(ブルームバーグ): ソウル中心部の政府庁舎の15階にある大会議室に6月26日、民間人13人が集まり、韓国で最も異論の多い問題の一つについて9時間にわたって激しい議論が行われた。サムスングループの事実上のトップである李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長の起訴が妥当かどうかといった問題だ。

  「検察捜査審議委員会」は李副会長側の要請で招集された。委員は全員男性で教授や学校教員、仏教僧侶2人が含まれた。グループの経営権継承を巡る不正疑惑に関連し金融詐欺などの罪で李副会長を起訴することについて賛成・反対意見を聴いた上でさらに2時間の議論を行った後、こう着状態を打開するために無記名投票を実施。結果は起訴反対が10人、賛成3人と、同委メンバーにとっても驚きの結果となった。

  結果を受け、同委は捜査を中断して李副会長を不起訴とするよう検察に勧告した。

  検察審議委のメンバー1人はブルームバーグ・ニュースに対し、結果に「われわれは皆かなり驚いた。熱を帯びた議論を行ったが、全ての委員が考え方を明かしたわけではない。見分けるのは難しかった」と語った。協議について話す権限がないことを理由に匿名で明らかにした。

  審議委の勧告は法的拘束力を持たないが、同委の判断を求める賭けに出たサムスングループと李副会長にとって重要な勝利となった。企業統治のアクティビストや国会議員は結果に反発し、勧告に従わずに起訴すべきだと主張している。しかし、起訴を強行すれば、新型コロナウイルス感染拡大で落ち込む経済の再生には半導体メモリーやスマートフォンで世界最大手のサムスンは重要だと考えている人々の怒りを招く可能性もある。

  李副会長の弁護団は検察審議委の関与に「感謝する」とし「決定を尊重する」とコメントした。検察事務所の担当者はこの記事の取材に対しコメントを控えた。

  検察審議委は文在寅政権による検察改革の一環として導入された制度。李副会長が審査を申請する前は法曹界の外でほとんど知られていなかった。メンバーは事前に選ばれた数百人の中から大検察庁が無作為に選出している。26日の勧告は、国民がサムスントップおよび検事総長をどのように見ているかを示すバロメーターとなる。韓国の検事総長は大統領に任命されている。

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