東京都の小池百合子知事は3月25日、緊急記者会見を開き、新型コロナウイルス感染者が急増していることを受け、26日・27日の自宅勤務を推奨するとともに、週末の不要不急の外出を自粛するよう呼びかけた。また、ロックダウン(都市封鎖)の可能性にも言及した。

東京都では、3月に入ってから感染者数が増えていたものの、22日は2人の感染にとどまるなどしていた。ところが、23日は16人、24日は17人の感染が明らかとなり、25日には41人、26日には47人の感染が確認され、感染拡大への懸念が強まっている。

小池知事は、「今の状況を感染爆発の重大局面と捉えてもらいたい」と述べた上で、「このままの推移が続けばロックダウンを招いてしまう」と語った。

ロックダウンは、どのような権限に基づいて行われるのか。また、具体的には何が制限されるのだろうか。内山宙弁護士に聞いた。

●「ロックダウン」そのものが法律で定められているわけではない

ーーそもそも「ロックダウン」とはどのようなものなのでしょうか

「法律に定義が定められているわけではありませんが、都市を封鎖したり、強制的な外出禁止や生活必需品以外の店舗閉鎖などを行ったりする措置のことを言っているようです。

中国の武漢市は、まさに市外に出られないように物理的に封鎖されていましたし、感染が急に拡大している仏伊英国などでは外出していると罰金を課せられることがあるようです。ブラジルのリオデジャネイロでは、マフィアが外出禁止令を出しているという話まであります」

ーー実施されることで、具体的に何が制約されるのでしょうか

「諸外国の例を見ますと、生活必需品以外の店は閉鎖される、交通機関が遮断される、公共の場で3人以上が集まることが禁止される、結婚式などのイベントが禁止されるというようなことがあるようです。

しかし、日本ではこのような強制的な措置を取ることは基本的にはできません」

●「新型インフル特措法」や「感染症法」に基づく対応が考えられる

ーーロックダウンはどのような権限に基づいて行われるのでしょうか

「諸外国はともかく、日本でやるとすれば、『新型インフル特措法』か『感染症法』に基づく対応がされることになると考えられます」

ーー「新型インフル特措法」ではどのような制限がありえますか

「新型インフル特措法は、先日改正され、新型コロナウイルスにも適用できることになりました(そもそも改正しなくても適用できたはずですが、その議論はおきます)。

同特措法に基づいて対策本部が設置され、対策本部長(通常は内閣総理大臣)が緊急事態宣言をすると(同特措法33条)、都道府県知事は外出の自粛や施設の利用の制限・停止を要請できるようになります(同特措法45条)。

施設としては、学校、福祉施設、興行場が例示されていますが、政令で追加することも可能なので、鉄道や飛行機そのものを遮断しなくても、『駅という施設』を政令で追加すれば、事実上、公共交通機関の停止を要請するのと同じことになります」

ーー「感染症法」ではどうでしょうか

「感染症法では、まん延防止の緊急の必要がある場合に、感染症の患者がいる場所、感染症の病原体に汚染されたり、又は汚染された疑いがあったりする場所の交通を制限し、又は遮断することができるということになっています(感染症法33条)。3月26日に政令が改められ、27日から新型コロナウイルスもこの対象になりました。

ただ、この交通の制限遮断は72時間以内とされていますので、緊急事態宣言が21日間出されたとしても、全く対応できません。更新できるようなことも定められていないため、3日ごとに更新し続けるような運用もできないと考えられます。

さらに、汚染された疑いのある場所の交通だけを遮断できるにとどまりますので、東京都全域ではなく限定的にしかできず、全面的に外出を禁止することもできないと考えられます。フランス、イタリアのように感染爆発する前に、早急に法改正すべきではないでしょうか」

●新型インフル特措法に「罰則で担保された強制力」はない

ーー制約には強制力があるのでしょうか

「新型インフル特措法による『施設の使用制限・停止要請』の場合、これはあくまでも要請です。要請に従わない場合にも指示ができるだけで、罰則はありませんので、その意味では強制力はありません。また、要請に応じたとしても補償する規定がありませんので、財政状況によっては従いにくいということもあるかと思います。

ただ、要請や指示をしたことが公表されますので、要請されたのに従っていないことが分かった場合に、社会的評価を低下させる恐れがあることから、事実上従わざるを得ない状況になるかと思われます。

ところで、この『要請』レベルであれば、既に法的根拠なく事実上行われています。北海道の緊急事態宣言、安倍首相による学校の一斉休校要請、大阪兵庫間の異動の自粛要請などです。

ただ、これは本来、新型インフル特措法に基づいて緊急事態宣言がされた場合に、初めて要請ができるという法体系になっていると考えられ、本来は、今やっている自粛要請は法的根拠のある要請ですらなく、単なるお願いに過ぎないというレベルのものなのです」

ーー感染症法でも要請しかできないのでしょうか

「3日に限っては強制的にできることになります。また、これに従わなかった場合は、50万円以下の罰金の定めがあります(感染症法77条5号)」

●要請するとしても実効性の確保が課題

ーー強制力がない場合、要請を無視する人がいるかもしれません

「はい、イベントの開催が生活に関わる死活問題の場合も多くありますので、従わないケースも出てくるかと思います。

また、非正規労働者などは、施設が閉鎖されたら直ぐに解雇されて、生活に困窮してしまうことも多いでしょう。そうすると、やはり生活のために仕事を探して外出するケースは出てくるでしょう。

諸外国では、外出を罰則付きで禁止する一方で、現金を支給し、生活の保障がセットになっているケースが多くみられます。権利を制限するときには、きちんと補償することで外出禁止の実効性が上がると考えられます。

日本のように、要請はするものの強制力がなく、要請に従ったとしても何も補償がないという仕組みでは、実効性の確保は難しいのではないかと思われます。

ところで、このように要請に従わない場合に、ネットで叩かれて炎上するということが発生する可能性があります。ある意味、そのような社会的圧力で自粛を強制されてしまうことがありうるのではないかと危惧しています。

しかし、『要請』にすぎず強制力はないということ、十分な対策を取って交通機関を利用することは考えられるということ、交通機関の利用の可否が死活問題になる場合もあり得ることなど、想像力を持ってネットの書き込みをしていただきたいと思います」

●「医療崩壊は避けなければならない。そのためにも現金支給を」

ーー都内の1日の感染者数が増えています

「新型インフル特措法では強制力がないのだということを申し上げてきたわけですが、イタリアなどの惨状を見ますと、医療崩壊は絶対に避けなければなりません。

イタリアでは、重症者があまりにも多いため、重症者の中で高齢者は処置する余裕がないという話も聞いています。

重症者だと人工呼吸器を付けたり、もっと重症になると人工心肺になったりしますが、そこまで行ってしまうと、数週間ベッドが空かないことになりかねません。

ベッドが空くのは、その患者が回復した場合か、亡くなった場合だけということになり、重症患者が爆発的に増えると助けられる命も助からないことになりかねません。

外出できない生活に飽きてしまうかもしれませんが、命に関わることなんだと理解していただき、最前線で頑張っている医療従事者への支援だと思って、要請に応じる余裕のある方は応じていただけたら嬉しく思います。

そして、政府は、余裕のない方であっても気持ちよく要請に応じてもらえるよう、商品券ではなく、現金支給をしていただけたらと思います」

【訂正(3月29日)】
新型コロナウイルスは感染症法33条の対象外としておりましたが、3月27日から対象となったため、関連する記述を改めました。