アップルのコンパクトで廉価なスマートフォン「iPhone SE」の第2世代機が4月24日にアップルのオンラインストアで発売された。5月11日からは国内の大手通信キャリアでの取り扱いも始まる。新しいiPhone SEのハンズオンレビューを報告しよう。

●最高性能のA13 Bionicチップを載せた


 第2世代のiPhone SEは2017年に発売されたiPhone 8と同じ約4.7インチの液晶Retina HDディスプレイを採用する筐体に、アップルが独自開発した最高性能のチップ「A13 Bionic」を載せたスマホだ。
 アップルのオンラインストアでは最小容量64GBのストレージを内蔵するSIMフリーの機種が税別4万4800円から購入できる。大手通信キャリアもiPhone SEの取り扱い価格を発表しているが、各社が用意する端末購入サポートを上手に利用すると2万円台から買える場合もある。そのためか発表以来「お手頃価格のiPhone」としても話題を振りまいている。
 カラーバリエーションはブラック/ホワイト/レッドの3色。iPhone 8と同様にリアパネルにはクリアな強化ガラスをあしらって透明感を持たせた。サイドフレームの素材はアルミニウムだ。内蔵ストレージの容量は64GB/128GB/256GBの3種類から選べる。
 新しいiPhone SEを使って筆者が得たインプレッションを、まずは期待相応だったところから報告する。筆者は約5.8インチの有機EL Super Retina XDRディスプレイを搭載するiPhone 11 Proをメインのスマホとして使っている。4.7インチのiPhoneは久しぶりに使う機会となったが、やはり手にほどよく馴染むし、片手持ち操作もスムーズだ。衣服のポケットにも収まりが良い。iPhone SEは本体のサイズ、質量ともにスペックはiPhone 8と一緒だ。
 iPhone SEには指紋認証センサーを組み込んだホームボタンがある。Touch IDに登録した指を当てると即座に画面ロックが解除される。iPhone SEをバッグやポケットの中から取り出す時点でホームボタンに触れると、画面に視線を落とす時にはもう操作を開始できる。
 Touch IDを搭載するiPhone SEは、春に花粉が多く舞う季節には顔にマスクを着けたままでもロック解除ができる。顔認証機能のFace IDを採用するiPhone 11シリーズと、使い勝手が大きく変わる部分のひとつだ。現在は新型コロナウィルスの感染を予防するために、屋外ではマスクを着けて過ごすことが求められるため、Touch ID付きホームボタンのあるiPhoneは余計に便利だ。いま世界各地で新しいiPhone SEを手にしているユーザーが同じことを感じていると思う。
 iPhone SEは本体のサイズと形状、背面に搭載したメインカメラの位置もiPhone 8と一緒なので、本体ケースやディスプレイの保護フィルムなどのアクセサリーが共通して使える場合がある。iPhone 7用として販売されているアクセサリーの中にも使えるものがあるようだが、本体ケースについては注意して使いたい。iPhone 7がワイヤレス充電に対応していない端末なので、本体ケースもワイヤレス充電に使えない可能性があるからだ。

●期待を超える高いパフォーマンス カメラやARアプリで実感


 最高性能のA13 Bionicチップを搭載したiPhone SEは、期待を超えて全般のパフォーマンスがとても高いことを実感させてくれる。特にカメラ性能がiPhone 8やiPhone 7と比べて大きく進化している。
 iPhone 8に搭載されていない「スマートHDR」は逆光の位置に立つ人物など、被写体の明暗差が大きなシーンでカメラのシャッターを切ったときに、露出の段階が異なる複数枚の写真を高速連写して、1枚の画像ファイルに合成する技術だ。上位機種のiPhone 11シリーズにも搭載されている。iPhone SEのカメラは春の日射しに包まれる街の風景を目で見た通りに、うららかな空気感まで写真に取り込める。
 従来ホワイト系のiPhoneはベゼルの色もホワイトだったが、iPhone SEではすべてのカラバリモデルのベゼルがブラックになった。そのため、iPhoneで撮影した写真や動画、または動画配信サービスのコンテンツをiPhone SEのRetina HDディスプレイで再生してみると、約4.7インチの画面サイズを超える迫力が味わえる。
 A13 Bionicチップの高性能によりARアプリも機敏に動く。現実世界の風景の中にCGオブジェクトを配置する時の動作もすばやく正確だ。iPhone 8が搭載するA11チップに比べて、A13 BionicチップのCPUは約1.4倍、GPUは約2倍にスピードアップしていると聞けば納得だ。没入度の高い画面、ストレスのないアプリの動作感はモバイルゲームを楽しむ際にも有利に働く。
iPhone 11シリーズをメインのスマホとして活用しながら、ストレージ容量の大きなiPhone SEをもう1台、ゲームや動画・音楽再生を楽しむためのサブ機として“2台持ち”するという選択も有り得るのではないだろうか。

●在宅ワーク・自宅学習にもiPhone SEが活かせる


 ビジネスパーソンの仕事用ツールとしてもiPhone SEはその性能をいかんなく発揮する。5G通信には対応していなくても、ギガビット級LTEや新世代のWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)による通信をサポートしたことで、大容量のデータ通信も素速く安定してこなせる。自宅環境でビデオミーティングやWebを活用した子どもの自宅学習にもiPhone SEが活用できる。
 ビデオミーティングの際にはイヤホンを併用すると相手の声がより聞きやすくなる。iPhone SEには3.5mmアナログイヤホンジャックが搭載されていないので、パッケージに同梱されているLightning接続のイヤホン「EarPods」をそのまま使うか、またはアップルのオンラインストアでも販売されている「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」を買い足せば有線接続のイヤホンやヘッドホンが使える。
 また、アップルが販売している完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」はアクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載しており、高い遮音性能が得られる。ビデオミーティングにも打って付けのアクセサリーとしてiPhone SEと一緒に揃えたい。

●より多くのiPhoneユーザーを開拓できるか


 昨今はアップルのiPhoneに限らず、各社プレミアムクラスのスマホは販売価格が10万円を超えるものが増えてきたため、以前より短い周期で新しい製品に買い換えることが難しくなった。数年にわたって同じスマホを使っていると、ソフトウェアアップデートで新機能を追加したとしても、次第にハードウェアの都合から最先端の機能やサービスが利用できなくなって、気が付いたらモバイル関連のイノベーションから縁遠くなることもある。
 アップルのiPhone SEは現在最高性能のA13 Bionicチップや通信まわりの機能を搭載したことで、安価でありながらアップルが提供する最先端のサービスが手軽に、かつ快適に利用できるスマホだ。一度iPhoneの後に安価なAndroidスマホに乗り換えたユーザーを、再びiPhoneに呼び戻す強い引力を持っている。
 もちろんこれから新規にiPhoneを、またはスマホを持ちたいと検討している人にもiPhone SEはおすすめできる。iPhoneの場合、機種の違いによってiOSという共通のプラットフォーム上の体験が変わってくることがほとんどないため、同じiPhoneのユーザー同士であれば離れて暮らす家族に使い方や設定方法を教えることが比較的スムーズにできる。高齢の家族を見守るためのコミュニケーションツールとして、あるいは「オンライン帰省」にも最適なツールとしてiPhone SEの利用を検討してみてはいかがだろうか。(フリーライター・山本敦)