今どきの新築マンション・新築戸建住宅は、各居室に1台ずつのエアコン設置が可能だ。LDKのリビングダイニングエリアは、温水式の床暖房も標準仕様、戸建ての注文住宅は「全館空調」や「ビルトイン(埋込)エアコン」にアップグレードすることもできる。
 しかし、記者の老親が住む築40年超の分譲マンションは、風通しの良い角部屋だったこともあり、これまで一般的な壁付けの電気式エアコンを設置していなかった。正確には、ガスエアコン1基が新築時に設置されていたが、ほとんど使用することなく故障し、以降、ずっと放置している。記者が実家を出ていく直前、エアコンをつけてほしいと頼んだが、夏は自然風だけで過ごせると母親が主張し、話は終わった。
 それから十数年が過ぎ、エアコン本体の価格がだいぶ下がり、省エネ性能が向上したため、稼働時の電気料金も下がってきた。また、エアコンメーカーによる「エアコンはつけたり消したりするより、つけっぱなしが得」という指摘が広まり、現在65歳以上の高齢世代にもエアコンの冷暖房、特に暖房は最もエアコンが効率的と知られるようになったようだ。今回、記者が不要になった6畳用のエアコン本体を無償で提供すると持ち掛けたところ、以前は頑なにエアコンを否定していた母親は「つけてもいい」と答えたのである。

●追加料金多数 丸1日がかりのエアコン設置工事


 築40年超の分譲マンションのため、エアコン用の壁穴も専用回路のコンセントもない。今回、依頼したエアコン取付業者によると、現在は専用コンセントからの電源供給が設置の条件となっており、通常コンセントに取り付けている場合は、専用コンセントの新設が必要となる。
 事前にエアコン取付業者に現状と経緯を話し、残っているガスエアコンの配管を利用しない場合、ベランダに出入りするための窓(引き違い窓)に「窓パネル」を設置すれば可能ではないかとの提案を受けた。エアコン設置と引き換えに、その窓からの出入りは諦めることになる。
 専用コンセントは、玄関上の分電盤のブレーカーの空きから壁伝いにコードを這わせて新設。壁に2カ所の穴をあけ、4時間以上の時間をかけ、最終的にエアコンは無事設置できた。
 もう世間では10年、20年も前から普及していたエアコンを初めて設置するために、記者宅から取り外し費用、移送費、標準取付費とは別に、追加費用として「専用回路1万5000円」「ブレーカー工事3500円」「壁穴あけ料(2カ所)」「窓パネル1万8000円」「パイプ実費」の合計6万7650円がかかった。工事費なのでキャッシュレス決済は利用できず、基本的にその場で現金払いである。
 費用は端数を除く全額を負担した。今回取り付けたエアコンの後継機種にあたる最新2020年モデルは、主要ECサイトで6〜7万円程度で販売されている。もし新品を購入していたら、基本工事費にパイプ代が含まれているため、もう少し工事費総額は下がったはずだが、事前に合う窓パネルが調達できなかったかもしれないとのことだった。
 国土交通省や地方自治体は、既存の空き家を有効活用するため、若い世代に向けて「安い中古住宅を自分らしくリフォーム・リノベーションして住む」というスタイルを呼びかけているが、エアコンを戸建1階・2階、集合住宅といった設置条件の違いに応じた標準的な工事費の範囲で取り付けられないような仕様の物件は、もはや住まいとして不適格である。今回は意地になって費用をかけて設置したが、本来は「まとな冷暖房もない住まいに、無理やり住むのは自己責任」と放置するべきだったかもしれない。(BCN・嵯峨野 芙美)