昨年12月の大学日本代表候補合宿(愛媛・松山)で、獨協大・並木秀尊は50メートル走でアピールした

 電話口のNPBスカウト幹部は、興奮気味に話した。ゴールデンウイーク中も在宅勤務。例年ならば、1日に複数の現場をハシゴしている時期だが……。

 大学生野手のドラフト候補について聞くと、真っ先に「この選手、面白いですよ」と、獨協大・並木秀尊(4年・市立川口高)の名前をリストアップしてきた。

 声のトーンは、さらに上がる。

「昨年12月の大学日本代表候補合宿(愛媛・松山)を視察したんですが、あの足には、衝撃を受けました。何しろ、50メートル走で中大・五十幡(五十幡亮汰、4年・佐野日大高)のタイムを上回ったんですから」

 手動で一歩目を着地したところから計測するため、非公式であるとはいえ、五十幡の5秒42に対し、並木は5秒32をマークしている(写真)。

 五十幡は「サニブラウンに勝った男」として知られている。埼玉・長野中学時代に全国大会に出場。100メートルと200メートルで、現在の100メートルの日本歴代1位(9秒97)であるサニブラウン・アブデル・ハキーム(当時・城西大城西中、現フロリダ大)を制して優勝したのだ。

 並木の脚力に、前出のスカウト幹部は「ロッテ・荻野貴司になれる素材」と注目する。並木は170センチ70キロ。確かに体格も似ており(荻野は172センチ75キロ)、右投げ右打ちの外野手という共通点もある。鍛えがいのあるタイプであり、スピードを重視する野球には適合するだろう。

 獨協大は首都大学二部リーグに所属している。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、リーグ運営が変更。一部最下位と二部優勝による入れ替え戦が開催されないこととなった。つまり、獨協大の今春の一部昇格は消滅したのである。並木は今秋、一部での活躍を期していただけに、無念に違いない。秋の通常開催も不透明であるが「二部優勝→一部昇格」を遂げた上で、プロ入りが最高のシナリオだ。

「足で客を呼べる」可能性を秘めた並木。NPBスカウトの目をクギ付けにした、その俊足から目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=山田次郎