(ブルームバーグ): 三井住友フィナンシャルグループ傘下のSMBC日興証券は、北米を中心に海外債券業務を強化する。米国での投資適格(IG)社債の引き受けランキング10位前後を目指すほか、ハイイールド債の取り扱いも広げる。現在30人超の米債券引き受け部門では、今後3年間で十数人を採用する方針だ。

  4月に就任した近藤雄一郎社長(57)がブルームバーグの取材に答えた。少子高齢化で国内市場が縮小する中、資金が豊富な銀行系の利点を生かし、海外での一段の収益拡大を目指す。

  新型コロナウイルス影響下での海外戦略について近藤社長は「これまで海外投資は比較的抑えた形でやってきたが、今は変化を好機に変える時」と説明。その上で「コストを最大限に抑えて取り組みたい」と語った。日本と比べた経済成長性の高さも意識しているという。2019年度に153億円だった海外経常利益を3年後に倍増させる計画だ。

  米国については、新発のIG債引き受けランキングで「本邦のトップティアになりたい」とし、他メガと同様に10位前後を目指す意向を示した。19年は三菱UFJフィナンシャル・グループが8位、みずほフィナンシャルグループが11位、三井住友Fが15位だった。利回りが高く信用格付けの低いハイイールド債やエマージング債業務なども強化する方針だ。

銀行系証券優位

  19年のドル債全体の発行残高は2兆5148億ドル(約270兆円)と円債(同約35兆円)の8倍近い巨大市場。リーマン危機翌年の09年に円債発行額が65%下落し、その後も回復していないのに対し、米債は同年に16%増加しており、世界の基軸市場としての安定感は群を抜く。

  特に米IG債市場は、大型企業合併・買収(M&A)案件でつなぎ融資を出すことなどで、その後企業が社債に借り換えた場合に主幹事指名されるケースが多く、銀行系が有利な市場となっている。例えば19年の野村ホールディングスのランキングは47位だった。SMBC日興は09年に邦銀傘下入りし法人向け業務に本格参入した経緯もあり、この分野の強化で他メガの先行を許していた。

  米国以外では、当局の認可を前提に、フランス・パリと中東のアブダビに早期に拠点を開設する意向を示した。どちらも数人程度の小規模な支店として業務を開始する予定で、債券引き受けを担う人材などを採用する計画。三井住友Fはグループとしても海外での証券業務強化方針を掲げており、米国や欧州ではM&Aや既発債のセールス・アンド・トレーディング分野で買収も視野に入れている。

  国内リテール分野では23年3月までの3年間で2兆1500億円の新たな資産獲得を目標に掲げた。20年3月末の預かり資産残高は54兆8000億円。三井住友Fは4月、グループとして推定保有資産20億円または預かり資産5億円以上を対象とした富裕層向け事業を開始。近藤社長は「証券が主導的な立場を担う」と述べ、未公開株投資など特徴ある商品の提供で差別化を図りたい意向を示した。

  近藤氏は7年ぶりの生え抜きトップ。大正時代にルーツを持つ同社を率いる抱負を「100年強続いている会社。過去に築き上げた信頼、基盤を拡大して後任に引き継ぐのが社長の役目だと思っている」と語った。

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