(ブルームバーグ): 集中治療室(ICU)と人工呼吸器の配分は先着順にせず、回復後に患者治療に再び従事できる医療関係者への提供を優先すべきだ。救命に必要な装置が限られている場合、回復の見込みが高い方の患者に優先的に使われる必要がある。世界の医療専門家および生命倫理学者で構成するグループが23日に示した指針だ。

  一部の医療機関で新型コロナウイルスの重症患者が急増する中で、公平な判断の枠組みを提供する狙いがある。医療機関や当局はICUや人工呼吸器の拡充に最善を尽くしているが、今後こうした装置の配分で厳しい決断を迫られ得る。既にそうした配分が行われている地域もある。

  米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載されたこの論文は、重度の呼吸困難に陥る患者の急増に医療現場が追い付かない状況下で重い判断を下さなければならない医療従事者の個人的な負担を和らげる可能性がある。

  それは現実離れした見通しではない。米国では多くの医療専門家が、同国より約10日早く感染拡大が始まったイタリアを参考にしている。イタリアの医療体制は過度の負担であまりにも疲弊し、治療手段の配分を巡って医師は胸が張り裂けるような決断を迫られている。60歳を超える患者には人工呼吸器を提供しない事例もあるという。

  この論文を執筆したペンシルベニア大学医療倫理学部のエゼキエル・エマニュエル氏らは「回復の見込みが高い患者を救うため、先に治療を受けていた患者から人工呼吸器やICUのサポートを奪うことは医師にとって極度の心理的トラウマになることは間違いない。拒否する医師もいるかもしれない」と指摘。「ただ多くの指針は希少な医療資源を他の患者に移すという決断は殺人行為ではなく、患者の同意も必要としないことで一致している」とした。

  論文によると、米国にはICU約8万5000床、人工呼吸器19万個があるが、重症患者は96万−380万人に達する可能性がある。病床や人工呼吸器を増やすことに取り組んでも、死者は8万ー130万人に達する恐れがある(人口に占める感染者の割合5%、集中治療が必要な割合6%、致死率0.5%を想定した中程度のシナリオ)。

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