なぜロッテのチームリーダーは究極のユーティリティーになり得たのか

なぜロッテのチームリーダーは究極のユーティリティーになり得たのか

攻守で抜群の存在感を放っている鈴木

 攻守にわたる縦横無尽の働きでチームをけん引している。自他ともに認めるロッテのチームリーダー・鈴木大地だ。

 今季は苦しいスタートだった。この6年間、遊撃から二塁、そして三塁とコンバートされながらレギュラーに君臨してきた男が、大砲レアードの加入によって開幕スタメンの座を失った。ZOZOマリンでの楽天との開幕戦では最後まで出番が訪れず、2015年から続いていた連続試合出場も532で止まった。

 だが、この開幕戦が転機となった。「開幕前の最後の練習で井口(資仁)監督と鳥越(裕介)ヘッドコーチに『頭からは行かない』と言われ、じゃあもう、どこでも守れるようにしておこうと切り替えました」。

 キャンプからオープン戦まではあくまでサード1本でポジション争いに挑んできたが、そんなことは言っていられない。ファーストミットに外野用グラブも作成し、練習でもあらゆるポジションに入って準備をするようになった。

 今季の初スタメンは開幕6試合目。不振の井上晴哉に代わり、一塁に入った。5月29日の日本ハム戦(札幌ドーム)ではプロ初となる左翼でも先発。このときは守備機会がなかったが、2度目の外野起用となった6月18日の広島戦(マツダ広島)戦では自身初の刺殺でスーパーキャッチを披露。バティスタの本塁打性の飛球をもぎ取ってみせた。

「一塁や外野の素人だからといって、ミスが許される世界ではない。ピッチャーも人生を懸けてやっている。中途半端な気持ちで守ってはいけないと思うし、へたくそでも、やるべきことは100パーセントやって臨んでいます」

 準備には最善を尽くす。鈴木のひたむきな姿勢が守備にも表れているということだ。「便利屋」であるとか「ポジションがない」などという言葉が耳に入ることもあるが、「結局は『勝つためにはお前が必要だ』と思われる選手になること。そのためにはどこでも守るし、便利屋だろうがユーティリティーだろうが、どんな呼び方をしてもらってもかまわない」と前を向く。

 絶対的なレギュラーにして、どこでも守れるユーティリティー。鈴木がそんな稀有な存在になり得ているのはもちろん、打線に欠かせぬ打棒を披露しているからでもある。昨季は最後まで思うような打撃を取り戻すことができぬまま、打率.266でシーズンを終えた。それが今季は交流戦終了時点でリーグ5位の.310。本塁打は早々と自己最多を更新する12本を放っている。

 打席ではとにかくバットを振っている。振れている、というよりも、思い切り振りにいっている。持ち前の積極性を取り戻したことが、打撃好調を支える要因の一つであることは間違いない。「余計なことを考えずに、『とにかく攻めるぞ』っていう感じですね。打ちにいってダメだったら仕方がない。もともと引っ張るバッターなので、逆方向にというイメージを残しながらも、自分らしくどんどん振っていこうと思っています」。

 その“攻めの姿勢”が、結果としてド派手なパフォーマンスを生み出している。6月16日の中日戦(ZOZOマリン)は最たるものだろう。5点を追う9回、2打席連続本塁打で反撃の狼煙を上げると、1点差に迫った二死満塁からバットをへし折られながらも執念の逆転サヨナラタイムリー。早くも今季3度目のサヨナラ打だった。

 繊細かつひたむきな守備へのアプローチと、積極的に攻めまくる打撃へのアプローチ。追い詰められ、ポジションを失ったことをきっかけに、さらに次のステージへと上がろうとしている。8月で30歳を迎える男は、どうやらまだまだ進化の過程にあるようだ。

文=杉浦多夢 写真=高原由佳


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