「漢字」の苦手克服! ビッグデータから見える効果的な学習法

連載「勉強が続く!わかる!『ビッグデータ』時代の家庭学習」。第5回となる今回は、前回に引き続き「ビッグデータ」が「デジタル教材の開発」や「学習効果の検証」にどのように使われているのかをお伝えします。
今回は、漢字学習について取り上げます。「漢字は苦手」という子どもは今も昔も少なくありません。しかし、デジタル教材の活用で、漢字学習は大きく変わってきています。ビッグデータを活用し、デジタル学習教材「チャレンジタッチ」の国語の開発と学習効果の検証に取り組むベネッセコーポレーション小学生事業本部の中野優に話を聞きました。

Q.「漢字は苦手」と感じる子どもが多いのはなぜでしょうか。

—小学1〜6年生を対象にした調査(ベネッセ教育総合研究所「小学生の漢字力調査」)では、「漢字を書くことが得意だ」と回答した比率が53.5%と半分程度しかいません。高学年になるとどんどん「得意」の比率は下がります。漢字学習は、小学生の国語で苦手意識をつくりやすい大きなポイント。その原因の1つは「負担感」です。漢字学習はくり返し書いて覚えることが基本です。しかし、子どもはもちろん、大人であっても単純な反復学習では根気が続きにくく、負担に感じられるものです。

—もう1つの原因としては、「正確に覚えられない」ということが挙げられます。例えば、「捨」「拾」など文字の形が似ているもの、「熱い」「厚い」「暑い」など同じ読み方で意味が違うもの、漢字のとめ・はねや書き順など、難しいことがたくさんあります。くり返し練習して覚えたつもりでも、正確に覚えていないためにテストでまちがえてしまい、結果として苦手意識ができてしまいます。

—漢字はしっかり覚えれば国語のテストの点数が確実に上がり、子どもの自信にもつながります。何より、生きていくうえで大切な知識です。私たちはこれまでも、子どもの負担感を減らし楽しく取り組みつつも、漢字を正確に覚えられるような教材作りをめざしてきました。でも、紙の教材だけではわからないこと、できないこともありました。

—デジタル教材「チャレンジタッチ」や、学習データの蓄積であるビッグデータを活用できるようになると、今まではわからなかったことがわかり、表現できなかったことができるようになります。現在では、そうした技術を利用して、従来の教材の改善や新たな教材の開発が進んできています。

Q.どうすれば、漢字学習の「負担感」を軽減できるのでしょうか。

—漢字はその後の学習の基本になるので、正しい読み書きをステップを踏んでしっかり定着させるというのが進研ゼミの基本のスタンスです。だから、学習する漢字の数は基本的に減らしたくありません。しかし、私が担当する小学生では、特に3年生以降、新出漢字が多くなり、字形も複雑になります。そのため、学習にかかる時間が増えて、負担感も高まります。漢字の書き取りノートなどを見るとよくわかるのですが、漢字学習は単調になりがちで、雑に書いてしまう子どもが多くいます。これでは、誤った漢字が定着してしまいます。

—そこで、子どもが飽きてしまわないように、漢字を学習する場面を教材の中で分散させてみました。心理学では、学習のメリハリをつけたり、適度に気分転換をはかるのが効果的だということがわかっています。そうした学習に関する知見も使って、学習単元の前半に集中していた漢字学習を、図1のように意図をもって散らしてみたのです。

—その成果を数万人の学習記録のデータ(ビッグデータ)で検証したところ、驚くべきことがわかりました。漢字学習の活用だけでなく、その間にある読解の問題なども活用率が高まっていたのです。以前は漢字学習で嫌になってしまい、読解の問題に手をつけない子どもがいました。しかし、やり方を変えるだけで、両方をしっかり勉強する子どもが増えたのです。同じ内容を学習する場合でも、心理的な負担感を軽減する工夫をすることで、取り組みが大きく違ってくることを実感しました。集中しない学習を長い時間かけてするよりも、集中した短い時間を重ねるほうがずっと効果が高いということがいえそうです。

Q.「正確に覚えられない」を解消する指導方法についてはどうでしょうか?

—これも試行錯誤しながら、しっかり覚えられる方法を常に研究しています。例えば、小学2年生で学習する漢字の中に「黄」「書」があります。これらは画数が多いこともあり、正確な字形を覚えられない子どもが多くいます。「黄」は四画目の横棒を抜かして書く割合が高いことがわかっています。そのため、図2のようにまちがえやすいポイントをクイズにして、注意を促してみました。ところが、その後に学習記録データを検証したところ、思ったように正答率が上がっていません。

—もっとよい指導方法はないかと、漢字教育の専門家にも話を聞き、検討を重ねました。その中で、字形を指導するのではなく、書き順を指導すれば1画抜かすまちがいが減るのではないかという意見が出ました。デジタル教材は動きがあるので、書き順を指導しやすいというメリットを生かそうというわけです。そこで、図3のように、画面上で漢字の書き順どおりに1画1画が書き足されて漢字が完成する映像を見せ、それから漢字を書いてもらいました。この結果をすぐに学習記録データで確認したところ、正答率は以前の約2倍になりました。

—デジタル教材は、動きがあり強調するポイントを子どもに示しやすいので、字形や筆順、とめ・はね・はらいが正確に学べます。読みの音声が聞けるなど聴覚も刺激されるので、記憶としても定着しやすくなります。また、すぐにその場で正しく書けているかが判定されるので、まちがったまま覚えてしまうということも少なくなります。このように、不正確かもしれないものに長い時間をかけるよりも、短い時間でよいから正確なものをしっかりした方法で身につけることが、漢字学習では効果的といえそうです。

Q.デジタル教材を開発していて、どんなことを感じますか?

—デジタル教材では、個々の子どもの理解度や取り組みの状況に応じた指導ができます。また、一度に情報を伝えなければいけない紙の教材とは違い、情報を分解して伝えられる良さもあります。そのため、これからもよりよい指導方法を見つけることができるのではないかと期待しています。進研ゼミでは、1つの教材で数万人のビッグデータが蓄積されます。これを使って、すぐに学習効果を検証したり、予期していなかった課題を発見できるようになりました。こうしたデータ活用も、ますます進化し続けると思います。

—一方で、デジタル技術やビッグデータをいかすには、私たち自身が学習に対する深い見識をもつ必要があると実感しています。正答率が低いことがデータからわかったとしても、どのように指導すればよいかというアイデアまではデータは示してくれないからです。今まで培ってきた学習に関する知識や経験と、データから得られる発見がセットになって初めて、学習効果の高い教材を作ることができます。技術とともに、私たち自身も挑戦を続け、進化していかなければなりません。

今回は、小学生が苦手になりやすい漢字学習をテーマに、「ビッグデータ」の活用について話を聞きました。日頃の学習にも生かせる視点が多くありそうです。(文・沓澤糸)

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