(ブルームバーグ): 新型コロナウイルス感染拡大防止を目指す緊急事態宣言の解除から9日後の5月下旬、長野県白馬村で、キャンプなど自然との触れ合いを体験できる施設が予定から約1カ月遅れてオープンした。

  「スノーピークランドステーション白馬」は当初、県民限定でサービス内容を縮小していたにもかかわらず、2日間で約2000人が訪れ、一時、入場を制限するほど盛況だった。来場者は、新国立競技場を手掛けた建築家の隈研吾氏が設計した1400平方メートルの開放的な空間で、キャンプ用品の販売エリアでの買い物やミシュランの星付きレストランの味を楽しんだ。

  巣ごもりが当たり前の日常となる中で、キャンプの人気が高まっている。白馬の施設を運営するスノーピークではアウトドア用品の売り上げが好調で、5月にチタン製マグカップが前年同月比で25%、ローチェアが同22%、小型のダッチオーブンは同34%、それぞれ増加した。

  新型コロナの影響で不確実性が大きいため、今期の業績見通しは未定としながらも、「うれしい悲鳴もあり得る」と取締役執行役員のリース・能亜氏は話す。

  「3密(密閉、密集、密接)を避けた行動や感染地域への移動回避は全てアウトドアにひも付く」ため、業界の底上げにつながると能亜氏は予想する。同社が運営する全国6カ所のキャンプ場と2つの宿泊施設は、7月の休日の予約が2日時点でほぼ埋まっているという。

  アウトドア用品需要の盛り上がりを見込み株価も堅調だ。スノーピーク株の3月13日の終値は548円と5年2カ月ぶりの安値まで下落した後、右肩上がりに上昇。2日の終値は1112円と3月の安値の2倍以上の水準に達している。

  競合のコールマンジャパンでは、5月に一部の小型グリル製品の売上高が前年同月比で2.3倍に跳ね上がり、足が伸ばせる折り畳み椅子製品も同18%伸びた。3−5月期の決算が好調だった家具チェーンのニトリホールディングスも、ベランダに置ける木製の折り畳みラックやアウトドアの雰囲気を盛り上げるLEDガーランドライトなどの売れ行きが好調だった。

巣ごもりの反動

  消費者行動論を専門とする慶応大学の清水聰教授は、消費者のアウトドアへの関心の高まりの背景には、今まで巣ごもりだったことの反動がかなりあると指摘。3密ではないアウトドアであれば、「周りにそこに行ったことを許してもらえるという心理が働く」と分析する。

  国内最大級のキャンプ場検索・予約サイト「なっぷ」を運営するスペースキーのアウトドアプラットフォーム本部長、田中篤也氏は、新型コロナの影響で「屋内でカラオケやマージャンをやるのは、密になるため悪」と見なされ、「今まで以上にアウトドアに興味持つ人が増える」とみている。

  矢野経済研究所は、2018年の国内アウトドア市場規模は前年比7.5%増加し5008億円に成長したと推計。各種イベントが自粛されても、アウトドア用品市場は20年に3.7%伸びると予測している。 

韓国市場も好調

  テレワークの長期化で、家でアウトドア気分を楽しむ「ベランピング」も広がりを見せている。べランピングは、ぜいたくな環境でのキャンプを意味する「グランピング」をベランダやバルコニーで行う動きで、アウトドア用品の需要増加に結び付いている。

  東京都在住で会社を経営するビビアン・シンさん(32)は、テントをマンションのベランダに一日中出したままにして、書斎とテントを交互にテレワーク場所として利用している。「ベランダの方が空気がいい」ため、仕事がはかどるという。ベランダ用にリクライニングチェアの購入を検討している。  

  スペースキーの田中氏によると、同社が運営するアウトドア情報サイトでは初心者のユーザーによるとみられるアクセスが大幅に増え、家の中でも活用できるアウトドア用品を紹介する記事などの閲覧が伸びている。

  新築マンションのベランダは、従来と比べて奥行きが広く、小型テントやグリルを置けることも家でアウトドア気分を楽しむ動きに寄与している。

  日本より一足先に感染がいったん落ち着いた韓国では、アウトドア用品需要が増加している。米国や英国など主要11カ国の中で、平均居住面積が日本の次に小さい韓国の市場で、販売が「計画より20%ー30%高い水準で」推移しているとスノーピークの能亜氏。国内でも今後同様の傾向が見られると期待する。

「ワーケーション」

  田中氏によると、キャンプ場では、学校の夏休みが短縮される影響により、来場者の大半を占める家族層の利用が減ることが懸念されている。そこで、新規の需要を開拓するため、バケーションのような環境で仕事をする「ワーケーション」の場としてキャンプ場の平日利用を促したり、長期滞在プランを拡充したりする動きが出ているという。

  能亜氏も、研修を野外で実施するなど、アウトドアを活用した働き方を取り入れたいという企業からの問い合わせが増えていると語る。「これまではワーク・フロム・ホーム(在宅勤務)だが、実際、今はワーク・フロム・エニウェア(どこでも勤務)がバズワード(流行語)になっている」とし、「会社の運用形態と仕事の在り方が変わる」との見方を示した。

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