(ブルームバーグ): 森雅子法相は、保釈中にレバノンに逃走した日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の日本での裁判決着に向け、身柄引き渡しを「決してあきらめない」と述べ、外交交渉を含めあらゆる努力を続けていく意向を明らかにした。

  ゴーン被告(65)が昨年12月末に不法出国してレバノンに逃走して以降、東京地検は従来の会社法違反(特別背任)などの罪に加え、出入国管理・難民認定法違反容疑で逮捕状を取ったが、身柄引き渡しへの手続きが進展している兆候は現れていない。日経新聞によれば、レバノン司法当局側はゴーン被告の身柄が「日本へ引き渡されることはない」との見解を示した。

  森氏は先週のブルームバーグのインタビューで、レバノンとは犯罪人引き渡し条約を結んでいないため、「いろいろ困難がある」としながらも、「情勢も刻々と変わっていく」として、外交当局と連携し「できることをすべてやっていく」との考えを示した。

  両政府間のやり取りの詳細は機微に関わるとして言及を避けたが、同被告に対し「何か言いたいことがあるなら、日本の裁判所で堂々と主張してほしい」と訴えた。

  逃亡の背景には、裁判長期化への懸念があったとの指摘もある。元検事の郷原信郎弁護士は先月の外国特派員協会での記者会見で、レバノンにいるゴーン被告とテレビ電話で対話した際、「裁判が大幅に遅れることになり、始まるまで妻と息子と会えない」ことが逃亡理由だと語ったことを明らかにした。郷原氏は控訴審や上告審を含めると審理期間は10年程度かかるとの見通しを示した。

  森法相は、ゴーン被告のような会社の経営陣によるいわゆる「ホワイトカラー犯罪」は、「諸外国でも解決するまで長い時間がかかる」と指摘。事前に争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きがあり、「弁護人も裁判を迅速にさせるための意見」を言う機会があるとの認識を示した。不透明な手続きで裁判が長期化することは「アンフェア」だが、同被告のケースは「決してそういうことではない」と語った。

  法務省は先月、「カルロス・ゴーン逃亡事案対策・再発防止プロジェクトチーム」を設置。衛星利用測位システム(GPS)の装着を含め、保釈中の被告の逃亡を防ぐための法改正を今月、法制審議会に諮問する方針だ。

  通常、個別の事件について法相が言及することはないが、森法相はゴーン被告が有名人であることに加え、日本の刑事司法制度を公然と批判していることから、「これはもう個別事件ではなく、欧米から著しく劣ったものではないと、日本の法相として反論する必要がある」と判断して会見などで発言を続けていると説明した。

  東日本大震災の被災地・福島県出身の森氏は、ゴーン被告が当時、被害を受けた同県内の日産の工場を訪れ、早期の再建を宣言したとのエピソードを紹介。「皆が感謝した、経営者として立派に活動していた」と振り返るが、不正に出国したことに対しては「大変残念。いつ変わってしまったのかと言いたい」と主張した。  

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