ジャスティン・ロウラット、BBCパノラマ

イギリスで開発中のCOVID-19(新型コロナウイルスの感染症)向け治療薬の臨床試験が、サウサンプトン大学病院で進んでいる。

この新薬は、英バイオテクノロジー会社シネアジェンが開発中で、ウイルス感染した際に体内でつくられるインターフェロンベータというタンパク質を利用したもの。

臨床試験の初期結果は6月末までに出る見込みだ。

新型ウイルスに効果のある治療法はまだほとんど見つかっていない。医師らは患者の免疫システムに頼らざるを得ないのが現状だ。

どんな薬?

インターフェロンベータは、体内でウイルスと戦う最初の防衛部隊の一部で、ウイルスによる攻撃に備えるよう人体に警告を発するものだと、サウサンプトンにあるシネアジェンの最高経営責任者リチャード・マースデン氏は説明する。

同氏によると、新型ウイルスは人体の免疫システムから逃れる戦略の一部として、ウイルスの複製を抑制するとみられる。

開発中の薬は、インターフェロンベータを特別に製剤したもので、新型ウイルスに感染している人の気管内に直接投与する。免疫機能がすでに低下している患者であっても、強力な抗ウイルス反応を引き起こすことが期待されている。

インターフェロンベータは、多発性硬化症の治療で広く使われている。

シネアジェンはすでに、開発中の薬について、ぜんそくなど肺の持病がある患者の肺で免疫反応を刺激したとしている。

だが、COVID-19の患者に効果があるかは、厳格な臨床試験を経て初めて判明する。

75人の患者が参加

ケイ・フリトニーさん(67)は臨床試験に参加している75人の1人で、BBCパノラマが独占取材した。彼女たちCOVID-19の患者は、吸入器を使って今回の薬を吸い込み、肺の奥まで送る。

フリトニーさんは病院のベッドで体を起こすのにも苦労していて、吸入器をくわえようとするとせきが出る。新型ウイルスの感染がわかったとき、最初に考えたのは自分の健康のことではなかったという。

「夫は心臓に問題があるので恐ろしくなりました。夫が死んでしまうかもしれないと」

呼吸困難で病院に運び込まれたフリトニーさんは、新薬の服用はそれほど不快ではないと話す。

「薬を飲んでいることには、終わるまで気づきません。そんなに悪いものではありません。家でも飲めると思います」

臨床試験はどのように?

現在の75人の参加者は、イギリス各地の10病院での募集に応じた人々だ。半数が開発中の薬を服用し、もう半数は有効成分が含まれていないプラセボ(偽薬)の投与を受ける。

参加者は試験終了まで、どちらを服用していたかはわからない。

「薬だとわかれば、気持ちにバイアスが生じる可能性がある」と、今回の薬を担当するサンディ・エイトキン看護師は説明する。

サウサンプトン大学のトム・ウィルキンソン教授は、薬を服用している患者が服用していない患者より、はるかによい効果を示すことが期待されていると述べる。


シネアジェンの臨床試験は、英政府が開始したばかりの、別の新薬の迅速な臨床試験計画のモデルとなるものだ。

アコード・プログラムと呼ばれるこの計画は、COVID-19患者向けの新薬の開発を促進するのが狙い。

計画の第1段階では、他の6種類の薬が対象となっている。

世界的には100種類以上の治療法が検討されている。エボラ出血熱の治療薬として開発されたレムデシビルという名の薬が、特に期待を集めている。

米当局はレムデシビルについて、COVID-19からの回復を促す「明白な」証拠があるとしている。

英国の治療法はいつ?

今回のインターフェロンベータの臨床試験の初期結果は6月末までに出ると見込まれている。ただ、新薬に望ましい効果が見られても、患者が日常的に使えるようになるには、さらなる検査が必要だ。

英政府はできる限り急ぐとしているが、それでも数カ月かかる可能性がある。

効果ありとされると、新薬と吸入器を大量に製造しなくてはならない。

シネアジェン最高経営責任者のマースデン氏は、すでに世界中の供給業者と話し合いを進めており、臨床試験が終わり次第、速やかに新薬の製造を始められるか協議していると述べる。

だがそれでも新薬が広く手に入るようになるのは年末になるだろうと、同氏は話している。


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