最速137キロの数字以上に、手元でボールの伸びがある。帝京長岡高・吉田行慶は今夏の地方大会の開催を願っている

 最初で最後の夏――。

 帝京長岡高(新潟)のエース兼主将・吉田行慶(3年)は今夏の地方大会開催を、心から願っている。

 帝京高では1年秋、東京大会2回戦(対創価高)で登板機会を得た有望選手だったが、昨年4月、帝京長岡高へ転校している。規定により1年間、公式戦には出場できず、スタンドでチームメートの戦いを見ていた。今春から出場するはずも、新型コロナウイルス感染拡大を受け、春季県大会は中止となった。

「マウンドに上がりたい思いをずっと、持ち続けきた。それが、モチベーションです」

 今年4月から帝京長岡高を指揮するのは芝草宇宙監督(元日本ハムほか)である。2018年4月から臨時コーチとして指導し、昨年11月に監督就任が発表された。

 芝草監督はNPB通算46勝で主に中継ぎとして活躍した右腕だ。吉田の父・吉田篤史氏は日本文理高(新潟)出身の元ロッテ投手で、今季から四国IL徳島を監督として率いる。

「父からはお前が中心になって、1人で勝ち上がれるようになれ、と言われています。絶対に勝つつもりです。夏にかける思いは強い」

 芝草監督はチームの起爆剤として就任早々、吉田を主将に指名した。当初は困惑していたが「マウンドでも自分が引っ張っていくつもり」と、立場を与えられて以降は自覚が増したという。最速137キロ。カーブ、スライダー、フォークをリズム良く投げ込むのが持ち味。芝草監督からはフィールディング、けん制、クイックなど周辺部分の指導を受け、投手としての総合力がレベルアップしている。

 吉田とバッテリーを組む西村俊亮も、浦和学院高(埼玉)からの転校組(18年12月)だ。

「自分と同じ思いを持っており、(転校する)決め手となった部分あります」

 帝京長岡高は今年1月、全国高校サッカー選手権で新潟勢初の4強進出と快進撃を見せた。一方、野球部は春夏を通じて甲子園出場がない。当然、サッカー部から大きな刺激を受けており、吉田は「夏は自分がすべて投げる準備をしています」と力を込める。緊急事態宣言は5月末まで延長。同校の休校は10日までとなっているが、今は辛抱のとき。最初で最後の夏を完全燃焼する、それだけである。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎