2020年1月に、東京都文京区の順天堂大学の講堂で探究的学びと高大接続についてのシンポジウムが行われ、探究的学びを取り入れている中学校・高校の取り組みを紹介しながら、5人のパネリストが意見を交わしました。
今回は、探究的学びをどのように授業に取り入れるか、そのために必要なことについてシンポジウムの中からお伝えします。

高校での探究的学びは、なぜ新設された? 今までの授業とどう変わるの?

高校では、2019年度から、新しい学習指導要領が先行実施されています。そのキーワードの一つが「探究」です。「総合的な学習の時間」に変わって「総合的な探究の時間」が新たに実施されることに加えて、国語科では「古典探究」が、地理・日本史・世界史にはそれぞれ「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」が加わります。

また、数学と理科にまたがる新たな教科として「理数」ができ、「理数探究」と「理数探究基礎」が科目として設けられます。探究的な学習とは、設定した課題に対して情報を収集・整理・分析し、それをまとめ何かしらの方法で表現するものとされています。

こうした探究的な学びが導入された背景として、河添健さん(慶応義塾大学総合政策学部前学部長)は、「日本の教育システムの問題として、高校の早い段階から理系・文系に進路を分けてしまい、文系に進んだ生徒は数学を学ばない、理系に進んだ生徒は英語を学ばないなど特定の教科を学習する機会を狭めてしまうことがあります。

また、生徒が高い目標に向けてチャレンジしたいといっても、安全志向な指導が優先され挑戦することが叶わないという問題もあります。こうした問題を解消するために、探究的な学びや高大接続改革が生まれました」と説明します。

探究的授業を行うには教師に対するサポート体制を整えることが先決

最初に、モデレーターである濱中淳子さん(早稲田大学教育学部教授)が、シンポジウムに参加した教育関係者に対して、「探究的学びというものに対して、どうやっていいものかとまどっているというかたはいますか?」と問いかけると、少なくない人が挙手をしている場面が見受けられました。

シンポジウムの中で紹介された探究型授業の一つが、佼成学園中学校の理科(生物)で行われている授業です。イカの解剖を行い、気づいたことや疑問に思ったことをそれぞれまとめ、「eポートフォリオ」と呼ばれるWeb上のソフトで生徒全員の考えを共有し、教師がそこにフィードバックします。
このVTRを受けて、北原達正さん(子どもの理科離れをなくす会代表/国際科学教育協会代表理事)は、「このようなすばらしい探究の授業が成り立っているのは教員の力によるところが大きい」と指摘しました。

「探究的授業で重要なのは<課題をどのように設定するか><どのような手法で行うか><評価>の3つです。人間、やったことがないことはできませんから、特に、どのような手法を取るのかというのは大切になってきます。

つまり、指導を行う先生がたをサポートするシステムが早急に必要です。実験や分析のためのデバイスは日進月歩しており、方法はさまざまで、今や画像解析やGPSなどといったテクノロジーは当たり前のものとなりました。
これに対して、先生がたは、負担が非常に大きくなると感じることでしょう。やったことがないことに対して不安を抱くのは当然のことです。だからこそこれをサポートするシステムが必要です。

私は、現在17の都道府県の50人の先生に対して、こうしたサポートをしていますが、これはすべて遠隔で行われています。まずは先生がたにこういったICTに慣れていただくということが非常に重要なのではないでしょうか。スマートフォンとフリーソフトで全すべてできます。そういう意味で、今拝見した授業の形は大変理にかなっていますね。すべての科目においてこれが当たり前となるように皆さんと一緒に取り組んでいきたいですね」
と、教師に対してのサポート体制を整えること、そして教師自身がICTに慣れていくことが重要だと説きました。