(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)が4月30日の政策委員会で決めた金融政策の予想外の調整は、実質的な利下げに等しく、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けたユーロ圏経済の回復を支援する最前線に銀行を置くことを意味する。

  銀行融資の促進を目的とする「条件付き長期リファイナンシングオペ(TLTRO3)」金利を最大マイナス1%まで引き下げることに加え、条件を付けない「パンデミック緊急長期リファイナンシングオペ(PELTRO)」が導入されたことで、欧州の金融市場の緊張は和らぐ可能性が高い。

ECB、危機対応を強化−域内経済は今年12%縮小もとラガルド総裁

  現金を積み上げてきた銀行は貸し付けを拡大し、ECBが資金供給の担保として受け入れる債券の購入を増やすと考えられる。破綻回避に苦闘する企業に十分な資金を確実に届けると同時に債券市場を安定させ、数十年で最悪のショックをユーロ圏経済が乗り切れるよう政策対応を強化したといえる。

  INGグループのシニア金利ストラテジスト、 アントワーヌ・ブベ氏は「ECBは万全の対応を取っている。銀行がそれ自体と実体経済の資金繰りに必要な資金を全て確保できるよう確実を期している」との見解を示した。

  コメルツ銀行の固定金利戦略責任者クリストフ・リーガー氏は、TLTRO3の金利がマイナス1%に下がった上、投資適格でなくても格付けが「BB」以上なら一部債券を担保として受け入れるとECBが決定済みであり、「6月のTLTROの応札は巨額になるはずだ」と述べた。

  一方ECBの今回の決定は、過去10年間の大半を通じて、伝統的な政策金利の引き下げを続けた結果、さらなる利下げ余地がほとんどないと当局者が認識する状況をあらためて浮き彫りにする。金融緩和の効果が反転するリバーサルレートの水準に達する可能性をエコノミストは警告していた。

  BNPパリバ・アセット・マネジメントのエコノミスト、リチャード・バーウェル氏は、今回マイナス0.5%に据え置かれたECBの中銀預金金利に言及し、「これはリバーサルレート経済の素晴らしい新世界だ。中銀預金金利を引き下げられなくても、銀行向け資金供給に適用する金利はなお引き下げ可能だ」と指摘した。

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