アメリカのドナルド・トランプ大統領は26日夜、抗議活動の一環として記念碑や像を「損壊、汚損、撤去」する行為に禁錮刑を科す大統領令に署名した。また、地方の法機関や警察がこうした「暴徒の支配」を看過した場合、連邦政府からの補助金を停止するとしている。

アメリカでは5月に黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官に暴行され、死亡した事件以来、各地で人種差別への抗議が続いている。

その中で、奴隷制や人種差別に関わりのある歴史的人物の像などが標的とされ、引きずり下ろされたり、落書きをされたりしている。

トランプ大統領はこの日、ニュージャージー州ベッドミンスターに保有するゴルフ場に向かう予定を突然キャンセル。ツイッターで「法と秩序が施行されるよう」ワシントンに残ることにしたと話した。

また、「アメリカの記念碑や像を守り、最近の犯罪的暴力と戦う、とても強い大統領令に署名することができた。この素晴らしい国に対する不法行為には長期の禁錮刑を!」と大統領令を説明している。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1276633518433538049


大統領令の内容は?

大統領令には「(記念碑や像の破壊を)実行し、支持する多くの暴徒、放火犯、左翼の過激派といった人々は、アメリカの統治システムを破壊しようとするマルクス主義などの特定のイデオロギーを持っている」と書かれている。

また、抗議参加者らは「我々の歴史について全くの無知だ」と記している。

大統領令では最近の記念碑破壊の例として、サンフランシスコにあるユリシーズ・グラント第18代大統領の像を挙げた。グラントは奴隷を所有していたが、その後の南北戦争では、奴隷制に反対する北軍の将軍として南部連合を敗北させた。また、北軍のために戦った移民の像や、同じく南北戦争で結成されたアフリカ系アメリカ人部隊の記念碑なども、破壊されたと説明した。

「個人や組織は、あらゆる記念碑についてその建立や撤去を平和的に訴える権利がある。しかし、あらゆる記念碑を暴力によって損壊、汚損、撤去する権利はない」

その上で、公共物の損壊罪には最大10年の禁錮刑が科せられるとする既存の法律を引用している。

大統領令ではこのほか、記念碑の保護を怠った地方の法務機関や警察組織に対しては、政府からの補助金を停止すると警告している。

一連の反人種差別抗議では、南北戦争時代に奴隷制を維持しようとした南部連合にまつわる記念碑が標的にされている。

トランプ大統領は、南部連合のシンボルはアメリカの遺産の一部だと擁護している。

また、15世紀のイタリア人探検家クリストファー・コロンブス(クリストフォロ・コロンボ)の像も、欧州によるアメリカ大陸支配のきっかけを作った帝国主義の象徴として標的にされている。

一部の州や地方自治体では、アメリカ連合国に関わりのある記念碑などを撤去している。

6月初めには、ヴァージニア州のラルフ・ノーザム知事が、リッチモンドにある南部連合のロバート・リー将軍の像を撤去すると発表した。

キリスト像も?

大統領令はさらに、「イエスやその他の宗教関係者や宗教美術を攻撃、撤去、もしくは汚すなどして、宗教関係の器物を傷つけたり汚したり破壊したりした」者は、厳罰に処すとしている。

これは、アメリカの著名な社会正義活動家ショーン・キング氏がツイッターで、「これがイエス・キリストだとか言われている白人の欧州人の像も撤去すべきだと思う。あれは白人至上主義の一種だ。常にそうだった。聖書では、イエスの家族が隠れて紛れ込もうとしたのはどこだと思う? エジプトだ! デンマークじゃない」と書いたことを、念頭においたものとみられる。