コロナ禍で真っ先に減少したのは外国人観光客だった。インバウンド需要に依存していた宿泊施設が力尽きた。かき入れ時のゴールデンウィーク需要が外出自粛により消滅した国内観光客相手のホテル・旅館で倒産が増えると予測されている。

飛行機のファーストクラスをイメージしたカプセルホテル

 カプセルホテルを運営するファーストキャビン(東京・千代田区)と関連会社4社は4月24日、東京地裁に破産を申請。同日破産手続開始決定を受けた。負債総額は5社合計で約37億円。直営や運営委託、フランチャイズチェーン(FC)などで26軒のカプセルホテルを経営していた。

 2006年7月の設立。社名は飛行機のファーストクラスを意味する。航空機のキャビンをイメージした高級感のある空間が特徴のカプセルホテルで、女性客に人気があった。価格帯は4000〜6000円が中心。近年は比較的高単価な店舗も出店し、積極展開してきた。だが、東京五輪の開催を前にインバウンド(訪日観光客)の増加を見込み宿泊特化型ホテルの部屋数が増加し、競争が激化。宿泊単価の下落もあって業績が悪化。

 19年3月期の売上高は、同時に破産申請したファーストキャビン開発と合わせて約27億円、最終損益は8600万円の赤字。2期連続の赤字が続いていた。3月下旬から4月上旬の稼働率は10%まで落ち込む日もあるなど、業況が急激に悪化。東京・秋葉原で2店舗目となる電気街店を今春開業する予定だったが、急遽、中止した。緊急事態宣言発出後は休業するところが増え、事業継続が困難になっていた。スポンサーによる資金支援も検討したが、営業再開のメドが立たず事業継続を断念した。

 破産申請した関連会社はファーストキャビン開発、ファーストキャビン京都三条、ファーストキャビン京都嵐山、ファーストキャビン柏の葉の4社だ。

TKPは不動産の売却で特別損失を上回る

 ファーストキャビンの破産申請を受け、フランチャイズ契約をしていた企業は対応に追われた。貸会議室大手TKPはファーストキャビンに出資し、2施設のフランチャイズ契約を結んでいた。運営していたファーストキャビンTKP名古屋駅(全199室)は不動産を売却する。売却による特別利益は、保有するファーストキャビン株の評価損による特別損失(1億8000万円)を上回る見通し。この発表を受けてTKPの株価は4月28日、一時、前日比192円(10%)高の2100円に上昇した。5月1日の終値は2006円(48円安)。ファーストキャビンTKP市ヶ谷(東京・新宿区、全165室)は、TKPの本社オフィスビルに併設しており、休業期間の終了後、営業を再開する予定だ。

 インバウンド需要に沸く大阪では、企業が保有する不動産の有効活用という観点からカプセルホテルへの進出が相次いだ。

 JR西日本は17年2月、ファーストキャビンと合弁会社JR西日本ファーストキャビンを設立(出資比率はJR西日本51%、ファーストキャビン49%)。ファーストキャビンステーションあべの荘(大阪市)、ファーストキャビンST.京都梅小路RYOKAN(京都市)、ファーストキャビンステーション和歌山駅(和歌山市)の3施設を運営していた。

 JR西日本は合弁会社、JR西日本ファーストキャビンの解散を決定。あべの荘と京都梅小路は閉館する。ファーストキャビンステーション和歌山駅はJR西日本ホテルズが運営するホテルグランヴィア和歌山内にあり、ブランドを変えて営業を再開する予定だ。

WBFは横浜と札幌に新しいホテルを建設した矢先の経営の行き詰まり

 国内で約30カ所のホテルを展開しているWBFホテル&リゾーツ(大阪市)は4月27日、大阪地裁に民事再生法の適用を申請し、同日に監督命令を受けた。負債総額は約160億円でコロナ関連では最大の倒産となった。新型コロナウイルスの感染拡大で2月から宿泊客のキャンセルが相次いだのに加え、新しいホテルの開設などにも資金を投じたため資金繰りが悪化した。今後は再建に向け、スポンサー企業を選定する。

 同社は中堅旅行会社のホワイト・ベアーファミリー(大阪市)のホテル・リゾート運営会社として2009年12月に設立。東京、大阪、京都、北海道、福岡、沖縄などでビジネスや観光客向けのホテルを展開。19年3月期の売上高は47億8400万円を上げていた。近年は積極的にホテルを建設してきた。神奈川県初進出となる客室277室を備えたホテルをJR桜木町駅近くに建設。開業予定日の3月28日に延期に追い込まれていた。

 特に力を入れていたのが観光地の北海道。主力銀行は北洋銀行、北海道銀行、北陸銀行で、いずれも北海道を本拠に置く。札幌4施設、函館3施設、釧路、旭川、小樽にそれぞれ1施設を運営。昨年12月には、札幌の四季をイメージした「ホテルWBFフォーステイ札幌」をオープンしたばかりだった。北海道が出した緊急事態宣言で北海道の観光名所から国内外からの観光客の姿が消え、営業休止に追い込まれた。

琵琶湖畔の大型リゾートホテルも倒産

 琵琶湖畔の大型リゾートホテル、ロイヤルオークホテル スパ&ガーデンズを運営するロイヤルオークリゾート(大津市)は4月28日、大津地裁に自己破産を申請した。負債総額は約50億円。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う利用客の減少で、直近の稼働率が大きく落ち込んでいた。滋賀県内でのコロナ関連の倒産は初めてだ。

 同ホテルは1990年に開業。バブル崩壊の影響で運営会社が経営破綻した。ロイヤルオークリゾートが経営権を取得し、03年7月にホテル事業を再開した。客室数167室、7つのレストラン&バーを備え、西日本最大級のスパも有し、地元での知名度は高く、ブライダルサービスは人気を博していた。リーマンショック後の景気回復に加え、海外観光客などインバウンド効果もあって14年3月期の売上高は31億円だった。

 しかし、その後は隣接する京都に大手資本のホテルが開業したことで、インバウンドの集客に苦しみ、業績が悪化。19年3月期の売上高は19億円にとどまり、2期連続の赤字に陥っていた。18年1月にシンガポールのファンドが全株式を取得し、経営再建に取り組んでいた。

コロナ倒産はこれからが本番か

 東京商工リサーチの調査によるとコロナ倒産は3月末時点では25社だったが、5月1日までに新たに89社が倒産した。業種別では宿泊業が26社と突出し、続いて飲食業の16社、アパレル関連の10社だった。

 なぜ、ここまで宿泊業者はコロナに弱いのか。もちろん最も大きな要因は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う旅行の減少である。ビジネス出張も激減したが、倒産した宿泊施設の多くは観光客相手の旅館やホテルだ。とりわけ、中国や韓国からのインバウンド客が主力だった宿泊業者の倒産が目立つ。

 人口減に苦しむ地域にとってインバウンド客は救世主のような存在だった。20年に4000万人という政府の目標は今や夢物語。コロナの影響が長引けば1000万人台もあり得る。インバウンド頼みのホテルや旅館には致命傷になる。

 国内観光客相手のホテルや旅館も苦しい。KDDIによると、外出自粛要請で今年のゴールデンウィークの観光地の人出は激減した。長野の軽井沢や三重の伊勢神宮は去年に比べて9割以上も人出が減ったという。宿泊業者の倒産は、これからが本番とみられている。

(文=編集部)