ。

 嘉手苅は190cm、105kgの日本人離れした体格の大型右腕。秋の公式戦は2試合、11回を投げて9失点と結果を残すことはできなかったが、145キロを超えるストレートは威力十分だ。また下に次ぐ二番手の橋本拳汰(健大高崎)もまだまだ力強さはないものの、190cmの大型右腕で将来が楽しみな素材であることは間違いない。

 スケールよりも実戦的なタイプの控え投手では、松島元希(中京大中京)を推したい。164cmという小柄なサウスポーだが、体つきはしっかりしており、全身を使ったフォームから投げ込むストレートはコンスタントに140キロを超える。秋は東海大会の決勝、神宮大会の準決勝、決勝と重要な試合で先発を任され、エースの高橋に繋ぐ役割を果たして見せた。今年の選抜でチームが優勝候補の筆頭に挙げられていたのも、高橋だけではなく、松島の存在があったからと言えるだろう。

 以上のように、プロも注目する有望な投手を紹介してきたが、選抜で見られなかったことは返す返す残念でならない。今回の悔しさを胸に「夏の甲子園」で輝く彼らの雄姿を見たいものだ。


記事提供:プロアマ野球研究所