今季エンゼルスの新投手となったキャラウェイコーチはフロリダにいながらエンゼルスの投手陣、大谷翔平と連絡を取り合って現状での最善を尽くしている

 新型コロナウイルスとの戦いで、SOCIAL DISTANCING(人と人との間で物理的距離を保つ)が世界の合言葉となる中、離れた場所にいても、コーチと選手が助け合い、いかにシーズンへの準備を進めていくかが、MLB各球団の課題になっている。

 レイズのエリック・ニーアンダーGMは「スタッフと選手が個人的に接触をしない。そこは徹底しないといけない」と釘を刺す。投手コーチが投手の家を訪ね、個人練習を見ることは当然だし、リハビリ中の選手がメディカルスタッフに直接診てもらうことも避けねばならない。

 それでもポジションコーチと、メディカルスタッフ、コンディショニングコーチは頻繁に選手と連絡を取り、話し合いながら準備を進めていく。エンゼルスのミッキー・キャラウェイ投手コーチは現在、自宅のあるフロリダ州におり、テレビ会議システムZOOMを使用し、エンゼル・スタジアムで練習する大谷翔平始め、全米にいる投手たちと連絡をとっている。

 練習映像を随時チェックし、助言を与える。グループテキストも使う。大谷は今季、トミー・ジョン手術からの投手復帰で、4月中旬にはキャッチボールの距離は55メートルに伸ばし18メートルの距離では強めに投げている。間もなくブルペンに入る段階で、本来なら投手コーチはつききりで見守りたい時期だが、現状の中で最善を尽くす。

 懸念されることは、開幕できた場合でも、予定されているキャンプが通常の6週間の半分以下、2週間から3週間と短いこと。春のキャンプは、技術を磨くとともに、シーズン中、野球ならではの激しい動きを連日行っても大丈夫なように耐性のある身体を再構築していく時期。それができていないと、試合の疲れからうまくリカバーできず、連戦の中エリートレベルのプレーを続けていけない。

 よくオープン戦は意味がないと言われるが、身体をエリートレベルに準備していくためにはとても重要なのである。2011年、NFLでロックアウトがあり、短いキャンプ期間でシーズンが開幕するとアキレス腱をケガする選手が多くでた。筋肉は血流が良いため早くリカバーできるが、腱、じん帯はそうではない。別のスポーツだが、野球でも同じ懸念がある。担当コーチと知恵を絞らねばならない。

 そんな中、昨今は新たなコミュニケーションツールが飛躍的に増え、距離が離れていてもいろんな方法でコンタクトが取れ、映像、数字など細かいデータを送れる。そこはプラス材料だ。例えばウェアラブルの「モータス・スリーブ」はヒジに巻いておけばその日のキャッチボールでどれだけヒジに負荷がかかったか計測でき、リハビリ中の投手はそれをコーチに報告する。

 野球選手用のアプリも開発されている。投手のメカニックを解剖する「PITCH AI(エーアイ)」、ウエート用の「TEAMBUILDR」などである。ちなみにドジャースのブランドン・マクダニエルコーチは30分のワークアウトビデオをYou Tubeで公開している。

「必要は発明の母」というが、一斉に全員が集まれないときにそれでもいかに効果的に練習するかを見出すテストケースになるかもしれない。この戦いの終息後も役立てられていくはずだ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images