(ブルームバーグ): 新型コロナウイルスの感染拡大を背景に失業率が急上昇する状況にあって、政府支出が需要を喚起することによって、ロックダウン(都市封鎖)を解かれた世界経済は類い稀(まれ)な「インフレを伴う不況」に直面する可能性がある。

  英経済学者ジョン・メイナード・ケインズの評伝3部作の著者で、経済史を専門とする英国の学者ロバート・スキデルスキー氏は、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューでこのような見方を示した。

  英上院議員でもあるスキデルスキー氏は、感染拡大を抑制するための経済活動の停止にもかかわらず、主に各国政府が賃金補助に乗り出したため、人々の購買力は急激に落ち込んでいない点が、新型コロナの経済的ショックと大恐慌との違いだと語った。

  その上で、欧州だけでもこうした支援策がこれまでに約4000万人の雇用を救っており、やがて物価を押し上げることにもなるだろうと指摘。「ロックダウンが解除されれば、不況とインフレの同時進行となるだろう。極めて異例なことだ」と話した。

  スキデルスキー氏はこうした状況について、1970年代の「スタグフレーション」で多少の前例があるが、当時は政府の予算措置を使って経済を運営するケインジアンのアプローチから、中央銀行が主導する形に転換することにつながったと説明した。

  これに対し、新型コロナ感染拡大への対応では、中銀が金利を低く維持することで、危機脱却に向けた政府支出を支えており、財政政策と金融政策の区別が曖昧となり、その帰結の1つが物価上昇の可能性だと話した。

  ある程度のインフレであれば、「ある種の税金」として政府が巨額の救済策のコストに対処するのに役立つと考えられ、「そうでなけば税率を引き上げさえすれば実際に公然と税金を課すことが可能だ」とスキデルスキー氏はコメントした。

  危機後の大きな課題については、「人為的な」ルールに制約されない一方で、政治的な動機に基づく散財を予防するだけの十分に頑強な政府支出の仕組みを整備することだとする考えを示した。

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