教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】

子どもをできるだけほめるようにしているのですが、「玄関掃除した。えらい?」「台拭きした。うれしい?」など、ほめるのを催促することがあるので心配です。このままだと、ほめられないとやらない子になってしまうのではないかと…。

マイチューブさん(小1 女子)

【親野先生のアドバイス】

拝読しました。
「ほめて育てると、ほめられないとやらない子になるのではないか?」という心配ですね。結論から言えば、そんなことはありませんので大丈夫です。こういうのは、昔からよくある迷信、作り話、集団的勘違いの類です。

そもそも「がんばったことをほめてもらいたい」「自分がやったことに対して感謝してもらいたい」というのは、人間として極めて自然な感情です。子どもでも大人でもそういう気持ちになりますよね。もしならない人がいたら、それは世にも希なる聖人君子と言っていいでしょう。

職場で何かがんばれば上司にほめてもらいたいし、同僚にも感謝してもらいたいと思います。夫は妻にほめてもらいたいし、妻は夫に「ありがとう」と言ってもらいたいのです。でも、大人はあからさまに相手に催促するようなことはしません。恥ずかしさが先に立つからです。それに、相手に何と思われるかの想像もつくので、自然にブレーキを踏みます。

でも、子どもは違います。もちろん、子どもも赤の他人にはそんなことは言いませんが、親には言えるのです。親を信頼しているからこそ言えるのです。言えるということは、親に対して、「自分の気持ちを素直に表現しても大丈夫」「ありのままの自分を受け入れてくれている」という信頼があるということなのです。たとえ親であっても、こういう信頼ができない関係だとしたら、子どもはこんなことをうっかり言ったりしません。

ですから、「えらい?」と聞かれたら「えらい!」と言ってあげてください。「うれしい?」と聞かれたら、「うれしい!ほんと助かるよ。ありがとう」と言ってあげてください。また、その際、大人はつい「えらい」ばかりを多用しがちですが、ぜひ「うれしい。ありがとう。助かったよ」の方をもっと増やすとよいと思います。なぜなら、この言葉によって子どもは「自分が役に立てた」と感じることができて、これがすごくうれしいからです。

親からたくさんほめてもらった子は、自己肯定感が高まります。つまり、「わたしはがんばれる」「僕はできる」「自分は人のために役立つことができる」「自分ががんばれば人に喜んでもらえる」という気持ちを持てるようになり、成長するに連れてそれが確信となっていきます。こういう確信を持てている子(あるいは大人)は、たとえ毎回ほめられたり感謝されたりしなくても、自分がよいと思ったことをやり続けられるようになります。

反対に、子どもの頃からあまりほめてもらえなかった子、「ありがとう」と言ってもらえなかった子は、「どうせ自分なんかがんばってもムダだ」「自分が何かやってもどうせ誰も喜んでくれない」という思い込みに支配されるようになります。いわゆる自己否定感に凝り固まった状態です。こうなってしまうと、成人してからも積極的に努力したり人の役に立つことをしたりする意欲が持てなくなってしまいます。

ということで、迷信にまどわされないでほめる子育てを続けてください。なお、ひとつ気をつけて欲しいことがあります。それは、安易に物やお金をご褒美として与えるのはやめたほうがよいということです。物やお金を与えると、次からはそれが目的になってしまい、「それがないとやらない」という状態なってしまう可能性があります。

私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。