耳に装着して音を聴くためのワイヤレスタイプのヒアラブルデバイスを活用した独自の事業を展開するネインが、ビジネスチャットの音声対応を核にしたテレワーク支援サービス「Zeeny Pro(ジーニー プロ)」を新たに立ち上げた。ネインの代表である山本健太郎氏にサービスの特徴と今後への展望を聞いた。

●フィールドワークのハンズフリー・アイズフリーを実現する


 Zeeny Proのサービスはヒアラブルデバイスを使ったメッセージや通知の送受信と音声読み上げを基本としている。現在サービスは二つの異なる方向に発展を遂げようとしていると山本氏が説明する。
 一つはネインが高砂熱学工業株式会社と共同開発を進めている、設備メンテナンスのフィールドワークに最適化した音声オペレーションサービスだ。この検証実験を土台に、フィールドワーカーの現場作業のデジタルトランスフォーメーションを加速させる使い方を模索している。
 その特徴は、ワイヤレスイヤホンやヘッドセットのようなネインのヒアラブルデバイスを装着したスタッフがAIチャットボットとつながり、マニュアルを音声で確認しながら計測・点検作業をワークフローに従って円滑に進められるようになるというもの。
 作業スタッフはタブレットなどのデバイスや筆記具を手に持たずに、あるいは目線を手元に向けずに「ハンズフリー・アイズフリー」の姿勢のまま、迅速に作業がこなせるようになる。山本氏は、現場からも作業効率が格段に向上したという反響を得ていると話す。

●ビジネスチャットのインターフェースを音声対応に


 もう一つは現在も広くビジネスの現場で使われている市販のビジネスチャットツールに、Zeeny Proの音声Botエンジンを連結させて、音声によるテキストメッセージの読み上げと入力を実現するプロジェクトだ。現在、ビジネスチャットアプリの「Slack(スラック)」に対応させるために開発を進めているという。
 ネインはZeeny Proのサービスについて、同社が開発したさまざまなタイプのヒアラブルデバイスが選択できるパッケージを用意。「月額1500円/1名〜」というサブスクリプション型のサービスで今後提供することを明らかにしている。
 ネインの山本氏は、それぞれの現場に即したシステムの設計、および運営と管理に必要なプログラムの構築を含む導入に向けたコンサルティングの全般についても、企業の要望に応じて柔軟に対応できる体制を整えていると話す。
 イヤホンやヘッドセットもネインが自社で開発しているため、例えば、音声通知を聞き逃した場合にはイヤホンを耳から取り出すと再生を一時停止するなど、クライアントが必要とする機能を作り込むこともできるという。柔軟さの背景には、ネインがこれまでに車載用音声ナビゲーションシステムのカスタマイズを手がけながら得てきたノウハウがある。
 ネインは今後もZeeny Proを、建設施工現場や製造工場、医療に介護の現場で働くフィールドワーカーの「仕事のデジタルトランスフォーメーション」を加速させるサービスとして広くアピールする考えだ。
 昨今は新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、在宅テレワークに関連する技術やサービスに注目が集まっている。多くの“在宅ワーカー”がPCの画面に目線を奪われ、キーボードから手を離せない勤務スタイルをより良いものに変えていくことのできるソリューションに関心を向けつつある。
 Zeeny Proが提案する「チャットボットとの音声コミュニケーション」というワークスタイルが、これから在宅テレワーク環境の整備を進めようとしている多くのビジネスパーソンの期待に応えるものになってほしい。

●ヒアラブルデバイスができることも広げていく


 ネインの山本氏は、現在Zeeny Proのサービスに新機能を追加することを含めたブラッシュアップを継続的に図っているという。さらにパートナーの輪を拡大するための新しい施策についても積極的に取り組んでいる。
 ネインのZeenyシリーズは音楽を楽しむためのBtoC向けのオーディオ用ワイヤレスイヤホンとして、上位モデルの「Zeeny TWS」やコンパクトな「Zeeny Lights」としても商品化されている。
 山本氏はZeeny Proに対応させることも前提として、デバイスのラインアップにアクティブ・ノイズキャンセリング機能を追加したものや、周囲の声を聞きながら同時に作業が進められるように開放型のハウジングを採用するイヤホンなども追加していきたいと意気込みを語っている。
 ヒアラブルデバイスに搭載できるICチップはめざましい勢いで高機能化・多機能化が進んでいる。山本氏はZeeny Proに対応するデバイスにモーションセンサーや高度計などを組み込み、ユーザーの行動経路をトラッキングしながらより精度の高い業務支援と情報分析を可能にするシステムを提供する構想も立てているようだ。多様なテレワークへの期待と関心に応えながら、ネインのZeeny Proが今後どのような発展を遂げていくことになるのか注目したい。(フリーライター・山本敦)