MLBが交わしていた9000人の統一契約書を一時無効にする強権を発動したマンフレッドMLBコミッショナー。果たしてこの措置でMLBに関わるすべての人を救えるだろうか⁉

 ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーが現地時間4月20日、MLB球団が選手以外のコーチ、スタッフ、職員など9000人と結んでいる統一雇用契約を5月1日に一時無効にすると各球団に伝えた。大統領の非常事態宣言下で、コミッショナーが強権を発動した。

 これにより球団は一時解雇や給料カットを断行できる。「球団はチケット売上やテレビ放映権料などの収益に依存している。球団には十分な手元資金はなく、試合がないと給料は払えない。この処置により、実際に雇用関係がどうなるかは個々の球団による」とマンフレッドコミッショナーは言う。

 MLBは過去20年間、大幅な増収増益を積み重ねてきたため、球団職員の数も飛躍的に増えている。野球部門で100人、ビジネス部門で200人を超えるスタッフを抱えるチームも少なからずあり、規模は過去10年で倍増した。そこに、この新型コロナウイルス・ショックだ。

 キャッシュフローがゼロになった。MLB球団自体がバブルのようにふくらんでいただけに大変である。そこにコミッショナーが助け舟を出した。とはいえ、現時点では2/3近くの球団が5月31日まではフルタイムの職員に給料を払い続けると表明している。

 マーリンズではデレク・ジーターCEOが部下たちに新型コロナの問題が解決するまでは自分の給料(年俸500万ドル)はいらないと伝え、ほかの重役も給料カット、その分で5月末までは野球部門のスタッフの雇用を維持するとした。

 パドレスも、同じく重役たちのサラリーを減らし、今季の最後(10月31日)まで職員を雇用し続けると言う。ヤンキース、レッドソックス、ブルージェイズ、ブレーブス、フィリーズ、ジャイアンツ、レッズ、ツインズなどが5月31日までは雇い続けると約束した。

 監督、コーチ、トレーナー、スカウトなど現場のスタッフも同様である。メジャーの監督の中で、上はテリー・フランコナ、ジョー・マドンなど年俸400万ドルを超す高給取りから、下は80万ドル程度と幅があるが、概ね大幅カットだろう。

 なちなみにMLB本体もマンフレッドコミッショナーなど重役の給料を平均35パーセント減らし、1200人の職員を5月末まで雇い続けるという(マンフレッドの年俸は推定1100万ドル)。その上で、各球団は試合の日のみ働く職員を1000人以上も抱えている。駐車場、チケット売り場、スタンドで働く人、売店、セキュリティ、清掃要員などだ。

 彼らに対しMLBは3月17日の時点で各球団に100万ドルを費やし、4月末まで援助するようにと指導した。ジャイアンツは全部で170万ドル、レッドソックスは150万ドル、ヤンキースは140万ドル、メッツとエンゼルスは120万ドルと、それ以上に負担している。

 MLBは長年右肩上がりの成長を続けてきたが、突如すべてがストップし、ゼロになった。現時点で依然開幕のメドは立たず、お金が入るかどうかも分からない。規模が大きくなり過ぎていただけに、大量解雇は避けられないように見えるが、個々の球団が工夫を凝らし踏みとどまっているのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images