4年連続でレギュラーシーズンベスト5に選出された金丸晃輔(シーホース三河)が、10日の「B.LEAGUE AWARD SHOW 2019−20」終了後に個別取材に応じ、喜びを語った。

「正直、今年は厳しいかなって思っていたので、聞いたときは驚きの方が大きかったですね。選手としてはこのような形として評価されるのは一番うれしいことで、自信につながります。素直にうれしいです」

 今季の三河は18勝23敗という不本意な成績でシーズンを終えた。それでもベスト5に選出されたのは、今季の金丸のパフォーマンスが、いかに記録にも記憶にも残るインパクトのあるものだったかの裏付けでもある。

「フリースローの連続成功記録だったり、1試合での3ポイントシュート成功数が歴代最高タイに並んだことを評価してもらえたのかな」と金丸は自己分析する。

◆「出来過ぎです」97.4%という驚嘆の成功率で4年連続ベストFT賞を獲得

 最も印象に残っている試合・プレーは、「フリースローの連続成功が途切れた試合(2月9日レバンガ北海道戦)」だという。

 第4クォーターの開始3分、相手のテクニカルベンチファウルで得た通算66本目のフリースロー。金丸が投じたボールがリングからこぼれると、アリーナからは悲鳴が上がった。
なんとも表現しがたい複雑な笑顔を見せた金丸は、「ついにこのときが来たかと。60本くらいから『そろそろ来るかな』と、毎回外すかもって思っていました。自分がファウルをもらった時に打つのはいいんですけど、相手がテクニカルファウルをした時とかに1本だけ打つのが本当に嫌ですね。外したのもそうでした」と”このとき”について振り返る。

 チームメイトの川村卓也からは「やっと肩の荷が下りたな」と声をかけられたと言う。「これで、もう落としても大丈夫だなって。リラックスしすぎて、昨日も落としましたけど……」と3ポイントを100%の確率で決めた宇都宮戦後に語っていたが、シーズン通して外したのはこの2本のみ。開幕から65本連続成功という新記録達成に加え、シーズントータルで78本中76本成功(97.4%)。「驚異的な数字。自分で言うのもなんですけどすごいなと」。金丸本人も驚く成績で4年連続FT賞を獲得した。

 練習中に100本以上連続でフリースローを決め続けたことがあるという”精密機械”も、「これだけの記録を残した次の年っていうのは地獄ですよ。『金丸は落とさない』という目で見られるプレッシャーや、65本という記録を更新してくれるという期待感を寄せられた中で打つのは、尋常じゃないくらいのメンタルが必要になりますよね。できればそっとしといてほしかったですけど」と苦笑い。

 常に冷静沈着な金丸に「強いメンタルはどのように鍛えられるのか」を尋ねると、「メンタルを練習で鍛えるのは難しいんです。例えば接戦でこの1本落としたら負けるというようなプレッシャーに打ち勝つ経験を踏まえて強くなっていくものなので。僕はそういう経験をしてきているのである程度メンタルが強いのかなと自分でも思うんですけど、もっと鍛えるためには、やっぱり65本を越えるしかないと思います」とさらなる成長のためにも、記録更新に意欲を見せた。

◆「色々な経験ができた特別な年」

 2017-18シーズンのオフに橋本竜馬(レバンガ北海道)、比江島慎(宇都宮ブレックス)が移籍し、チームが変革期を迎える中、金丸は2季続けて「苦しいシーズン」を過ごしてきた。特に2017-18シーズンは強いメンタルを持つ金丸をして、「心が折れそうな時が何度かあった」という。

 今季は3年連続得点王に輝いたダバンテ・ガードナー、元祖オフェンスマシンの川村らが加入して前評判は高かったが、開幕から2カ月を終えて4勝11敗と黒星が先行し、金丸自身も調子を落とした。

「最初は自分のパフォーマンスが出せずにもがいていました。キレイなバスケットをやろうという意識が強すぎて、自分を出せていないなというのがありました。今季は昨シーズンの経験があったし、ベテラン選手がいて負担が減ったので、心が折れるところまでは行かなかったですけど、苦しかったですね。今季はピック&ロールがうまい選手、インサイドに強い選手が加わったので、少し遅かったかもしれないですけど、年末以降、3ポイントを積極的に狙うことに集中してからは自分自身の調子が上がってきました」と明かす。

 シューターとしての原点に回帰を図った金丸は、そこから圧巻のパフォーマンスを披露する。2月17日の宇都宮ブレックス戦で3ポイント7本すべての沈める”ゾーン”に入ると、3月15日に無観客試合で行われた横浜ビー・コルセアーズ戦では、リーグタイ記録となる1試合11本の3ポイントに成功、キャリアハイとなる45得点をマークする。

 その間に行われたFIBAアジアカップ予選チャイニーズタイペイ戦に、日本代表として6年ぶりに公式戦に出場。21分出場し、ライアン・ロシター(宇都宮ブレックス)とともにチームハイとなる17得点を挙げて存在感を示すとともに、自らも代表から大きな刺激を受けた。

 さらに遡って、1月に開催された「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2020」では、ファン投票で最多得票数を獲得。B.WHITEのキャプテンを務め、3ポイントコンテストでは連覇を飾った。シャイで、目立つことをあまり好まない職人気質の金丸も、お祭りを盛り上げるのに一役買った。

「僕にとっては、今までとは違う経験ができた特別な年でした。今季は試合で得点をとるということだけでなく、代表やオールスターといった面で、シーホースを世の中に出すことに貢献できたという実感があります。スタッツだけでなく、そういうところも含めてのベスト5なのかなという思いがあります」

◆東京五輪とMVPへ意欲。変わらず、さらなる進化を目指す

「プロ生活が始まってから毎年、何かしらのタイトルを1つ取りたいという気持ちを持ちながらやってきました。現役を続ける以上、その思いは引退するまで変わりはないです。1つと言わず、2つ3つと取りたいという思いもあります。ベスト3P成功率賞はBリーグ初年度から取れていないので、シューターとしては狙いたいタイトルですね」

 来季こそはMVPをという期待も高まるが、「3ポイントだったりフリースローだったり、数字を残してチームに貢献する。そしてチームを勝たせて勝率を伸ばす。それが僕の役割だと思っています。今回はチームを勝たせるという部分が足りなかった。数字を残してチームを勝たせることがMVPにつながると思います」

 延期となった東京五輪へも「絶対に出たい」と意欲を見せる日本が誇るオフェンスマシンは、苦しんだ2シーズンを経て確実に進化を遂げた。来季どんなバージョンアップを披露してくれるだろうか。満員のアリーナでその姿を見られる日を想像しながら、長いオフシーズンを過ごしたい。

取材・文=山田智子