DH制導入を訴えた原監督



昨年の日本シリーズはソフトバンクの前に巨人が4連敗を喫した。今季こそ、セ・リーグの逆襲はなるか

 プロ野球セ・リーグが劣勢に立たされている。パ・リーグに対し、昨年まで日本シリーズで7連敗。2005年から実施している交流戦では、唯一勝ち越した09年以来10年連続で負け越しを喫した。「セ低パ高」の構図がはっきりしてきた中で、その格差を埋められるのか。セの逆襲に注目が集まる。

 5年ぶりのセ・リーグ制覇を果たした巨人が、日本シリーズでソフトバンクに4戦全敗した。過去7度のリーグ制覇と3度の日本一の実績を誇り、4年ぶりにユニフォームにソデを通した原辰徳監督をもってしても、近年最強と言われるソフトバンクの3年連続日本一を阻むことはできなかった。

 日本シリーズ敗退翌日の10月24日、原監督は報道陣に対し、「ソフトバンクだけではなく、パ全体に相当差をつけられている。(セとの間に)高い壁がある」と絞り出した。パワフルでスピード感あふれる相手にまったく歯が立たず、レベルの違いを実感。その対策として、「セ・リーグもパ・リーグと同じDH(指名打者)制にすべき」と訴えた。

 DH制はメジャー・リーグ(MLB)のアメリカン・リーグにならい、日本でもセに人気で遅れをとっていたパが独自性を出すために1975年から導入。投手が打席に立たずに打線に9人の野手が並ぶ。原監督はこのセ、パのルールの違いが実力差につながったと解している。

 DH制では投手が打線の上位、下位を問わず常に緊張感を持った勝負を求められる。胸元への厳しい攻めで制球力が磨かれ、ピンチで開き直れる度胸も鍛えられる。投打のせめぎ合いで全体的な底上げが図られるというのは間違いない。

 ベンチのメリットも多い。守備がレギュラーレベルに達していなくても、抜群の打撃力を持つ打者(外国人選手をはじめとしたこのタイプが結構いる)を先発で起用できる。好投している投手を、打席が回ってきたからといって交代させなくていい。可能な限りのレベルの高い戦力を求める指揮官にとっては、理想のルールでもある。

球界再編を機に劇的に変わったパ


 セもDH制を導入すればレベルアップできるのか。残念ながら、原監督の問題提起で賛否両論が巻き起こったように、そう単純な話ではないだろう。

 昨年のMLBワールド・シリーズは、DH制を採用しないナショナル・リーグのナショナルズが、ア・リーグのアストロズを4勝3敗で下して優勝した。ここ10年間でもナ・リーグが6度制しており、DH制を採るリーグが絶対的に強いというデータは当てはまらない。

 かつてはその不人気ぶりから「お荷物リーグ」と揶揄されていたパは、球界再編をきっかけに劇的に変わった。関係者が危機感を露わに、地域に密着した集客や人気確保のために腐心。今や観客動員をはじめファンの熱気はセをしのぐほどになり、呼応するように選手のモチベーションとプレーへの闘志が高まってきた。

 日本ハムがメジャー志向の大谷翔平(現エンゼルス)を強行指名して獲得にこぎつけるなど、編成部門を中心としたぶれない哲学と覚悟がパの随所で見られた。安直な外国人獲得を中心とした補強や、抽選の運に左右されるドラフト戦略だけにとどまらないチーム作りもパを強くした。ソフトバンクは育成選手が実戦で経験を積める三軍制に早くから熱心に取り組み、一芸に卓越した選手を獲得できるシステムを確立。アスリートとしての可能性を伸ばすためにハード面でも投資を重ね、すそ野の充実を図ったことも現在の揺るぎない強さにつながっている。

 阪神の谷本修球団本部長は、「パがセよりもグラウンド上でのデータ戦略で一歩先に行っている」という事実を、現場の肌感覚として数年前から認識。IT(情報技術)を駆使するパの野球に乗り遅れまいと球団を挙げて邁進している。リーグ間の違いは単純ではない――。そう気付いている関係者も少なからずいる。

 セのあるリーグ関係者は、「認めたくないが、この15年間はパ・リーグの時代だった」と漏らす。パが「セに土下座してでも」と嘆願した1リーグ移行が頓挫。そのまま突入した球界再編以降、謙虚かつ大胆に試行錯誤を重ねたパは大きく変わった。原監督が禁断とも言えるDH制導入を口にしたのはなぜか。伝統を誇るセが頑なだった姿勢を見つめ直し、意地とプライドを胸に巻き返しをするという意思の表れであってほしいとファンは望んでいる。

写真=BBM