企業倒産が11年ぶりに前年を上回った。東京商工リサーチの調査によると、2019年の全国企業倒産(負債総額1000万円以上)は8383件(前年比1.7%増)で、リーマン・ショックが発生した08年(1万5646件)以来11年ぶりに増加した。一方、負債総額は約1兆4232億円で、過去30年でもっとも低い水準だ。

「中小零細企業のジリ貧型倒産が多くなっており、今後も同様の倒産が増えていく見込み」と指摘する、東京商工リサーチ情報本部情報部の増田和史課長に話を聞いた。

飲食、アパレルが特に苦戦

――これから、特に体力のない中小零細企業の倒産が増えるのでしょうか。

増田和史氏(以下、増田) その流れは続きそうです。これまでと違い、金融機関は中小零細企業の事業性についてシビアに判断する傾向が強まり、事業について「将来性がない」と判断するケースも出てくるでしょう。金融機関はマイナス金利下で有望な借り手を求める一方で、貸付金の回収不能に備えて貸倒引当金を積む動きも出てきています。今後は、金融機関の“集中と選択”がより鮮明になるでしょう。

――倒産のなかでも「人手不足」関連倒産が過去最多を記録していますね。

増田 2019年の「人手不足」関連倒産は426件(前年387件)で過去最多となりました。このうち、「後継者難」が270件(構成比63.3%)と最多を占めています。ただ、「従業員退職」が44件(前年24件、前年比83.3%増)、「求人難」が78件(同59件、同32.2%増)、「人件費高騰」が34件(同26件、同30.7%増)とそれぞれ大幅に増えており、人手不足による労務費の高騰などが経営に悪影響を与えるケースが増えています。「人手不足」は、今後も倒産の要因になると思われます。

 ちなみに、業種別では人手不足が深刻な運輸業の倒産が254件(同6.7%増)と7年ぶりに増加しています。「人手不足」には抜本的な解決策がなく、金融機関からは「人件費の高騰が利益を圧迫し、さらに資金繰りの悪化を招いている」との声も聞かれます。

 打開策として、国は新たな在留資格「特定技能」を設けましたが、日本とアジア他国との賃金の差が少なくなってきていることなどから、当初の想定よりも外国人労働者は日本に来ていません。そのため、人材確保に外国人労働者を活用するという目論見は外れつつあります。

――運輸業のほかに、業種別で注目すべき点はありますか。

増田 より消費者に近く“川下”といわれる業種です。サービス業他が2569件(前年比2.2%増)で4年連続増加、小売業が1230件(同8.6%増)で2年連続増加しています。飲食業は799件(同7.9%増)、コンビニエンスストアなどの飲食料品小売業は316件(同12%増)で、やはり増加傾向にあります。

――飲食店では、いきなり!ステーキや大戸屋のように一気に店舗を拡大した業態の不振が目立ちます。

増田 飲食業界の移り変わりは本当に早いです。大手は業績が落ちているものの、まだ資本力に余裕があります。厳しいのは個人レベルでラーメン店やそば店、タピオカ店などを始めたケースで、流行に影響を受けやすいので業績を安定させるのは難しいでしょう。飲食業は、参入障壁は低いですが、継続していくのは困難です。はやり廃りのサイクルがますます早くなると、個人レベルの飲食店はバタバタと潰れていく可能性があります。生き残るためには、固定客の確保やしっかりとした経営基盤を築くことがカギになるでしょう。

――同じく苦境が伝えられるアパレル業界はいかがですか。

増田 流行や天候に左右されやすい上に、最近はECサイトに顧客が流れ、店舗型では人件費などの固定費が経営を圧迫しています。アパレル製品など織物・衣服・身の回り品小売業の倒産は236件(前年比18.5%増)と、大幅に増えています。特に、今シーズンは記録的な暖冬です。コートなどの重衣料の売れ行きが伸びず、アパレル各社の今後の動向には注目が必要です。

すでに起きていた“消費増税倒産”

――消費税増税も影響も与えていますか。

増田 消費マインドの減退を招くことで、小売業を中心に影響は避けられないでしょう。消費増税に伴い、政府がキャッシュレス・ポイント還元を始めましたが、今後はクレジットカード決済などが増えることが予想されます。今まで現金商売が中心だった小売店は入金が後ろ倒しになる上に手数料を引かれるため、資金繰りに苦労するケースも出てくると思います。実際、高知県のスーパーでは想定以上にカード決済が増え、軽減税率対応レジの投資なども重なったことで経営に打撃となり、12月に破産を申請しました。

――今後の見通しを教えてください。

増田 倒産の波は中小零細企業から中堅企業に波及しつつあります。特に、ポイント還元が終了する6月以降は、小売業、飲食業、サービス業など個人消費に依存する業種の動向に要注意です。全体的には、好決算を出している大企業も多く、好況を謳歌する企業と、その恩恵にあずかれない企業の二極化が進んでいます。

 今年は東京オリンピック・パラリンピックが開かれるため、インバウンド需要が高まるとみられていましたが、日韓対立やコロナウイルスなどの問題に収束の気配が見えず、リスク要因も多いのが実情です。

(構成=長井雄一朗/ライター)