アパレル大手、オンワードホールディングス(HD)はZOZOが運営する衣料品通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」へ8月下旬に再び出店する。たもとを分かった2社が、新型コロナウイルスの感染拡大で市場環境が悪化する最中、再接近したわけだ。

 オンワードHDは18年末、ゾゾタウンから全ブランドを引き揚げ、取引を打ち切った。ZOZOが18年12月に導入した有料会員向けの割引サービスがきっかけになった。アパレル各社は、「ブランド価値を毀損する」と、強く反発。有力企業21店が撤退する事態となった。結局、ZOZOは半年でこのサービスを終了。19年秋、ソフトバンクグループのZホールディングスの傘下に入り、創業社長の前澤友作氏も退いた。

 オンワードHDは、ZOZOが経営体制を刷新したことを理由に1年半ぶりに復縁する。オンワードが再び出すのは「J.PRESS」「JOSEPH」など計11ブランドだ。オンワードHDはオーダーメイドスーツのネット販売でも協力する。ZOZOが持つ約100万件の体形データを活用し、オーダーメイドのジャケットやパンツ、ワンピースなどの28種類を販売する。オンワードが中国のグループ工場で製造し、10日〜2週間で商品を届ける。5年で年間売上高100億円を目指す。

 ZOZOにとっても利点は大きい。アマゾンジャパンや楽天もファッション分野を強化しており、総合EC大手の競争は年々、激しくなっている。

「オンワードが、わずか1年半で復帰するのは、コロナショックが相当深刻なのだろう」(ファッション業界関係者)

オンワードの3〜5月期は24億円の赤字

 オンワードHDの20年3〜5月期の連結決算は、売上高が前年同期比34.9%減の422億円、営業損益が21億円の赤字(前年同期は29億円の黒字)、最終損益が24億円の赤字(同16億円の黒字)だった。同期間の最終赤字は16年ぶりのことだ。主力販路である百貨店が、新型コロナウイルスのまん延を受けて9割以上が休業したのがモロに響いた。休業した店舗の人件費などを特別損失として計上した。

 主力の国内アパレルの売上高は45.1%減の231億円、営業段階で17億円の赤字(前年同期は33億円の黒字)。生活雑貨や食品を扱う国内ライフスタイル事業の売上高は21.0%減の70億円、営業利益は82.1%減の9300万円に落ち込んだ。国内ライフスタイル事業はかろうじて黒字を維持した。

 電子商取引(EC)は気を吐いた。リアル店舗の売上が休業で落ち込むなか、ECのそれは1.5倍の90億円をあげた。コロナ禍での落ち込みをECが支えたという構図だ。店舗はこの2年間でほぼ半減の1600店舗になる見通し。早期に全売上高に占めるEC比率を5割に引き上げる計画だ。ECの強化には約800万人の年間顧客数とECのビッグデータを持つZOZOとの提携が必要と判断した。

 オンワードは21年2月期の業績見通しや配当計画は「未定」を継続した。

ZOZOは今期の純利益は過去最高の276億円か

 ZOZOの20年4〜6月期の連結決算は売上高が前年同期比19.4%増の336億円、営業利益が33.9%増の104億円、純利益が37.5%増の73億円だった。有料会員向け割引サービスは19年5月に終了し、値引き費用が減ったことも利益改善に寄与した。

 従来は業績予想を示していなかったが、経営体制が変わり、予想を開示した。21年3月期の売上高は前期比14.5%増の1437億円、営業利益は41.6%増の395億円、純利益は46.8%増の276億円の見通し。3期ぶりに最高益を更新する。コロナ禍の影響で電子商取引の利用が広がり商品の取扱高が伸びる。1999年に出店したヤフーの通販サイトとの相乗効果を見込む。過去最高の利益をバックに年間配当は前期比7円増の37円とする。

 新型コロナウイルスが小売業を直撃した。実店舗が沈みECが浮上した。老舗アパレルの名門オンワードHDと新興の衣料通販のZOZOの決算は、はっきりと明暗を分けた。オンワードHDのゾゾタウンへの再出店は、アパレルの主要販路が百貨店からネット通販へ移行せざるを得ないことを示す象徴的な出来事となった。

(文=編集部)