2020年1月に、東京都文京区の順天堂大学の講堂で探究的学びと高大接続についてのシンポジウムが行われました。探究的学びを取り入れている中学校・高校の取り組みを紹介しながら、5人のパネリストが意見を交わしました。
今回は、議論のテーマの一つになった「探究的学びにおける問いの立て方」についてシンポジウムの中からお伝えします。

生徒の自由な選択に任せてよい? 探究的な学びの課題をどう立てるべきか?

教科の授業で探究的学びを取り入れている学校の例として、桐蔭学園高等学校の「未来への扉」という探究的授業のVTRが紹介されました。この授業はクラスの垣根を超えたゼミナール形式で、生徒たちが自分自身でテーマを決めて探究を進めます。ある生徒が決めたテーマは「ジェンダーの垣根にどう向き合っていくか」というものでした。
このVTRを受けて、モデレーターの濱中淳子さん(早稲田大学教育学部教授)が、探究的授業における「問いの立て方」について、どのようなものを問いに設定するのがよいかパネリストに問いかけます。

これに対して、桐蔭学園理事長の溝上慎一さんは、「自ら問いや課題を立てるというのは非常に難しいことです。
私としては、生徒が自分の内側にあるものから課題を立ててほしいと思っていますが、ほかの学校の探究の授業などで生徒に『なんでもいいから自分の好きなテーマを決めてみよう』と言って生徒が課題を設定するのを見ていると、『なぜ宇宙が生まれたのか』という壮大なテーマから、『なぜうちの学校の野球部は弱いのだろう』という素朴な疑問まで、実際に探究するのが難しいテーマが出てしまうことがほとんどです。
そこで、桐蔭学園では、理科系、社会系、総合科目系といった80のゼミの中から生徒が自分で取り組みたいものを選ぶようになっています。このように、教科の中から探究のテーマを絞り込んでいくということが一つのポイントだと思っています」と話しました。

また、日野田直彦さん(武蔵野大学中学校・高等学校長)は、「私も、問いは自分の身近なところから出すのがよいと考えています。なぜなら、問いが<自分ごと>にならない限りは、問題解決にはならないからです。
家事に割く時間がなくて悩んでいる同僚のためにお掃除ロボットを作ったら、世界中で大ヒットしたという例からもわかるように、不確実性の高い現代では何が成功のセオリーかはわかりません。スタンフォード大学の授業で、『1時間で1つの答えを出すより30秒に1つ答えを出して120回フィードバックをもらったほうがよい。回転数を上げていく中で自分が考えもしなかった課題が見つかる』と言われているように、問いは自分の中にないことも多い。特に、自らの幅がまだ狭い中学生や高校生の場合は、周りにインタビューをして課題や問いを見つけるのも良いのではないでしょうか」と提案しました。

そして、探究的授業を行ってきた高校生を受け入れている大学の立場から、河添健さん(慶応義塾大学総合政策学部前学部長)は、「探究的な学びはたしかにすばらしいものです。ただ、『他の学校でこういうことをやっているから我が校でも同じようにやってみよう』とか、『探究的学びを取り入れなくては』というような姿勢で始めると、先生にも生徒にも無理が出てきてしまい、本来の基礎的な学習がおろそかになるような本末転倒も起こるかもしれません。

先程、教科の中で絞り込むというお話がありましたが、それぞれの中学校・高校の特性に合わせた探究の授業を行うというのが重要だと思います。そこで得たものをどうやって大学につなげていくのか、これに関しては大学が責任を持って引き受けなければいけませんね」と締めくくりました。