新型コロナウイルスでアメリカの経済が停滞するなか、同国の失業保険の申請者数が過去最大を更新した。

米労働省の26日の発表によると、21日までの1週間で失業保険を申請した人は約330万人に上った。

これは、1982年に記録した以前の最大記録69万5000人を5倍近く上回る。

申請の急増は、多くの州で当局者を右往左往させている。また、10年にわたって続いた景気拡大の突然の終えんを示している。


アメリカの各州では当局の指示で、レストランやバー、映画館、ホテル、スポーツジムなどが新型ウイルス対策として閉鎖している。

自動車メーカーは生産を停止し、航空業界は急激に落ち込んでいる。エコノミストらによると、アメリカの労働者の5分の1が仕事をできない状態にあるという。

アナリストたちは、現在のデータが示すより現状は悪い恐れがあると話す。州当局では電話回線が混線し、ウェブサイトがクラッシュしているとの報道が出ているという。パートタイム労働者など一部の働き手は申請資格がない。

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パンテオン・エコノミクスの主任エコノミスト、イアン・シェパードソン氏は、「米経済について1996年から書いてきたが、現時点のデータはこれまで見た中で圧倒的に最悪だ」と述べた。

全国的な数値は、2008年の金融危機の最低時と比べて5倍近く悪い。

イリノイ州では、1週間の失業保険申請が10倍に増えた。早期に大規模な規制を実施したニューヨーク州でも5倍以上、カリフォルニア州では3倍以上になっている。小さな州の影響はさらに深刻だ。

ウォルマートやアマゾンなどの小売業者は従業員の募集計画を発表したが、失業分をカバーするには至らないとエコノミストは指摘した。米経済は大部分が消費者支出に頼っているため、収入が消滅することで経済がどんどん悪化することが見込まれる。

RSMの主任エコノミストのジョセフ・ブラスエラス氏は、「新型ウイルスのリスクが去っても、簡単にスイッチを換えて雇用を危機前に戻せるものではない」とツイートした。


米下院では、2兆ドル(約220兆円)規模の経済刺激策の可決が見込まれている。この刺激策には、成人1人当たり1200ドルの直接給付や、失業保険の拡大、航空業界など打撃の大きい業種への支援などが含まれている。連邦準備制度理事会(FRB)も経済活性化のため、前例のない措置を取っている。

そうした対策を実施しても急激な経済縮小は避けられないと、アナリストたちはみている。封鎖により小売りやファストフードなど低賃金の事業所が人員削減や閉鎖に追い込まれているため、特に低所得の労働者が困難な立場に置かれている。

パンテオン・エコノミクスのシェパードソン氏は、失業率は近いうちに少なくとも6.5%に達するとみている。これは以前の約2倍で、将来さらに悪化するとしている。

アメリカの失業率は2月まで、歴史的な低水準の3.5%前後で推移していた。失業保険の申請は3週間前まで21万件にとどまり、トランプ氏は労働市場の健全さを称賛していた。

経済の強化を唱えてきたトランプ氏は、来月には現在の規制や制限を緩和したいと表明している。

しかし、感染者数の増加を懸念する州当局は、連邦政府の指示に従わない可能性もある。アメリカの新型ウイルスの感染者数は26日現在、6万9000人を突破している。

FRBのジェローム・パウエル議長は26日のテレビ局のインタビューで、「順番としてはまず新型ウイルスの感染拡大を抑え、それから経済活動を再開する」と主張。

「この期間を克服と新型ウイルスの抑制が早く実現するほど、経済も早く回復できる。(中略)おそらく第2四半期は大きく下落するだろうが、経済活動は再開され、今年後半には調子を上げるだろう」との見通しを示した。


<分析> サミラ・フセイン、ニューヨーク経済記者

たった1週間で300万人以上のアメリカ人が仕事を失った。この人数は現実より少ないかもしれない。

ほんの数週間前までは、失業率は過去半世紀で最低水準だった。労働市場は今後も健全だろうと多くがみていた。それが今では、失業率は13%以上に達するだろうとの見方が専門家から出ている。

米経済の急降下のスピードには驚くばかりだ。トランプ大統領が早期に経済を再開させたがるのも無理はない。

トランプ氏は米経済の好調さで評価されてきた部分があり、失業率の低さと株価の記録的な上昇を自慢してきた。

大統領選の今年、トランプ氏はその両方を失った。