(ブルームバーグ): スペインのマドリードで最大の病院の1つ、ラパス病院の救急救命室で、ダニエル・ベルナベウ医師は新型コロナウイルス感染症患者の死亡診断書に署名した後、足早に呼吸困難に陥っている別の患者の治療に向かった。

  新型コロナ感染者の急増に医療スタッフが対応しきれず、入院さえできずに待合室で死亡する患者が相次いでいる。マドリードでは一部で葬儀ができず、遺体安置所のスペースもないため、スケート場が安置所代わりに使われている。

  ベルナベウ医師は電話取材に対し、重症患者は集中治療室(ICU)の収容能力を超え、新たなルールでは年配者よりも若者が優先されると説明。「あのおじいさんもこのような状況でなければチャンスがあったのに」としながらも、「同じような患者があまりにたくさんいる」と話す。

  人口約4700万人のスペインの新型コロナ死者は最初に発生した中国や今月深刻化したイタリアよりも速いペースで増えている。スペイン当局は25日、国内で新たに738人が死亡したと発表。死者は累計で3434人と、中国を上回った。

  約3週間前の時点では新型コロナの脅威をそれほど重視していなかったサンチェス首相は、大半の国民が経験したことのないほどの大きな脅威だと警鐘を鳴らした。8日の国際女性デーには国民に大規模なデモへの参加を呼び掛け、マドリードでのイベントには約12万人が集まっていたが、参加していたサンチェス氏の妻や一部閣僚にその後、新型コロナの陽性反応が出た。

  ベルナベウ医師が勤務するラパス病院では24日、救急救命室での入院待ちが一時240人に上った。現場の最前線にいる医師は完全防護には程遠く、着用しているのは綿のローブにマスクだけ。患者とは1メートルの距離を保つよう勧告されているが、それは不可能だ。

  ベルナベウ医師は「周りの同僚は体調を崩している」と説明。「私は放射線科の医師で、本来なら救急救命室にいるはずはないのだが、こうして前線にいる」と明かす。

  スペイン政府は23日、約4000人の医療従事者が感染したと発表。感染者全体の約12%を占め、イタリアの8%、中国の4%を上回る。

  ラパス病院は25日、より多くの待合室を新型コロナ感染者用の病室に変更してスペースを新たに確保したが、集中治療を受ける順序を決めるトリアージについてのルールは厳しくなる一方だ。若い患者が増え続ける中で、肺が急速に虚脱しやすいそうした患者のためにスペースが使われずに確保されている。

  ベルナベウ医師は「われわれは全く途方に暮れている」と漏らした。

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