イチオシは苫小牧駒大の伊藤。日本ハムが1位指名を公言しているが……

 ついに明日に迫ったプロ野球ドラフト会議。奇しくも「編集部員コラム」の順番がドラフト前日にヤクルト担当編集に回ってきたので、アマチュア野球好きとして、担当チームにぜひ入団してほしい選手を挙げていくことにした。ほとんど担当の願望なので、実際の指名予想とはほど遠いことはご理解いただきたい。

 それと、今年は新型コロナウイルスの影響で無観客試合が多く、あまりプライベートで球場に行けなかった。今回名前を挙げるのは、あくまで自分の目で見た選手が中心になるため、高校生と西のほうの選手にはほとんど触れない。

 一番のオススメは苫小牧駒大の伊藤大海だ。日本ハムが1位指名を公言したそうだが、実績は大学生No.1だろう。1度駒大を中退しているので23歳だが、大学2年時から侍ジャパン大学代表入りし、クローザーを務めた男だ。苫小牧駒大ではチーム事情から先発を務めているため、プロでも先発、中継ぎと幅広い起用が可能だろう。
 最大の武器は、最速155キロのストレート。浮き上がるような伸びと球威があり、藤川球児(阪神)を彷彿させる。変化球のコントロールも抜群によく、スプリットが本塁手前でワンバウンドするのを見たことがないし、カットボールもキュッと曲がる。中村悠平や嶋基宏が彼をリードすると考えると、1年目から10勝は固いのではないか。さらに、彼はとにかく利発でシッカリ者である。「考えて野球をする」という、当たり前のようで難しいことを素でできる選手なのだ。

 以前、里崎智也さん(元ロッテ)と話をしたとき、若手をしっかり縛り付けて管理する球団と、それなりに自由にする球団があると聞いた。縛られたほうが野球に集中できる選手、自由にさせたほうが伸びる選手、管理されることに反発する選手もいれば、自由になったことで気が緩んでしまう選手もいる。伊藤ならば、ノビノビ育ててくれるヤクルトでも、しっかり自己管理して確実な成長を見せてくれると思う。

 もちろん、ヤクルトが1位指名最有力候補に挙げている早大の早川隆久も好投手だ。

 木更津総合高時代、彼が侍ジャパンU-18代表に選ばれたとき、高校日本代表と大学日本代表の壮行試合(QVCマリン)を見に行った。早川について当時印象に残っていたのが、8人投手がいる中で一人だけ体つきが違ったこと。つまり、ものすごく細かったのだ。今井達也(作新学院高−西武)も細身だったが、早川のほうが脆そうな細さ。今井をはじめ現ヤクルトの寺島成輝ら、投手8人中7人がプロへ行った中、早川だけはプロ志望届を提出しなかった。あの選択は正解だったのだろう。壮行試合で先発し、大学生相手に初回5失点した左腕が、大学4年間でガッシリとした体つきに進化し、最速も155キロまで伸ばした。早大で腐ることも自分に甘くすることもなく、しっかり己と向き合って力をつけた。その胆力は、きっとプロの世界でも生きるはずだ。

 ほかには、東海大の山崎伊織のストレート、カットボールがすぐにでもプロで通用しそうな威力だと思っていたのだが、故障がありトミー・ジョン手術明けだという。即戦力として考えるのは厳しく、早くても2、3年後の戦力と考えなければならない。指名するならば、未来への投資と考えたほうがいいだろう。ただでさえケガ人の多いヤクルトとなると、ちょっと手が出しにくいのも事実かもしれないが、持っているものは別格であることもまた事実。おそらくどこかの球団が、数年後を見据えて育成指名で狙ってくるはずで、その前に支配下の下位で獲得したい逸材である。

 慶大の佐藤宏樹と木澤尚文も素晴らしい投手だが、上位で消えるだろう。特に佐藤は1年時から登板機会を得てきて、実戦経験も豊富な左腕。スタミナもあり、キレッキレのスライダーはなかなかバットに当たらない。奪三振能力が高いため、リリーフでも活躍しそうだ。

 社会人投手であれば、セガサミーの森井絃斗の進化に感動した。昨年から「来年のドラフト候補」とは言われていたが、当時は正直、これじゃあ指名漏れだろうと思っていた。だが今年10月の都市対抗二次予選で見せたピッチングは、まるで別人。走者を出しても、落ち着いてマウンドに立てていた。高卒で社会人に進んだため、まだ21歳。伸びしろを秘める即戦力と言える。

 JR東日本の左腕・伊藤将司も、素晴らしい投球を見せてくれた。NTT東日本との第一代表決定戦の投球は、あわやノーヒットノーランという1安打完封劇。国際武道大時代から完成度の高い投手だったが、さらにスタミナもついてより大きく成長した。ボール自体はそんなに速くないものの、緩急で勝負できる部分は石川雅規のようだ。プロ入りできれば、1年目から先発ローテーションを守れる力はあると思う。

 伊藤と投げ合ったNTT東日本の左腕・佐々木健も、社会人ベストピッチと言える投球を見せてくれた。150キロを超える直球を投げるが、立ち上がりの悪さが課題なのと、試合によって調子の波が激しい。もう少し安定感が欲しいが、下位で獲得できれば大きな戦力になるだろう。

 捕手はあまり印象に残っている選手がいないので割愛する。

 内野手だと近大の佐藤輝明が1位候補と騒がれているが、彼を最後に見たのは2年前の神宮大会のことなので、現状については触れない。

 関東圏の内野手なら、中大の牧秀悟が一番だと思う。某球団のスカウトは「牧は1位でないと獲れないと思う」と話していた。二塁も遊撃も守れる牧は、大学ジャパンで四番を務めた右のスラッガー。打球の飛距離も申し分ない。それと、吉田正尚(青学大−オリックス)や大山悠輔(白鴎大−阪神)など、近年の大学ジャパンの四番打者にはハズレがない。山田哲人がFA権を行使してしまっても、後釜となれるだけの素質はあると思う。

 守備力では、亜大の矢野雅哉と東北福祉大の元山飛優が大学では双璧だろう。遊撃手が固定できないヤクルトにはもってこいだ。

 矢野、元山をはじめ、今年はかなり「左打ちの遊撃手」が豊作で、数いる遊撃手候補の中でも、担当のイチオシはNTT東日本・上川畑大悟。フットワークの軽さ、ポジショニング、肩の強さ、そして送球の正確さはどこを取っても非の打ちどころがない。捕手のサインを見て、逐一後ろ手で外野手に球種を伝える生真面目さもいい。NTT東で臨時コーチを務める井端弘和さん(元中日ほか)も、守備はプロでもすぐに通用するとか、坂本勇人(巨人)の次にうまいと言っているそうだ(上司談)。橿渕聡スカウトグループデスクも、「あの守備はすぐにでもプロで通用する。内野が欲しい球団は獲得するのでは」と言っていたとか(こちらも上司談)。

 高津臣吾監督は以前、「投手の防御率が悪いのは、投手だけの責任ではない」と言っていた。記録にならない守備のミスは多く、チーム全体の守備力強化も課題の一つ。宮本慎也のような堅守の遊撃手を置き、そこを中心にセンターラインを固めていけるのが理想だろう。

 中堅手も固定できていないが、山崎晃大朗や濱田太貴、そして塩見泰隆らに期待しつつ、五十幡亮汰(中大)が欲しい。俊足を生かした守備範囲の広さは非常に頼もしい。それに加え、打撃、走塁でも進化を見せている。2年までは「ただ足が速いだけ」という印象の選手だったが、昨年それを覆された。当てて逃げるのではなく、しっかり振り抜いて外野に運んでヒットにしている。盗塁も、足の速さに頼ったものばかりのように思えたが、リードの取り方、スタート、スライディング、すべて向上した。典型的なリードオフマンタイプで、村上宗隆の前に走者を出しておきたい意味でも、村上が敬遠されないために後ろに青木宣親や山田哲を置いておきたい意味でも、五十幡が一、二番にいる打線は魅力的だ。

 JFE東日本の今川優馬もいい。飛ばす力はアマ界でも屈指だろう。あと10年くらい打率3割を打ちそうな青木がいるものの、主軸候補として獲得しておきたい。ハツラツプレー、愛嬌たっぷりの笑顔で、愛されキャラとしても売り出せそう。ヤクルトの明るい雰囲気にもマッチするのではないか。

 本当はもっと多くの候補を挙げて、ヤクルトの戦力状況や雰囲気に合った選手をピックアップしたいところだったが、少々ありきたりな人選になってしまった。新型コロナの影響もあったとはいえ、ここまで読んでくださったファンの方には力不足で申し訳ない。来年以降もヤクルトとアマチュア野球の二刀流を継続しながら、ドラフト前に同様のコラムを書きたいので、少しだけ期待してほしい。

 余談ではあるが、東京ガス1年目の左腕投手・高橋佑樹がヤクルトファンらしい。ツイッターのプロフィールにそう書いてあった。ドラフト解禁となるのは来年なので、ファンの皆さんは、今から東京ガスの高橋に注目しておいてほしい。来年、相思相愛の1位指名があるかもしれない。ちなみに彼はJR東日本の補強選手として都市対抗に出場するので、興味のある方は、ぜひ。

文=依田真衣子 写真=高原由佳