ソニー(吉田憲一郎社長)は5月1日、IPを活用したライブ映像制作ソリューションの拡充や、コンテンツ管理システムのクラウド対応、映画制作用CineAltaカメラ「VENICE」とXDCAMメモリカムコーダー「FX9」の機能拡張などの新たな商品群とソリューションを発表した。高画質コンテンツの需要や配信・視聴環境の多様化に応え、高付加価値コンテンツの制作や高効率ワークフローの実現をサポートする。

 ソニーでは、映像だけでなく、音声やメタデータ、同期・制御などの信号をリアルタイムにIP伝送するIP Liveプロダクションシステムを推進している。今回、放送設備の効率的な活用をサポートするIP対応機器を拡充し、IPカメラエクステンションアダプター「HDCE-TX30」とIP CCUエクステンションアダプター「HDCE-RX30」を今夏に発売する。
 HDCE-TX30は、IP伝送の標準規格である「SMPTE ST 2110」に対応し、カメラとCCU間の映像・音声信号を双方向伝送できることに加え、IPタリー、IPインカム、PTP同期にも対応している。設置性に配慮しコンパクトに設計しており、中継車の乗り入れが難しい環境などでも、最小限の機材と人員でライブ中継などの映像制作を実現する。
 HDCE-RX30は、IP化した信号とCCU(カメラコントロールユニット)が送受信する信号を相互変換するIP CCUエクステンションアダプター。従来のベースバンドシステムで構築されたスタジオシステムなどIP化されていない環境で、新たにIPリモートプロダクションの運用を取り入れる際に適したモデルとなっている。カメラとCCU間にHDCE-TX30、HDCE-RX30の双方を追加することで、カメラ・CCUをつなぐ距離をIPネットワークで延長できるため、既存のHDCシリーズの局内カメラシステムを生かしたリモートプロダクションが可能となる。
 税別価格は、HDCE-TX30が160万円、HDCE-RX30が190万円。
 また、SMPTE ST 2110方式をサポートするSDI-IPコンバーターボード「NXLK-IP51Y」「NXLK-IP50Y」の機能を拡充する。9月予定のソフトウェアアップデートによりカラーコレクションに対応するほか、有償ライセンス「NXLL-AS50」によりオーディオディレイ機能に対応する。SDIとIP信号の相互変換を行う際の色調整や音声同期などを改善することで、ポストプロダクションの時間短縮を支援する。なお、有償ライセンス「NXLL-MC50」(1月提供)により、HDR対応や4K・HDのアップ/ダウンコンバージョンに対応している。
 クラウドを活用したソフトウェアベースの映像制作・管理ソリューションの提案では、6月から、4K/HD映像、音声、画像、文書コンテンツなどのコンテンツ管理ソリューション「Media Backbone NavigatorX」が、ローカル(オンプレミス)環境に加えて、クラウドベースでの構築に対応する。長寿命で耐久性に優れた大容量データストレージシステムのオプティカルディスク・アーカイブとの連携も可能で、コンテンツ管理の柔軟度を向上する。
 また、光学ヘッドシステムDCHS(Dual Channel Head System)を2台搭載し、ファイル転送速度のさらなる高速化を実現したXDCAMドライブ「PDW-U4」を12月に発売する。PDW-U4は、XDCAMディスクに収録されたファイルのノンリニア編集機への取り込みや、編集後のファイルの書き出しスピードを大幅に改善し、番組制作のワークフローのさらなる効率化を実現する。税別価格は60万円。
 多様化する映像制作者のニーズに応えるため、CM/シネマ/ドキュメンタリー映像制作機器やライブ・報道映像制作ソリューションを強化する。
 映画制作用CineAltaカメラ「VENICE」では、11月予定のファームウェアアップデート(Ver.6.0)により、ハイフレームレート収録可能なイメージャーモード3種を追加する。新たに追加となるフォーマットは、72fps/5.7K 16:9、110fps/3.8K 16:9、72fps/4K 6:5。これにより、VENICEに実装されているすべてのイメージャーモードで、ハイフレームレート収録が可能となる。
 XDCAMメモリカムコーダー「FX9」では、10月予定のファームウェアアップデート(Ver.2.0)により、映像表現をさらに広げる機能を拡張する。5Kサイズスキャンによる4K 60p収録やDCI 4K(4096×2160)収録、4K 16bit RAW出力対応に加え、ソニーのレンズ交換式一眼カメラα(Alpha)で培った瞳AFやタッチスクリーンによる操作(設定変更、フォーカスコントロール)など、操作性も向上する。また、これまでのS-Log3での記録に加え、ポストプロダクションの時間を短縮しHDR映像制作を実現するインスタントHDRワークフローに、新たに対応する。
 報道取材や番組制作、スポーツ・ライブ収録などに適したXDCAMショルダーカムコーダー「PXW-Z750」では、7月予定のファームウェアアップデート(Ver.2.0)により、4K/HD同時記録機能を拡張する。XAVC 4K 60p撮影時、同時記録するHDでもXAVC HD 60pが選択できるようになる。4K素材・HD素材のタイムコードが完全に一致しているため、編集の効率向上を図ることができる。
 XDCAMメモリカムコーダー「PXW-Z280」「PXW-Z190」では、21年初旬予定のソフトウェアアップデートにより、カメラをWi-Fiなどのネットワークに接続するだけで主要なライブストリーミングサービスや動画共有サイトでのライブ配信が可能となる機能「シンプルライブストリーミング」がFHD解像度(1920×1080)に対応する。カメラ1台で収録からライブ配信まで行えるため、効率的な映像制作をサポートする。
 新製品として、マルチフォーマットカメラ「HDC-5000シリーズ」「HDC-3000シリーズ」「HDC-2000シリーズ」「HDC4300」などの各種設定を集中管理・制御することができるマスターセットアップユニット「MSU-3000」と「MSU-3500」を今夏発売する。両機種ともに視認性の高い16:9の新液晶タッチパネルを搭載。MSU-3000は横型モデル(EIAラックサイズ)、MSU-3500は縦型モデル(EIAハーフラックマウントサイズ)で、実装スペースに合わせて選択できる。税別価格は100万円。
 また、4K 60p撮影に対応した小型リモートカメラ「SRG-XB25」と「SRG-XP1」を8月に発売する。SRG-XB25は光学25倍ズーム、SRG-XP1は水平画角100°以上の広角での撮影が可能な小型軽量なカメラ。IP対応により、ネットワークケーブル1本で電源供給やRTMP、RTSP配信が行える。また、NDI|HXに対応し、ネットワーク上の対応機器と接続することが可能。ソニーのリモートカメラシステムと、映像制作支援ユニット「Edge Analytics Appliance」などのさまざまな機器と組み合わせることで、映像制作現場に加え、イベント会場や大学などの教育機関の講義収録、企業の遠隔ミーティングなど、より効果的なリモートコミュニケーションが求められる幅広いシーンで使用できる。
 税別価格はオープン。市場推定価格は、SRG-XP1が22万円前後、SRG-XB25が30万円前後。
 さらにソニーでは、コンテンツ配信をはじめとする視聴環境の多様化にあわせて、HDRソリューションの機能拡張も進めていく。今夏から、スポーツ中継や音楽ライブなどで活用されているHDRプロダクションコンバーターユニット「HDRC-4000」に加え、HDCシリーズのカメラシステムでも、HDR/SDRに関連する設定データ群を、各機器のSDI信号上に「SR Live Metadata」として出力することが可能となる。
 また、SR Live Metadataは、収録時にもファイルに記録される。映像制作用プラットフォーム「Catalyst Prepare」上にSR Live Metadataを記録したHDRファイルをロードすると、メタデータ情報を元にSDRへの変換が行え、現行のHD SDRポストプロダクション工程に容易に取り込むことが年内に可能となる。すでに対応済みのプロダクションビデオサーバー「PWS-4500」や4K XAVCレコーダー「PZW-4000」に加えて、「PXW-Z750」「PXW-Z450」のカムコーダー2機種が新たに対応予定となっている。
 4K HDR対応ピクチャーモニター「PVM-X2400」(24型)と「PVM-X1800」(18型)(7月発売予定)については、21年3月予定の無償のファームウェアアップデート(Ver2.0)と有償のライセンスにより、本体上のHDR/SDR変換に対応する。モニター単体で、HDR(PQ/HLG/S-Log3)からSDRへの変換や解像度の変換(4KからHD)などのモニタリングが可能となり、利便性が向上する。