(ブルームバーグ): 新型コロナウイルスで日本国内では13日から14日にかけ、初の死者が出るなど新たに5例の患者が見つかった。いずれも流行地域への渡航歴が確認されておらず感染経路も不明で、国内での感染拡大が懸念される事態となっている。クルーズ船を含めた国内の感染者は計252人となる。政府は対策本部の下に専門家会議を設置するなど体制を強化する。

  加藤勝信厚生労働相は14日午前の記者会見で、国内の新型コロナウイルスを巡る状況について「流行している、まん延している状態ではないという見解を変えるエビデンス(証拠)は持っていない」との認識を示した上で、仮に国内で流行した場合には「状況に応じた体制が敷けるよう準備している」と述べた。

  厚労省の発表によると、死亡したのは神奈川県の80歳代の日本人女性で渡航歴はない。1月22日に倦怠(けんたい)感を認め、28日に医者を受診したが経過観察を指示された。その後、容体が悪化したため、肺炎と診断され別の医療機関に入院。2月6日にはさらに転院し、12日に新型コロナウイルスの検査を受けたが、翌13日に死亡した。その後、陽性が判明した。

  このほか、東京都の70代のタクシー運転手、和歌山県の50代の医師、千葉県の20代の感染が確認された。いずれも男性で肺炎像があり、入院している。本人の申告では千葉県の男性には渡航歴がなく、東京都と和歌山県の男性には発症前14日以内に中国湖北省または浙江省への滞在歴がない。NHKの報道によると、タクシー運転手は死亡した女性の義理の息子という。

  一方、和歌山県は14日、70代の農業の男性がウイルス検査の結果、陽性であることが判明したと発表。発熱などがあり6日から入院しており、重症。発症前14日以内の渡航歴は不明という。

  安倍晋三首相は14日夕の政府対策本部で、感染症の専門家会議を新たに設置し、対応を強化していく方針を明らかにした。また、茂木敏充外相は同日、中国浙江省温州市の感染症危険情報をレベル3に引き上げ、渡航中止を勧告すると発表した。

クルーズ船

  横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号では、船内待機が長期化する中、政府の対応に乗客の一部から不満の声も出ている。

  ビジネスコンサルタントの大森和明さん(70)は、ブルームバーグの取材に対し、「密室に閉じ込められていて空気の状態も悪く、非常にストレスがある」と話す。感染拡大のため、船内のサポートセンターも「対応に混乱をきたし、電話を何回してもつながらない」という。医師も交代制のため「同じ説明を何回も話をしなければならない」と疲労の色を隠せない。

  大森さんは、クルーズ船内では、お互い交流を求めて乗客同士で食事や下船しての観光ツアーに参加することも多いため、「感染が広がったのではないか」と推測する。日本政府が長期の船内待機を求めていることについては、「早く自費でも検疫検査をして、陰性か陽性かを調べて別の施設へ下船して治療をしたい」と話した。

  政府は13日になってウイルスを高精度で検出するPCR検査で陰性が確認された人のうち希望者については下船し、政府が用意する宿泊施設で生活してもらう方針を発表した。当面は80代以上が対象で、下船は14日以降になる。

  厚労省の13日までの発表では同船での感染者は検査結果が出た延べ713人のうち計218人で、船内に残っている80歳以上の人は同日時点で約200人。河野太郎防衛相のツイッターによれば、13日正午時点で、感染者以外に急病・付き添いで35人が下船しており、船内には3458人が残っている。 

 

(第1、6段落に政府の動きを追加し、更新しました)

©2020 Bloomberg L.P.