連合30周年シンポ「経済界の提言で日本はよくなりましたか?」 経団連まじえ激論も

連合(日本労働組合総連合会)の結成30周年を記念したシンポジウムが11月12日、都内で開かれた。

パネルディスカッションには、経団連の産業技術本部長も出席。登壇者から「経済界の提言で日本は良くなったのか」などといった趣旨の発言も飛び出し、議論がヒートアップする場面もあった。やり取りの一部を紹介したい。(編集部・園田昌也)

●企業への課税を強めるべきか?

さまざまな問題が山積している日本社会。しかし、手を打とうにも財源がなければどうしようもない。

税収の大きな柱は、所得税、消費税、法人税の3つだ。経団連はこのうち、消費税を「世代間負担の公平性などの点において他の税よりも優れる」として、現行の10%からさらに引き上げるべきとの立場だ。

これに対し、パネリストの社会学者・西田亮介氏(東工大准教授)は、安定性などの面で消費税が優れていることを認めつつも、「ある種の道理があるのではないか」と指摘する。

「(連合結成からのこの30年で)消費税率の引き上げなどで生活者の負担は増えてきた。企業社会はどうなのか」

消費税とは対照的に、法人税はこの30年で引き下げられてきた。法人税の引き上げや補助金、控除の見直しも必要ではないか、という問いかけだ。

企業への課税強化に対しては、海外移転を招くという反論がある。これについて、西田氏は次のように述べる。

「日本の働き方はブラックだとか、賃金水準が低いということがよく言われています。そこに依存してビジネスを展開しているのであれば、本当にフライト(海外移転)できるんですかということは言っておきたい」

一方、議論を振られた形の経団連・吉村隆氏(産業技術本部長)は、「短い時間で話すには悩ましいが、非常に(会場から)注目されている感じもする」と苦笑いしつつ、次のように応じた。

「法人税率については、グローバル競争の中でどうするかという視点は持ってもらわないと困る。そこで足を引っ張られると結局、雇用を維持できないということにつながりかねない。総合的に見ていただいて、適正な水準を模索していくべきではないか」

●経済界の提言で変化した日本の労働「本当によくなりました?」

議論はまだ続く。西田氏は、「日本の経済界は、政治に対して強い影響力を持って来たが、我々の社会はこの30年でどうなったのか」と追及する。

「経団連は雇用への影響は免れないと認識しながら、解雇規制を求め続けている。これまでも労働者派遣法の改正(≒非正規雇用の拡大)や働き方改革などに、さまざまな提言をしているが、日本社会の働き方のパフォーマンスは上がっていない」

経済界は声が大きい一方で、この30年間の日本経済は低い成長率にとどまってきた。今後、消費税などをさらに引き上げるにしても、企業の負担増が先ではないのか、という考えだ。

さらに西田氏は、経済界の声が教育など、経済と直接かかわらない分野にまで及んでいることも問題視する。

「企業社会の責任はさまざまなところにある。教育や研究についても何ら知見がない経済界の皆さんが好き放題言って、どんどん変えていく。その間に、我々の社会はどんどん疲弊していってしまう」

「民間や経済界から来ている人は数年たつといなくなってしまう。そして次の人が来て、同じことを言う。誰も責任をとらない」

歯切れの良い経済界批判に、労働組合関係者が大勢集まった会場からは、どよめきが起こった。

労働経済学者の首藤若菜氏(立教大教授)も次のように、経済界への批判を加えた。

「経済成長のために賃上げを我慢するんだという時代が長く続いた。使用者団体に申し上げたいのは、これだけ非正規が増えて、所得が減って、日本経済は良くなったんですか。どういう風に考えているのかということ」

ここでコーディネーター役の連合・相原康伸氏(事務局長)が、「流れを変えたい」と直球の発言で別のパネリストにマイクを振り、議論は「打ち切り」に。緊張から解放され、客席からは大きな笑い声があがった。

ちなみに、この日のシンポジウムのテーマは「未来を変えるための労働組合の役割」。計6人のパネラーが登壇していた。

●労働組合も結果を出せていないのでは?

さて、経済界批判に溜飲を下げた人もいるかもしれない。しかし、パネルに先だった基調講演では、首藤氏から労働組合に対する厳しい意見もあった。

経済界が政治に力を持ち、労働環境が悪化し続けてきたのだとすれば、裏を返すと使用者団体のカウンターパートである労働組合の影響力が弱かったということにもなる。

2018年の労働組合の推定組織率は17.0%。下げ止まりの兆しは見えつつあるが、7年連続で過去最低を更新している。連合が結成された1989年は25.9%だった。

組合員数で見ても、非正規雇用の拡大などにより、労働者の総数が増えているにもかかわらず、連合の組合員数はこの30年で約800万人から約700万人に減少している。

影響力低下を背景に、労働組合が政策決定の過程から排除されることもでてきている。

首藤氏は一例として、今年9月に発足した、社会保障改革を議論する「全世代型社会保障検討会議」をあげる。メンバーに経団連会長らがいるのに対し、労働組合関係者はいない。

「労働者代表を外していくような政治がいけないんだと言えば、そうなのかもしれない。そうだと思う。でも、じゃあなぜ、そんなダメな政治が続いてきているのかということも含めて考えると、やはり存在感の低下を感じざるを得ない」

講演の中で首藤氏は、マックス・ヴェーバー『職業としての政治』をとりあげ、「心情倫理」と「責任倫理」という言葉を紹介している。

おおざっぱに言えば、心情倫理とは、価値基準を正義や善といった動機に置く。結果は神や社会に委ねる態度だ。一方の責任倫理は、動機はどうであれ、結果に価値を置く。

「今日のこの劣化した雇用状況に対して、労働組合に責任があると思っている。この責任をどういう風に捉えて、どういう風に未来に生かしていくのかというところが、(これからの労働組合に)必要なポイントだ」

変化が速く、国際競争が激しい時代において、企業社会はさまざまな要求を出してくるだろう。労働組合がいかに支持を集め、「結果」を残すかといった視点が今まで以上に必要になってくるのかもしれない。


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