アメリカ政府は14日、新型コロナウイルスの影響ですべての授業がオンラインになった留学生を国外退去させる方針を撤回した。方針発表からわずか1週間での転換となった。

この方針をめぐっては、ハーヴァード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)が政府を相手に提訴していた。

マサチューセッツ州連邦地裁のアリソン・バーロウス判事は、訴訟当事者らが和解したと述べた。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、留学生はオンライン授業を受けながら、学生ビザで合法的に米国内にとどまることができるとした政府方針を復活させることで、当事者が合意した。この方針は、新型ウイルス感染が爆発的に拡大した3月に導入された。

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アメリカの大学にとって留学生は、重要な財源となっている。

ハーヴァード大学は最近、新型ウイルスの影響で、今秋の新学期からは授業をオンライン化すると発表した。MITも他の数多くの教育機関と同様、オンライン授業を続けると表明していた。

強制送還も示唆

アメリカ政府は先週、国内にいる留学生は対面での授業を受けない限り、秋以降は同国内にとどまることは認められないと発表した。

新型ウイルスの感染拡大により、3月で学期を終えて帰国していた留学生は、授業がオンラインになった場合は再入国が許可されないとされた。

米移民税関捜査局(ICE)は、規則に従わない場合は強制送還もあり得るとしていた。

ICEは当初、今年の春学期と夏学期のオンライン授業については、留学生はアメリカ国内に残ったまま受けられるとしていた。

しかし今月6日、オンライン授業の受講登録をした留学生が、対面授業に変更することなくアメリカ国内に残っている場合には、国外退去の手続きが開始される場合があると発表した。

大学が反発

その2日後、ハーヴァード大学とMITは、政府の方針撤回を求めて提訴。政府方針を「恣意(しい)的、気まぐれ、裁量権の乱用」と批判した。

59校の大学がこの動きを支持し、裁判の準備書面に署名。「(政府の)本当の狙いは、学生の『完全な学業課程』への参加を確実にすることでも、学生ビザ制度の正しい運用を守ることでもない。目的は(中略)『学校再開を促す』ことだ」と主張した。

マサチューセッツやカリフォルニアなど少なくとも18州の司法長官も政府を提訴した。

トランプ氏は新学期から、大学などに学生・生徒を戻そうと働きかけている。学校の再開は、数カ月に及ぶ同国の混乱からの脱却を示すものとして、11月の大統領選挙に向けて自身に有利に作用すると考えている。

一方、多くの教育関係者は学生の健康を懸念しており、流行が続く間は社会的距離の確保を続けたいとしている。

対象となっていたのは

撤回された方針は、留学生や職業訓練生に出されるF-1ビザと M-1ビザの保有者を対象にしていた。国務省は昨年度、Fビザを38万8839人、Mビザを9518人に発給したとしている。

アメリカには毎年、数多くの留学生が渡航する。多くが授業料全額を支払うため、大学にとっては重要な収入源となっている。

商務省によると、海外からの学生は2018年、アメリカに計450億ドル(約4兆8000億円)の経済効果をアメリカにもたらした。