(ブルームバーグ): 三井住友フィナンシャルグループ傘下のSMBCベンチャーキャピタルは、三井住友銀行との連携を強化する。小口分散投資で全体のリターンを確実に狙う戦略を見直し、銀行の顧客ニーズを踏まえた重点投資によりグループとしての利益最大化を目指す。新たな取り組み方針を1日にも社内に示す。

  SMBCベンチャーキャピタルの野田浩一社長がブルームバーグとのインタビューで明らかにした。三井住友銀行のホールセール部門などと情報共有を図り、銀行顧客が求める技術を持つスタートアップに投資する。その後も複数回の資金供給を行うことで育成も手掛ける。銀行の法人顧客への紹介も視野に入れることで、三井住友Fのコンサルティング機能の強化にもつなげる。

  既に同グループの顧客であるトヨタフィナンシャルサービスと共に東南アジアのフィンテック企業に戦略出資をするなど取り組みを進めている。今後、投資件数を絞ると同時に、1件当たりの投資額を増やす方針。SMBCベンチャーキャピタルのホームページによると、同社は2010年度以降に累計500件超、金額ベースでは300億円超の投資を行っている。

  野田氏は、新型コロナウイルスの影響でスタートアップのバリュエーション(企業価値評価)が下がっていることから、「将来の企業価値の見極め」を徹底すれば、投資額を抑えて大きく育てる機会になるとの見方を示した。

  国内のスタートアップは起業時の資金調達ができたとしても、その後、収益化が図れるようになるまでは資金の出し手が限られているのが現状。複数回にわたって資金供給する動きはベンチャー育成の面での課題対応にもつながる。

出口戦略を多様化

  野田氏はまた、国内の新規株式公開(IPO)だけをゴールとせず、企業の合併・買収(M&A)や米国でのIPOも検討するなどイグジット(出口戦略)の多様化を図りたい考えも示した。スタートアップの企業価値評価は「投資家層の厚い米国の方がダイナミズムが大きい」として、人材確保や海外投資銀行などとの連携を進めれば、将来的には海外市場を見据えた成長を後押しできると述べた。

  投資したスタートアップの株式を売却して資金を回収するイグジットでは一定の収益力を必要とするIPOに対し、赤字であっても買収によるシナジーや将来性が見込めれば成立するM&Aを模索する動きが米国を中心に進んでいる。

  一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの調査によると、国内では18年度までの5年間、ベンチャー・キャピタル(VC)が出資した企業のIPO件数は、M&Aの約1.5倍から3倍程度となっている。一方、ナショナル・ベンチャー・キャピタル協会によると、18年に米国でVC出資企業がM&Aによりイグジットした社数はIPOの約9倍だった。

  デロイトトーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬社長は、リーマン危機時に投資を減らした金融系VCだが、新型コロナの影響下では「踏ん張っている」と指摘。「不況時には良質なスタートアップが誕生する」と学んだことに加え、フィンテックを囲い込む意図が背景にあるとみている。

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