(ブルームバーグ): ホワイトハウスで15日署名された米中両国の第1段階貿易合意には、通貨の競争的切り下げを回避するとの両国の公約の確認が盛り込まれた。しかし外為専門家の大半は特に新しい点がなかったとの見方をしている。

  合意文書で2ページを占めた通貨に関する章は、米中いずれかが国際通貨基金(IMF)ないし20カ国・地域(G20)のコミットメントに反した場合に発動されるメカニズムを明記した。

  両国は為替相場を操作していないと立証するため、外貨準備や輸出入などのデータを公表することで合意した。しかし大方のアナリストは、為替に関してはほとんど新しい点がないと受け止めている。

  ドイツ銀行のチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は「第1段階合意全体と為替部分の履行に関しては現時点ではまだ不透明だ」とし、「従って人民元に関してはわれわれは引き続き注視する必要がある」と語った。

  第1段階合意の署名に先立ち、米財務省は13日、中国の「為替操作国」認定を解除。アナリストらはこれを中国への譲歩だとみていた。事情に詳しい関係者によれば、為替操作国認定を後日解除すると公約する案は中国側に拒否されたという。

  オバマ前政権で財務副次官補を務め、現在は外交問題評議会(CFR)のシニアフェローであるブラッド・セッツァー氏は、「発表内容には新しい点がなく、残念だ」とした上で、「ほとんどは中国がこれまでIMFとG20で公約した内容の繰り返しだ」と指摘した。     合意署名を控えて広がった楽観的見方や、中国の為替操作国解除を背景に人民元は14日、7月以来の高値を付けていた。オフシュア人民元は合意署名後、1ドル=6.89ドルとほぼ変わらず。

  元米財務省当局者でIMFで理事も務めたマーク・ソーベル氏は、第1段階の合意により米国は、中国が履行しない場合に制裁を科す道筋を得たようだと分析。

  「新しい点は、通貨に関する章と2国間の紛争解決メカニズムの関係だ」と同氏は指摘し、「合意文書は実質的に、米国が為替政策のある側面に不満を持った場合、関税賦課を含め、一方的にこのメカニズムの条項を発動させられることを示している」と説明した。

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