(ブルームバーグ): 新型コロナウイルスの拡散を防ぐため中国との国境を封鎖した北朝鮮。その決断は持ち直し始めたばかりの北朝鮮経済を後退させるほか、金正恩朝鮮労働党委員長にトランプ米大統領との非核化協議再開を迫る圧力にもなる。

  北朝鮮で初の新型ウイルス感染が伝えられる中、国境封鎖の影響は燃料価格の急騰や港湾活動の低下、鉄道や空路の運行停止となって現れ始めている。ここ数日、韓国ソウルを本拠とするNKニュースは、ディーゼル価格の36%急騰や南浦港での活動減少、新たな検疫手続きなどを伝えている。

  国境封鎖は北朝鮮にとって切実な外貨獲得の手段である外国人旅行者を締め出し、対外貿易も一段と細ることになる。経済的打撃が続けば、金氏がトランプ氏の要求に逆らい続けるのは難しくなるかもしれない。

  新型ウイルスの問題が浮上する前、北朝鮮経済には回復の兆しがあった。国連貿易開発会議(UNCTAD)による最近の推計では、国内総生産(GDP)は2019年に1.8%増となり、過去数十年で最大の落ち込みとなった前年から持ち直していた。

  新型ウイルスを警戒した国境封鎖に動く前、金氏はトランプ氏の圧力に抵抗していた。中国が新型ウイルス感染を世界保健機関(WHO)に初めて報告した昨年12月31日、金氏は党中央委員会総会での演説で、米国の「ギャングのような行為」を非難。核兵器や長距離ミサイルの実験を再開する意向を示した。

  もっとも、新型ウイルス感染が拡大する前でさえ、外国資本へのアクセス強化抜きに金氏が自国経済を支える手段には限界があった。経済開発の推進を維持するのに十分な外貨を確保できなければ、金氏がいずれ経済危機に直面するだろうとの研究報告は相次いで出されている。

  韓国の李鍾奭(イ・ジョンソク)元統一相は「金氏は権力掌握を支えるための力強い経済成長が欲しいため、制裁解除を望んでいる。しかし、まず非核化せよという米国の要求に屈することで自身の生き残りをリスクにさらす理由はない」とし、「金氏は態度を変えないだろう。どんな圧力があろうともだ」と語った。

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