新型コロナウイルスの感染拡大にともない、あらゆるお店で客が入らず閑古鳥が鳴いています。

弁護士ドットコムニュースのLINEには、個人事業主のセラピストから「業務委託先が一時休業することになったが、個人事業主なので何の手当も出ないのでしょうか」と相談が寄せられました。

●「いきなり無職になりました」

セラピストとして働く50代の女性は、リラクゼーション会社と業務委託契約を結び、京都市のホテルなどでマッサージの施術をしています。4月初旬にホテルから会社に対して「4月12日まで営業するが、その後は無期限で休業する」と連絡がありました。

普段はシフトを組んで働いており、勤務時間はホテルから決められているそうです。

女性は「いきなり無職になりました。業務委託で休業手当がもらえるのかわからず、泣き寝入りです」と訴えています。

会社側と交渉する術はあるのでしょうか。大久保修一弁護士に聞きました。

●休業手当はもらえる?2つのポイント

ーー女性は休業手当をもらえるのでしょうか

労働基準法26条は、使用者の休業が「使用者の責めに帰すべき事由」による場合、休業中は、「労働者」に平均賃金の6割以上の休業手当を払わないといけないと定めています。

今回の事案において、女性が、この労基法上の休業手当の支給対象者になるかどうかを判断するには、少なくとも二つ検討することがあります。

1つ目は、相談の女性が、そもそも、労基法が適用される「労働者」にあたるかどうかです。2つ目は、今回の休業が「使用者の責めに帰すべき事由」にあたるかどうかです。

●女性は労基法上の「労働者」にあたるか

ーー1つ目について、女性はリラクゼーション会社と労働契約ではなく業務委託契約を締結していますが、それでも「労働者」にあたると考えられるでしょうか

労基法が適用される「労働者」かどうかは、契約書の表題や形式で決まるものではなく、契約内容や就労の実態状況などから具体的に判断されます。

会社の指揮監督下において労務の提供をし、労務に対する対償を支払われるなど、労働者と変わらない実態があるならば、「労働者」にあたるものとして労基法の適用が認められることになります。

具体的な事情によりますが、今回のケースでも「労働者」にあたる可能性はあります。

●ホテルの休業→リラクゼーション会社に補償してもらえる?

ーー2つ目について、仮に「労働者」にあたるとして、女性の場合は実際に働くホテルが休みになって仕事がなくなりました。この場合でも補償や休業手当をリラクゼーション会社に求められるのでしょうか

まずは、休業になった場合の補償などに関する契約条件が契約書などに書いていないか、確認する必要があります。契約書などに補償などをすることが明記してある場合には、それに基づいて補償などを請求することが考えられます。

契約書などにその記載がない場合でも、今回の休業が、労基法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」によるものといえる場合には、休業手当を請求することができます。

休業手当の趣旨は、労働者の最低限の生活保障をすることにあります。そのため、労基法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」に含まれるケースは広いと考えられています。

ーー具体的にはどのようなケースが含まれますか

使用者に故意や過失がなく、それを防止することが困難であったとしても、使用者側の領域において生じたものといえるような経営上の障害は、「使用者の責めに帰すべき事由」に含まれ、不可抗力だと言われるような事情のみが含まれないと解釈されています。

新型コロナウィルス感染症の問題にともなう取引先の休業が原因であっても、他のホテルやリラクゼーション会社経営のサロンでの勤務が可能であるのにそれを認めないような場合には、リラクゼーション会社に対して、60%の休業手当はもちろんのこと、100%の賃金請求を求める余地もあります(民法536条2項)。

現在、新型コロナウイルス感染症により影響を受ける事業主を支援するための特例措置が実施されており、雇用調整助成金が大幅に拡大されています。

解雇や雇止め、中途契約解除等を行わない場合の助成率は、中小企業であれば支払った休業手当の90%、大企業は75%となっており(ただし、日額8,330円が上限)、需給のための要件も緩和されています。

こういった制度を活用することもせずに、業績が悪いから休業手当も払えないなどということは、許されない状況だと思います。

●給付金や貸付制度を利用する手も

ーー中には、会社と交渉している時間すらないという人もいると思います。他に策はありますか

4月20日には「特別定額給付金(仮称)」として10万円の現金給付制度を実施することが閣議決定されました。

すでに生活が困窮している場合には、それ以外の新型コロナウイルス感染症の問題に関する給付金や貸付制度を利用することも検討したほうがいいと思います。一部を紹介します。

「持続化給付金」は、中小企業庁が管轄する予定の給付金制度です。新型コロナウィルス感染症の影響により、売上が前年同月比で50%以上減少したフリーランスを含む個人事業者等に対して、100万円を上限として給付するようです。4月最終週を目途に制度の内容が確定し、公表される予定です。

また、各地の社会福祉協議会が窓口となる貸付制度として「緊急小口資金」と「総合支援資金」制度は、3月25日から受付を開始しています。

「緊急小口資金」は、新型コロナウイルス感染症の影響により、休業等で収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のために貸付が必要な場合に、10万円(特別な場合には20万円)以内を無利子・無保証で借りられる制度です。償還期間は2年以内となっています。

「総合支援資金」は、単身世帯の場合は月15万円以内、複数世帯の場合は月20万円以内を原則3カ月まで、無利子、無保証で借りられる制度です。償還期間は10年以内となっています。

家賃を補助するための給付金制度もあります。各地方公共団体による「(生活困窮者)住居確保給付金」は、4月20日から適用が拡大されており、2年以内に離職したことがある人や休業等により収入が減少して離職等と同程度の状況にある人も、収入、資産等の要件を満たせば、3カ月間の家賃助成等を受けられる制度(上限あり)です。

生活の不安を少しでも取り除いていくためには、積極的にこういった制度の情報も入手し、活用することも大事です。

【取材協力弁護士】
大久保 修一(おおくぼ・しゅういち)弁護士
2014年弁護士登録(第二東京弁護士会)。旬報法律事務所所属(弁護士27名)。ブラック企業被害対策弁護団副事務局長。日本労働弁護団東京支部事務局。著書に「まんがでゼロからわかる ブラック企業とのたたかい方」(共著佐々木亮、まんが重松延寿、旬報社)がある。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/