(ブルームバーグ): ソフトバンクグループの孫正義社長はインターネットを通じ自動車や住宅、オフィスを共有するシェアリングエコノミーの熱烈な信者で、新興企業に数十億ドルも投資してきた。しかし、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大が人の交流を妨げ、ビジネスモデル自体が危機に瀕している。

  ニューヨークでは感染症拡大の防止策として住民の外出禁止や在宅勤務が徹底され、ウィーワークのシェアオフィスは閑古鳥が鳴いている。上海ではタクシーの利用が敬遠され、配車サービスの滴滴出行の売り上げは急減中だ。米配車サービスのウーバー・テクノロジーズのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は、「自分の子どもらをウーバーには乗せない」と語った。

  英ペラム・スミザーズ・アソシエイツのパートナー、ペラム・スミザーズ氏は「パンデミックが外出を控えようとする心理を助長しており、シェアリングエコノミーへの投資には不利な状況だ」と指摘。ウィーワークやウーバー、ホテル事業を手掛けるインドのOYO(オヨ)について「時期が比較的良い時に利益を出せていなかった。2020年はどうなるのか」と疑問を投げ掛けている。

  滴滴のドライバーを務める上海在住のシェン・ガン氏(34)は、これまで早朝の通勤時間帯に1時間当たり36元(約570円)を稼いでいたが、現在は3時間で6元に減った。「新車を買ったばかりで、プランBはない」と嘆く。

  オヨの場合、旅行者が激減する中で契約ホテルに売り上げ補償金を支払う必要もある。日本での加盟ホテルである川崎ホテルパークでは4月までのキャンセル数は400件以上、損害額は2500万円に達した。オーナーの宮本相浩氏は、「従業員を有給扱いで休ませている。客が減っていないホテルはどこにもないだろう。オヨの体力が続くか心配だ」と話す。

  新型コロナが世界的に流行する中、10兆円ファンドと呼ばれるビジョン・ファンド事業の先行き警戒感からソフトバンクG株は前週までの1カ月で半値となり、19日には1994年の上場以降で最大の下落率を記録した。社債保証コストを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)も10年で最も高くなった。

  株価急落を受け孫社長は23日、4兆5000億円に及ぶ資産売却と資金化を発表。最大2兆円の自社株買いや社債の買い入れなどに充てる。財務の運営姿勢を疑問視し、信用格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げていたS&Pグローバル・レーティングも、資産売却が実現すれば、信用力の下押し圧力は緩和すると一定の評価を与えた。

  孫社長の一手で、同日のソフトバンクG株は19%高と一転して急騰。24日も一時21%高と上場来最大の上昇率を記録するなど株価を押し上げる効果はあったが、2月の直近高値(5871円)に対しては3割程度なお下回る。

  80を超すビジョン・ファンドの投資先企業の厳しい事業環境も変わっていない。オンライン小売りの米ブランドレスは2月に事業を閉鎖し、関係者によると、通信衛星ベンチャーのワンウェブは資金繰りと厳しい競争を理由に破産法申請の可能性を検討している。

  孫社長が経営難に陥った出資先企業の支援を好む傾向がある点も投資家にとっての懸念材料だ。昨年にはウィーワークに対する1兆円規模の資金支援を行うと発表。ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役は、この時から「既に投資家をいらだたせていた」と言う。

  ソフトバンクGにとって「環境が一番大切」と話すいちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、「新型コロナが6月までに収束するのか。10月や11月、それ以降まで長引くのかどうかが経営にとって重要だ」と述べた。

  ソフトバンクGとビジョン・ファンドの広報担当者はブルームバーグの取材に対し、直ちにコメントできないとしている。

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