米国、InfoWars騒動が加熱…人気陰謀論者をアップルやグーグルが排除

米国、InfoWars騒動が加熱…人気陰謀論者をアップルやグーグルが排除

「テクノロジーの巨人から次々に排除されているラジオ番組がある」

 そんなヘッドラインを見て、何が起きているのか疑問に思った方もいるかもしれない。

『ジ・アレックス・ジョーンズ・ショー』は、アレックス・ジョーンズ氏がホストを務めるトークラジオ番組で全米100を超えるラジオ局で放送されている。またYouTubeのチャンネルでは5億以上の視聴数を誇る。ジョーンズ氏は現在の米国メディアを「右派系陰謀論者」であると唱え、そもそも右左対立自体が、支配層による人民統治のための手法であると批判してきた。同氏は、ヒトラーの時代のナチスドイツも、これに対抗するように起きた共産主義も、等しく大量虐殺や優生主義に基づく民族浄化を行っており、かたちを変えてそのパラダイムが維持されていると説く。また、銃規制については、アメリカ合衆国憲法修正第2条擁護の立場から断固反対の立場を取っている。

●締め出されるラジオ

 そうしたなか、アップルがポッドキャストアプリからジョーンズ氏のラジオ番組の配信を停止した。これに続いてフェイスブックは番組ページを停止する措置をとった。しかも、月曜日の夜中、午前3時という時間にだ。その数時間後、グーグルはYouTubeから同氏のチャンネルを削除し、スポティファイもジョーンズのポッドキャストを削除した。

 一方、ジョーンズ氏のウェブサイト「InfoWars.com」では、引き続きビデオやラジオ番組などを見たり聞いたりすることができる。

 その背後でいったい何が起きていたのだろうか。

 陰謀論者として人気があるジョーンズ氏は、2012年に発生したサンディフック小学校での銃撃事件について「虚構だ」との主張を行ってきた。また、宗教や移民に対する露骨な差別的発言も相次いでいた。

 アップルは「ヘイトスピーチを黙認しない。我々はあらゆるユーザーにとって安全な環境を提供するため、クリエイターや開発者が守らなければならないガイドラインを明確に定めている」と「バズフィードニュース」の取材に答えている。

 アップルに続いて対応を取ったフェイスブックは、「繰り返し、コミュニティガイドラインを犯してきた。同じページの多くのコンテンツが通報されており、レビューした結果、暴力行為の美化が露骨な表現に関するポリシーを犯しており、非人道的な言葉を使ったトランスジェンダー・イスラム教徒・移民に対する表現が、ヘイトスピーチのポリシーに反している」と説明した。

●きっかけとなったアップル、影響が大きなYouTube

 これまで、環境問題、移民問題、銃規制などの倫理的な施策に関して、シリコンバレーにおけるリーダーはアップルだった。特にこれらの政策は現在のトランプ政権とは異なる立場であり、アップルがリーダーシップを取って異なる意見を述べ、その他の企業もこれを追随する、という構造だった。

 今回のジョーンズ氏、InfoWarsのコンテンツの扱いについても、アップルが判断を下して行動し、これにフェイスブック、グーグルが続くという流れとなった。
アップルはジョーンズ氏のポッドキャストのコンテンツそのものをホストしているわけではない。ポッドキャストのリンクをディレクトリに載せ、検索可能にし、ポッドキャストアプリやiTunesで視聴できるようにしているだけだ。その点で、コンテンツそのものをホストしているフェイスブックやYouTubeとは異なる立場、と指摘することはできる。

 その一方で、アップルも同社が動くことによる影響を鑑み、ポッドキャストディレクトリからの削除に踏み切った。結果として、いつも通り、他の企業もならって対応を行ったことになる。

 このなかで、ジョーンズ氏にとって直接的な収益源となっているのは、アップルでもフェイスブックでもなく、グーグルのYouTubeプラットホームだ。チャンネル登録者数250万人、累計視聴数は10億回に上る。ご存じの通り、ユーチューバーはYouTubeの再生回数に応じた広告費の分配を得ることができるからだ。

●InfoWarsの行方

 今回の削除について、ジョーンズ氏は直接コメントを発表していない。しかしInfoWarsのウェブサイトでは「検閲」だと以下のとおり批判している。

「これは現代における電子焚書と同等だ。反体制派の声が大きすぎ、影響力を持ちすぎたことを理由にした、ビッグテック企業の強制収容所送りだ。これは粛正だ。選挙への干渉であり、陰謀だ」

 InfoWarsのウェブサイトでは、検閲された情報が見られるアプリを宣伝している。また多くのビデオやポッドキャストエピソードも、ウェブサイトを通じて配信中だ。

 大手IT各社の対策の遅さや、結局アップルが音頭を取らなければ動かなかったこと自体も、テクノロジー業界、シリコンバレーがフェイクニュースやヘイトスピーチに対してまだ敏感になっていない現状を表わしている。
(文=松村太郎/ITジャーナリスト)


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