(隈研吾建築都市設計事務所出身の栗田祥弘氏が設計した、さりげなくおしゃれな外観)

東京・青山にはヨックモックのカフェがあり、時々訪れて高級感に浸っていますが、そこからほど近い場所に「ヨックモックミュージアム」という美術館がオープンしたそうです。

先日行ってみたら静かな裏通りに佇む素敵な一軒屋のような佇まい。ヨックモックのカフェの壁の色と同じ、ヨックモックのブランドカラーである青色の屋根瓦が色鮮やかです。

作品制作でもエネルギッシュですが女性関係でも相当

(壁にはピカソの版画が展示。椅子のデザインも素敵です。カフェには中庭もあり、明るいです)

来年の9月末まで『ピカソ:コート・ダジュールの生活』展が開催。こちらの美術館はヨックモックの会長、藤縄利康氏の意志で全国各地から集められたピカソのセラミック作品を中心に展示しているそうです。

ピカソのセラミック作品は、箱根の彫刻の森美術館ピカソ館まで行かないと見られないと思っていたのですが、青山でもピカソの作品を見られるとは......。こうやって集めた美術品を一般に公開するのが、企業としての理想型かもしれません。

展示会場はシックな雰囲気の地下1階と、自然光あふれる2階にわかれています。地下の方は薄暗い中、工房の写真に続いて女たちの写真や肖像が......。

1944年から約10年間ピカソの愛人だったフランソワーズ・ジローとピカソとの写真や、後に妻になったジャクリーヌに、ネックレスをつけてあげるピカソのラブラブ写真などが展示されていました。46歳年下の30代なのにアラウンド80のピカソを見つめるうっとりとした眼差しが印象的。作品制作でもエネルギッシュですが女性関係でも相当です。

でも、憎めないのが人徳&才能得。食欲も旺盛そうなピカソですが「レモン、魚、茄子」など食べ物をモチーフにした油彩画や、ヨックモックミュージックにぴったりの「お菓子」というクッキーやチョコレートやチェリーを描いた作品もあり、食欲が刺激されます。

この美術館で特筆すべきなのは、作品をかなりの至近距離で鑑賞できること。顔を間近に近付けてピカソの筆跡からエネルギーを感じることができます。

 

究極の陽キャアーティスト、ピカソのヴァイブスを感じられるセラミック作品

2階にはお皿にダイナミックなタッチで描かれたセラミック作品が並んでいました。

笑顔や鳩、ヤギやフクロウなどのモチーフは見ていてポジティブな気持ちになります。

ピカン関連の映像を見られるコーナーや、ピカソのロッキングチェアが撮影OKなコーナーも(ただSNSなどに投稿は禁止)。映像では、ピカソが粘土をまだ湿ったままの状態からこねて形作り、息を吹き込むという説明がありました。女体をこねくり回すと申しては何ですが、女性たちから吸収した生命エネルギーを粘土に注入していたのかもしれません。

(ピカソの本はカフェの自分の席に持っていって読めるものと、書棚の周辺から持ち出せないものがあるので要注意。知らないで席に持っていこうとしたら警報が鳴ってしまいました)

美術鑑賞のあと、楽しみなのはカフェでのお茶です。2階から階段を降りると、カフェとミュージアムショップがあり、ピカソ関連の書籍も大量に並んでいます。

ハガキやトートバッグなどのお土産も販売。何より魅惑的なのは「ミニャルディーズセット」というミニデザートとドリンクのセット1100円です。罪悪感なく食べられる小さくてクオリティの高いケーキとお茶やコーヒーを楽しめます。

(タルトフリュイ(季節ごとのフルーツタルト)は、訪れた時はシャインマスカットでした。かなり良いシャインマスカットでした)

チョコレートケーキやフルーツタルト、ムース、マカロンなど種類も豊富でした。ピカソの版画が飾られているアートな空間で、繊細でおいしいケーキを食べながら、味覚や視覚、嗅覚などの感覚をアップグレード。この洗練された居心地の良い空間にいると、女好きでやりたい放題だったピカソのイメージもアップしそうです。

ところでふと気付いたのは、お土産コーナーにもイートインのメニューにもヨックモックのクッキーがないということ。このカフェに入った時、心のどこかで期待していたのですが......。ピカソの絵画に描かれていたクッキーで、欲求が刺激され、でも結局ここでは買えないことで飢餓感が高まります。

このミュージアムに来たお客さんは、ヨックモックへの訴求力が高まって、その後店舗を探して買いたくなってしまうのではないでしょうか? そんな消費誘導効果がさすがです。

(陶磁器を模したトイレのマークもかわいいです)

辛酸なめ子

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デ ザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著に、『ヌルラン』(太田出版)、『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(PHP研究所)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。