(ブルームバーグ): 新型コロナウイルスが他国・地域の政府に認識される前から、台湾は中国湖北省武漢市からの入境者に対する検査や隔離に動き始めていた。

  緊張感をはらみつつもなお緊密な中国大陸とのネットワークを使って新型コロナの「震源地」、武漢に関する情報にいち早く接した台湾は、昨年12月31日には封じ込め戦略に着手していた。その結果、地理的に中国に近いにもかかわらず、人口約2400万人を抱える台湾の新型コロナ死者はわずか6人にとどまっている。

  台湾衛生当局の高官、羅一鈞氏は大みそかの朝にインターネット掲示板で1件の投稿を目にした。台湾は貿易や投資、雇用などで中国と頻繁に交流しており、報道機関やブログ、ソーシャルメディアなどを通じ、中国政府や社会の動向を観察するのにたけている。

 「台湾は中国の感染症の見張り役だ」と羅氏は説明。「われわれは世界に警報を発することができる」と話す。

  12月31日午前5時半に起床し、ソーシャルメディアをチェックし始めた羅氏は、中国本土の医療関係者が原因不明の肺炎について警告するテキストメッセージなどを要約している投稿を見つけた。

  投稿には新型コロナについて早くから警鐘を鳴らして当局から訓戒処分を受け、自身も感染して死去した武漢の医師、李文亮氏の告発もあった。

  羅氏が投稿を読んでから約3時間後、台湾は北京の衛生当局に詳細を問い合わせる電子メールを送信。その日の午後になって武漢市の衛生健康委員会が未知のウイルスに27人が感染していると発表した。

  台湾衛生当局は世界保健機関(WHO)にも電子メールを送り、中国の一部の患者は治療のために隔離されていると報告。台湾からすれば、隔離は新しいウイルスが人から人へと感染し得ることを示す明確なシグナルだった。

  2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)で感染者が世界で3番目に多く、深刻な打撃を受けた台湾は、次なる感染症への備えを強化していた。

  北京とWHOに電子メールを送った後、羅氏は武漢との航空便を調べ、直行便が週12便あることを把握。台湾当局はその日の夜から武漢からの乗客を対象に検査を始め、発熱の症状がある乗客は即座に入院することになった。最初のWHOチームが到着する1週間以上前の今年1月12日には台湾の当局者が武漢に飛び、中国の状況には警戒を要すると確認。同月20日までに感染症の状況を監視する緊急指令センターを設置した。

  WHOは1月末まで「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言することはなかった。羅氏は「WHOからの指針に従っていたら、後れを取るところだった」と指摘。「われわれは最初から新型コロナの動向にうまく対応しておきたかった」と振り返った。

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