「キャリア教育」をご存じでしょうか。Career(仕事、職業)の教育ですから、何となく就職に関係するのかな……と思うかもしれません。実は、教育の専門家である学校の先生、とりわけ高校の先生ですら、そう思っている向きが少なくありません。しかしキャリア教育は幼児期から始めるものとされており、今年度から全面実施になっている新しい小学校の学習指導要領にも、キャリア教育を行うことが明記されました。いったい、どういうものなのでしょうか。

自立のための基礎、各教科の中にも<種>

文部科学省は、キャリア教育を「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義しています。一定の職業に就くための知識・技能や能力、態度などを育てる「職業教育」よりも、広い概念です。
キャリア教育の中心となるのが、「基礎的・汎用(はんよう)的能力」の育成です。社会や職業で自立するための基礎となり、いろいろな分野に使える能力のことです。具体的には、(1)人間形成・社会形成能力 (2)自己理解・自己管理能力 (3)課題対応能力 (4)キャリアプランニング能力があります。
ここまで読んでも、「ああ、やっぱり高校生ぐらいじゃないと無理だ」と思うでしょうか。では、「将来子どもたちが社会の一員としての責任を担い、社会的な自己実現を図ろうとする意欲や態度を継続的に育てていくもの」(国立教育政策研究所の小学校教員向けキャリア教育推進用パンフレット)という説明なら、どうでしょうか。
 どの教科の授業や行事などの教育活動にも、キャリア教育の<種>が含まれている、とイメージすればよいでしょう。教育活動全体を通して、その学校段階なりのキャリア発達を、子どもに促すことが求められています。

計画策定は約80%だけど…

小学校の新しい学習指導要領では、総則に「特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること」と明記されました。とはいえ、新しく始めるものではありません。
先ごろ国立教育政策研究所が公表した調査結果によると2019年度、小学校の79.9%でキャリア教育の全体計画を策定しています。7年前(2012年度)の前回調査に比べると、16.5ポイント増えています。ただし、年間指導計画まで策定しているのは50.5%と半数にとどまっていますから、個々の教育活動で意識的な指導が行われているとは限りません。
それでもキャリア教育の一環として、家庭や保護者と「特に連携はしていない」と回答した小学校は15.5%にすぎず、前回調査(29.7%)と比べても半減しています。
折しも新型コロナウイルス感染症の影響で、休校が続きました。学校再開後の授業に追われて、学ぶ意義を感じる余裕もなくなっているかもしれません。しかし、何が起こるかわからない、先行きも不安な時代だからこそ、社会で自立していくために学校で学ぶのだ、というキャリア教育の原点に帰る必要があるのではないでしょうか。そこでは、社会人の先輩である保護者が果たせる役割も大きいでしょう。何のために学ぶのかを、親子で考えてみる機会としてはいかがでしょうか。

(筆者:渡辺敦司)

※キャリア教育(文部科学省ホームページ)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/index.htm

※国立教育政策研究所「キャリア教育に関する総合的研究 第一次報告書」
https://www.nier.go.jp/shido/centerhp/career_SogotekiKenkyu/