民家や飲食店が並ぶ住宅地に「葬儀場」、住民が「迷惑」と提訴…営業差し止めは可能?

大阪市の民家や飲食店が集まる地域にある葬儀場をめぐり、住民と葬儀場運営会社で法廷闘争が行われている。

朝日新聞の報道によると、現場は大阪市旭区の千林。開業前には事務所と聞かされていたが実際には葬儀場となったという。住民側は「公道上で遺体の搬入などが行われ、交通の妨げにもなっている」などと主張し、営業差し止めを求めているそうだ。

葬儀場の建設について、法的な決まりはあるのか。高橋辰三弁護士に聞いた。

●葬儀場は一部の地域を除けば、自由に建設できる

葬儀場の建築にはどんな規制があるのか。

「都市計画法においては、『用途地域』と呼ばれる建築の規制があります。良好な住居環境を保護するため、建築に関する規制がされている第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域においては、葬儀場は立てることが出来ません。

葬儀場は建築基準法上の集会場に当たります。ただ、火葬場(建築基準法上の特殊建築物)も併設されている場合には、火葬場の経営について、所在する地域の都道府県知事の許可を受けなければなりません(墓地、埋葬等に関する法律第10条)。また、都市計画区域内での特殊建築物である火葬場の建築は、都市計画で定められなければならないという規制があります(建築基準法第51条)」

火葬場が併設されていなければ、一部の地域を除いては自由に営業できるのか。

「火葬場を伴わない場合は、先ほど述べた用途地域を除けば、自由に葬儀場を建設し、営業することができるということになります。ただし、自治体によっては独自の条例を制定していることがありますので、その点も確認することが必要です」

今回の裁判でのポイントは何なのか。

「今回の訴訟では、住民は、『公道上で遺体の搬入などが行われ、交通の妨げにもなっている』と主張して営業の差止めを求めているとのことです。

営業差し止めが認められるか否かは、葬儀場の営業による被害が周辺住民の受忍限度を超えるものであるかを総合的に判断して決定すべきとされています。これを『受忍限度論』といいます。

差止めが認められた場合の影響力は極めて大きいことから、損害賠償請求が認められる際に必要な違法性よりも強度の違法性、すなわち葬儀場の営業により侵害される近隣住民の生活上の権利利益が甚大であることが必要になると考えられます」

●実際の営業差し止めにはハードルがある

葬儀場の営業で、受忍限度を超えるのはどのような場合か。

「周辺住民が平穏に日常生活を送る利益を侵害する場合というのは、例えば、

営業時間が極端に長く大きな騒音が絶え間なく続く来場者が極めて多く家の前の道路を塞いでしまう近隣住民が車両で外に出ることや家に帰ることが著しく制限される

など、生活上の利益を著しく害しているような場合が考えられます。実際、本件と同種の事案において差止請求を認めた例は見当たりません」

実際の営業差し止めにはかなりのハードルがあるということか。

「仮に裁判で葬儀場の運営会社の営業差し止めが認められない場合でも、葬儀場は地域に密着した施設なので、会社側が経営的判断として、住民の日常生活上の利益を害さないような営業形態に修正していくことは大いに考えられます。

そのような方向の解決(和解)に進むこともありえるでしょう。会社側としても、住民の理解を得るための取り組みを行っていく必要はあろうかと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
高橋 辰三(たかはし・たつぞう)弁護士
東京都世田谷区において、町医者のような法律事務所を目指し2010年にアジアンタム法律事務所を開所し、民事事件、家事事件、刑事事件などを取り扱っている。弁護士会や地域ボランティア団体などでの公益活動に携わりながら、気ままに仕事をしている。

事務所名:アジアンタム法律事務所
事務所URL:http://www.adiantum.jp/

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