(ブルームバーグ): 香港のソフトウエアエンジニア、エドガー・チャンさんは今月、クルーズ船「ワールドドリーム」の船内に隔離された数千人の1人だ。先に乗船した乗客が新型コロナウイルス検査で陽性反応が出たため、この船は香港沖に停泊せざるを得なかった。

  地元メディアが「ゾンビ船」と呼んだ客船に足止めされたチャンさん(28)はしばらくは休暇で船旅をするつもりはない言う。「クルーズでかぜをひくのは普通でも、感染力の強い病気にかかるのは怖い」と話す。クルーズ業界が恐れるのは、そう考えるのがチャンさん1人だけでないということだ。

  中国を含むアジアはクルーズ旅行の大きな成長市場となるはずだったが、運航各社は域内全体で出航取りやめを余儀なくされている。

  ゲンティン香港のワールドドリーム号や米カーニバルの「ダイヤモンド・プリンセス」号などで乗員・乗客の隔離が続く映像が世界中に放送され、業界には大きなイメージダウンとなった。カーニバル系の「ウエステルダム」号も各地で入港を拒否された後、カンボジアがようやく受け入れてくれた。

多くの港で入港拒否されたクルーズ船、カンボジアが受け入れ

  ボストン大学スクール・オブ・ホスピタリティー・アドミニストレーションのクリストファー・ミュラー教授は「クルーズ業界にとっては恐ろしいことだ。市場全体がそれほど成熟していないアジアという新たな市場では、回復に長い時間を要するだろう」と指摘する。

  アイーダ・クルーズが運航する「アイーダヴィタ」は欧州の乗客1100人余りを乗せ、ベトナムのクアンニン省の港に入る計画だった。だが寄港を断念。新型コロナウイルスを懸念する省当局が今月6日、中国を最近訪れたクルーズ船からの乗客・乗員の下船を禁じたためだ。

  同船はベトナムに向かう前の2週間にわたり中国を巡っていた。スケジュール表によれば、11−13日には香港入りしている。

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