(ブルームバーグ): 通常国会が20日召集され、安倍晋三首相が施政方針演説を行った。自民党総裁任期が残り1年9カ月となる中、首相は任期中の憲法改正に意欲を見せるが、野党を含めた議論が進む見通しは立っていない。

  施政方針演説の中で安倍首相は、「国のかたちを語るもの、それは憲法だ」とした上で、「未来に向かってどのような国を目指すのか、その案を示すのは私たち国会議員の責任ではないか」と訴えた。そうした責任を果たすことは、「歴史的な使命」とも語った。

  安倍首相は与野党に対し、衆参両院の憲法審査会での議論を呼び掛けるが、野党側は今国会でも首相主催の「桜を見る会」への追及を続ける構えだ。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件を受け、立憲民主、国民民主両党などは20日午前、IR整備法の廃止法案を共同提出しており、同事業の是非も焦点となりそうだ。

  安倍首相は年明け以降も、憲法改正に関する発言を繰り返している。4日の年頭会見では、「期限ありきではない」としながらも「令和の時代にふさわしい憲法改正原案の策定を加速させたい」と強調。12日に放送されたNHK番組では、「私自身の手で憲法改正を成し遂げたいという思いには全く揺らぎはない」と改めて意欲を語った。

  改憲論議の進展を目指す自民党は7日、「憲法改正の主役は、あなたです」と呼び掛けるポスターを発表。同党で憲法改正をテーマにしたポスターの制作は初めてで、平沢勝栄広報本部長は「憲法改正は当面の最重要課題の一つ」だと訴えた。

  ただ、世論は首相が望む改憲に前向きとは言えない状況だ。共同通信が11、12両日に実施した世論調査では、首相の下での憲法改正に「反対」が52.2%で、「賛成」の35.9%を上回った。産経新聞とFNNが14日に公表した調査では、憲法改正に「賛成」が44.8%で、「反対」を4ポイント上回った。

  憲法改正に関しては、連立与党の公明党の山口那津男代表も慎重な姿勢を示している。12日のNHK番組では、「政府課題の優先順位というところでは国民の関心は必ずしも高くない」とした上で、「冷静に現実的に見据えて進める必要がある」と述べた。

  野党側では日本維新の会が改憲に前向きだが、立憲民主党などは現状での改憲論議加速には慎重だ。

  一方、衆院憲法審委員で立憲民主党の山尾志桜里氏はブルームバーグの取材に対し、安倍首相が掲げている憲法9条に自衛隊の存在を明記する案について「私たちは反対だ。存在だけ書き込んで行動のルールを書かなければ憲法上は歯止めがなくなってしまう」と述べ、国民に反対意見を伝えるためにも憲法審での議論は必要との考えを示した。

(安倍首相の演説を受け、第2、3段落に演説内容や野党の動きを追加し、更新しました.)

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